【雛型テンプレ付】労働条件通知書とは?発行タイミングと記載事項・記入例を解説

合同会社ことりうみ
中澤 泉 弁護士
労働条件通知書とは、労働契約を結ぶ際に企業が労働者に交付する書類のことです。交付しなければ違法となるため、新たに従業員を雇用する際は必ず作成・交付しなければなりません。
なお、書式は決められていませんが、法律上必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」が定められています。
そこで本記事では、労働条件通知書に関する法的義務や記載事項のほか、電子交付の際の注意点などについても詳しく解説します。
労働条件通知書の概要を確認したうえで、実際に自社で使う書式を準備したい方は、テンプレートの活用も有効です。doda人事ジャーナルでは、労働条件通知書 兼 雇用契約書のテンプレートをWord形式でご用意していますので、以下から資料ダウンロードしてご活用ください。
労働条件通知書とは
労働条件通知書とは、企業が労働者と労働契約を結ぶ際に交付する書類で、契約期間や就業場所、就業時間や給与といった労働条件がまとめられています。
労働条件通知書を交付する目的は、労働条件を口頭のみで伝えることによる認識の相違を防ぎ、企業と労働者の間で起こり得るトラブルを回避するためです。
なお、労働条件通知書の交付は「企業が労働力として雇用する人材」が対象となるため、正社員だけではなく、契約社員やパート・アルバイトなどにも発行する必要があります。
また、労働条件通知書に明示しなければならない項目は決まっているものの、書式は企業によってさまざまです。具体的な記載事項については、後ほど紹介します。
労働条件通知書が必要な理由
労働条件通知書の交付は法律で義務付けられていますが、法律以外の観点でも企業と労働者の双方にメリットがあります。
労働者を雇用するのであれば、労働条件を明瞭(めいりょう)にすることで認識の齟齬(そご)やギャップを防ぐことができ、入社承諾者にとっては事前に正式な書面で労働条件を提示することにより安心感が生まれるため必要といえます。
ここでは、労働条件通知書が必要な理由を詳細に解説します。
【労働条件通知書が必要な理由】
●従業員とのトラブルを避けるため
●入社承諾者に安心して入社をしてもらうため
従業員とのトラブルを避けるため
労働条件通知書を交付することで、企業と従業員の間で発生し得るトラブルを避けられるようになります。
労働条件通知書には、始業・終業時間や業務内容など、細かな労働条件が明示されているため、はたらき始めてから「18時退勤を希望していたのに、定時が18時半までだった」「聞いていた業務内容と違った」というギャップが発生する可能性を抑えられるのです。
万が一、従業員から「聞いていた話と違う」と言われたとしても、労働条件通知書に記載している情報と実態がかけ離れていなければ、「事前に明示していた」と説明できます。
入社承諾者に安心して入社してもらうため
採用が決まった入社承諾者に対し、労働条件通知書をあらかじめ送付しておくことで、安心感を与えられます。なぜなら、雇用契約を正式に結ぶ前に「このような条件ではたらいてもらうことになる」という条件を文書で共有できるためです。
労働条件通知書を確認した入社承諾者は、「応募時にイメージしていたはたらき方と違ったらどうしよう…」という不安を解消した上で入社できるようになります。
なお、採用時に募集要項に記載していた内容と、労働条件通知書の内容が一致していなければ、入社承諾者が不信感を抱き、辞退してしまう恐れもあります。そのため、募集要項と労働条件通知書の内容がかけ離れていないかどうかをしっかりと確認しておきましょう。
労働条件通知書の交付義務と法的根拠
労働条件通知書の交付については、労働基準法第15条第1項で、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定められています。
つまり、企業は労働条件通知書を労働者に渡す義務があるということです。労働契約を結ぶ際に労働条件通知書を交付しなかった場合は違法となり、労働基準法第120条第1号に基づき、30万円以下の罰金を科されます。
(参考:e-Gov法令検索『労働基準法 第15条』、『労働基準法 第120条』)
労働条件通知書とほかの書類との違い
労働条件通知書のほかにも、新たに人材を雇用する場合に必要な書類がいくつかあります。いずれも、労働条件通知書とは異なるものです。
具体的な違いを以下にまとめました。
| 労働条件通知書 | 雇用契約書・労働契約書 | 就業規則 | 採用条件通知書・採用通知書・オファーレター | |
| 内容 | 企業と労働者の関係上での労働条件を示したもの | 就業上の規則や、基本的な労働時間、給与規定などを定めたもの | 企業により異なる | |
| 労働者の合意 | 不要 | 必要 | 意見を聴けば問題ない | 不要 |
| 書面の交付 | 必要 | 口頭でも可 | 必要 | 口頭でも可 |
| 書類の扱い | 労働者1人ごとに作成する | 全ての労働者に適用する | 労働者1人ごとに作成する | |
| 労働条件通知書との兼用 | – | 可 | 一部代用は可 | 可 |
以下で詳しく解説します。
労働条件通知書と雇用契約書の違い
民法の規定に基づく「雇用契約書」や労働契約法の規定に基づく「労働契約書」は、労働条件通知書とは「労働者の合意が必要か不要か」「書面での交付は義務か任意か」という点が異なります。
まず労働者の合意について、労働条件通知書では必要がない一方で、雇用契約書・労働契約書は企業と労働者の双方の合意が必要です。
また、労働条件通知書では現行法で書面での交付が義務付けられていますが、雇用契約書・労働契約書は、口頭で労働契約を結ぶことも認められています。(ただし、労働条件通知書は、労働者が希望する場合は電子交付も可)
なお、労働条件通知書と雇用契約書・労働契約書を別々に発行するのではなく、両者を兼用する「労働条件通知書兼雇用契約書」として発行する企業もあります。
労働条件通知書兼雇用契約書を作成する際は、労働条件を書いたあと、労働条件に同意する旨や契約書を保管する旨を記載し、企業・労働者双方の署名・押印欄を設けておくと、合意内容を明確にする上で有効です。
雇用契約書について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
(参考:『【雛型テンプレ付】雇用契約書とは?記載事項と書き方、作成のポイントを解説』)
採用条件通知書/採用通知書/オファーレターとの違い(正社員の場合)
採用条件通知書・採用通知書・オファーレターはいずれも、求人に応募した転職希望者に対し、企業が採用の意思を示すために交付する文書です。
これらは、労働契約を正式に締結する「前段階」で提示されるのが一般的であり、同じく労働契約に関する文書である労働条件通知書とは、書面交付の義務の有無や交付されるタイミングが異なります。
なお、労働条件通知書の交付するタイミングは、労働基準法に労働条件を「労働契約の締結に際して」明示しなければならないと定めているため、採用条件通知と同時、あるいはそれ以前に労働条件通知書を交付する必要があります。
採用条件通知書・採用通知書・オファーレターの形式は企業の裁量に委ねられており、書面として出さずに口頭のみで意思表示をすることもできます。
一方、労働条件通知書は、原則として書面での交付が義務付けられている(前述の通り、労働者が希望する場合は電子交付も可)点が異なります。採用条件通知書・採用通知書・オファーレターと労働条件通知書は、兼用も可能です。
別の意味合いを持つものとして別々に交付するケースもあれば、書類作成の工数などを考えて両者を兼ねたものを交付するケースもあるなど、対応は企業によってさまざまです。兼用する場合は、労働条件通知書に記載すべき項目を確実に盛り込みましょう。
採用条件通知書や採用通知書については、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『【雛型テンプレート付】内定通知書とは?書類の役割やメール文例、送り方、無料テンプレを紹介』、『【テンプレあり】採用通知書とは?書き方や送付方法・法的効力を解説』)
労働条件通知書に記載すべき事項
労働条件通知書に記載する内容は、労働基準法施行規則第5条によって定められています。必ず記載しなければならない事項を「絶対的明示事項」、該当がある場合のみ書面や口頭で明示する必要がある事項を「相対的明示事項」といいます。
【労働条件通知書に記載すべき事項】
●絶対的明示事項
●相対的明示事項
●2024年4月改正で追加された明示事項
絶対的明示事項
労働条件通知書では、労働基準法施行規則の第5条第1項に基づいて、以下の「絶対的明示事項」を示す必要があります。絶対的明示事項は、原則として書面で交付しなければなりません。
ただし、「昇給に関する事項」については、絶対的明示事項に含まれるものの、書面による交付義務の対象外とされており、口頭での明示でも法的には足りるとされています。
【絶対的明示事項】
●労働契約の期間と更新の有無・基準(更新上限の有無を含む)
●就業の場所および将来変わり得る就業場所の範囲(変更の範囲)
●従事する業務および将来変わり得る業務の範囲(変更の範囲)
●始業および終業の時刻、残業の有無、休憩時間
●交代替制勤務をさせる場合は、就業時転換(交替期日あるいは交替順序など)に関する事項
●休日休暇
●賃金(昇給を除く)の決定・計算・支払い方法、締め切り・支払時期
●昇給に関する事項(※書面交付義務なし)
●退職に関する事項(解雇の事由を含む)
(参照:e-Gov法令検索『労働基準法施行規則 第5条』)
労働契約の期間と更新の有無・基準
まず、「労働契約の期間に定めがあるのか」、またその場合は「いつからいつまでなのか」を明記する必要があります。条件別の記載内容は以下をご覧ください。
【労働契約の期間に関する記載方法】
| 無期契約の場合 | 「期間の定めなし」として、契約開始日を記載する |
|---|---|
| 有期契約の場合 | 契約開始日と終了日を記載する |
| 試用期間がある場合 | 契約開始日と終了日、または「入社後何カ月間」といった形で、試用期間を記載する |
なお、従来は有期契約労働者の労働契約の更新基準については書面での明示義務がありませんでしたが、2013年4月より書面での明示が義務付けられました。
そのため、有期契約労働者に対しては、労働契約を更新する可能性の有無や更新基準を記載しなければなりません。具体的には、以下のように記載しましょう。
【有期契約労働者の労働契約の更新基準に関する記載方法】
| 項目名 | 記載すべき選択肢 |
|---|---|
| 更新の有無 | ●自動的に更新する ●更新する場合があり得る ●契約の更新はしない |
| 更新基準 | ●契約期間満了時の業務量により判断する ●労働者の勤務成績や態度により判断する ●労働者の能力により判断する ●会社の経営状況により判断する ●従事している業務の進捗(しんちょく)状況により判断する |
(参照:厚生労働省『労働条件通知書(記載例)』)
上記の例を参考に、選択肢を記載した上で、該当するものに丸をつけます。なお、「諸般の事情を総合的に考慮する」といった抽象的な表現ではなく、具体的な基準を記載することが望ましいとされています。
また、2024年4月の法改正により、通算契約期間や更新回数に上限がある場合はその内容の明示も義務付けられました。更新上限を新設または短縮する場合には、あらかじめその理由を労働者に説明する義務も生じるため、注意してください。
(参照:厚生労働省『令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます』)
就業の場所
就業の場所については、会社名や支店名など、具体的な場所を記載します。
2024年4月の法改正により、雇い入れ直後の就業場所だけでなく、将来的な配置転換や転勤を含めた「就業の場所の変更の範囲」の明示が法的義務となりました。
転勤の可能性がある場合は、最初の就業場所に加えて「その他会社が指定する事業所」あるいは「国内・外への配置転換・転勤を命ずる場合がある」といった文言を書面で明示する必要があります。
なお、テレワークを導入している場合も同様に、雇い入れ直後からテレワークを行う場合は「雇い入れ直後の場所」として、契約期間中にテレワークを行う可能性がある場合は「変更の範囲」として、自宅やサテライトオフィス等を明示する必要があります。
(参照:厚生労働省『令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます』)
従事する業務
入社後に担当する業務内容も明示します。複数の業務に携わる場合は、全て記載しましょう。2024年4月の法改正により、雇い入れ直後の業務内容だけでなく、将来的な配置転換や出向等で変わり得る「従事すべき業務の変更の範囲」の明示も法的義務となりました。
将来的に業務変更の範囲が無限定である場合は、「会社内での全ての業務」や「会社の定める業務」といった包括的な表現による記載も認められています。
なお、業務内容を特定の職種に限定して記載した場合、「職種限定の合意」が成立したとみなされるリスクがあります。職種限定の合意がある場合、労働者の個別的な同意なしに、その範囲を超えた職種変更を命じることはできなくなるため、記載内容は実態に即したものとなるよう慎重に検討しましょう。
(参照:厚生労働省『令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます』)
始業および終業の時刻、残業の有無、休憩時間
始業・終業時刻については、所定労働時間の開始時刻と終了時刻を具体的に明示します。併せて、所定時間外労働(残業)の有無と、休憩時間の長さや与え方についても記載します。
フレックスタイム制を導入している場合は、始業・終業時刻を従業員の自主的決定に委ねる旨を明記した上で、コアタイム(必ず勤務しなければならない時間帯)とフレキシブルタイム(労働者が選択して労働できる時間帯)の開始・終了時刻、および年次有給休暇取得時の賃金算定の基礎となる標準の1日の労働時間を記載しましょう。
裁量労働制が適用される場合は、通常の始業・終業時刻の記載に代えて、制度の種類(専門業務型または企画業務型)と「1日につき何時間労働したものとみなすか」というみなし労働時間を明示します。
なお、「所定労働時間は1日8時間」とするだけの記載では法的に不十分です。始業・終業時刻および休憩時間は必ず具体的に記載するようにしましょう。
フレックスタイム制の仕組みや導入時のポイントについて詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『フレックスタイム制を簡単解説!調査に基づく84社の実態も紹介』)
交代制勤務をさせる場合は、就業時転換(交代期日あるいは交代順序など)に関する事項
労働者を2組以上に分けて交替制勤務をさせる場合は、「日勤・夜勤の交代制。9時~18時/18時~翌2時、1週間単位で交代」といったように、勤務時間だけでなく交代期日についても記載しましょう。
休日休暇
休日については、所定休日の曜日または日を特定して記載します。たとえば完全週休2日制の場合は「土曜日および日曜日」のように明記しましょう。変形週休制を採用している場合は、起算日を明確にした上で事前に休日を特定して記載する必要があります。
年次有給休暇については、付与条件と法律に基づいた付与日数を記載します。年次有給休暇は、雇い入れの日から6カ月間継続して勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した場合に付与されます。
初年度は原則10日が付与され、その後は勤続年数に応じて最大20日まで段階的に増加します。時間単位年休や代替休暇の制度がある場合は、その有無についても記載が必要です。
慶弔休暇や夏期・冬期休暇など、法定外の休暇制度を設けている場合は、休暇の種類・日数と併せて有給・無給の別も明示しましょう。
(参照:厚生労働省『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』)
賃金
賃金の決定方法や計算方法(月給、日給、時給など)、支払方法、賃金の締切日と支払日を具体的に記載します。基本給や定額手当の支給条件など、当該労働者の賃金額が確定し得る形で明示することが求められます。
歩合制(出来高払い制)を採用している場合は、仕事の量に対する基本単価に加えて、労働時間に応じた保障給の額も明示する必要があります。保障給の定めは法律上必須であり、記載がない場合は契約が無効となるリスクがあります。
残業代を支給する場合は割増賃金率を記載します。固定残業代(みなし残業代)制を採用している場合は、①固定残業代の対象となる労働時間数と金額、②固定残業代を除いた基本給の額、③固定時間を超えて残業した場合に超過分を追加支給する旨、の3点を必ず明示しましょう。
なお、社会保険料や所得税などの控除項目は法的な明示義務の対象ではありませんが、労働者の手取り額に直結するため、トラブル防止の観点から記載することが推奨されています。
昇給に関する事項
昇給を想定していない場合は「なし」、想定している場合はその旨を基準とともに明示します。「本人の実績、会社の業績を勘案し昇給することがある」といった書き方が一般的です。
昇給に関する事項は絶対的明示事項ですが、書面による交付義務はなく、口頭での明示でも法的には足りるとされています。ただし、トラブル防止の観点から、労働条件通知書に記載しておくことが実務上一般的です。
なお、パートやアルバイトなどの短時間労働者に対しても、昇給の有無を明示することが「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則」の第2条に基づいて定められています。
退職に関する事項
退職に関する事項は絶対的明示事項であり、書面での交付が義務付けられています。自己都合退職・解雇・定年退職・有期労働契約の期間満了など、労働者が身分を失う一切の事由およびそれに付随する手続きを記載する必要があります。
定年制を設ける場合は、その年齢や適用条件を具体的に記載します。自己都合退職については、「退職願を提出して何日を経過したとき」といったように、退職の申し出時期や具体的な手続きを明記しましょう。
解雇の事由については、具体的に記載することが求められます。記載すべき内容が膨大な場合は、就業規則の該当条項名を網羅的に引用する方法も認められていますが、「就業規則の通り」といった抽象的な表現だけでは不十分です。
重要な解雇事由を例示するか、具体的な条項名を引用するようにしましょう。なお、退職金制度を設けている場合は、適用範囲・決定および計算・支払方法・支払時期についても明示が必要です。
相対的明示事項
自社で独自に制度を設ける場合に、労働条件通知書で明示する必要のある項目を「相対的明示事項」といいます。
具体的には、以下の内容に関連する制度を設けるのであれば相対的明示事項として記載しなければなりません。
【相対的明示事項として記載が必要な項目】
●退職手当の定めが適用される労働者の範囲
●退職手当の決定、計算および支払の方法ならびに退職手当の支払の時期に関する事項
●臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)
●労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
●安全および衛生に関する事項
●職業訓練に関する事項
●災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項
●表彰および制裁に関する事項
●休職に関する事項
(参考:e-Gov法令検索『労働基準法施行規則 第5条』)
なお、上記のような制度を設けない場合は、相対的明示事項の記載は不要です。
2024年4月改正で追加された明示事項
2024年4月の法改正により、労働条件通知書で示すべき労働条件の項目が拡大され、新たに4つの事項の明示が義務化されました。これは、はたらき方の多様化や、有期雇用から無期雇用への転換促進などを背景に決められたものです。
法改正によって追加された4つの項目については、以下をご覧ください。
【2024年4月の法改正で明示が義務化された項目】
| 項目名 | 対象者 | 概要 |
|---|---|---|
| 就業場所・業務の変更の範囲 | 全ての労働者 | ●将来的な配置転換や出向などにより変更される可能性のある就業場所・業務の範囲について明示することが義務化。なお、一時的な応援業務・出張・研修などは含まれない |
| 更新回数の上限の有無と内容 | 有期契約労働者のみ | ●有期雇用契約の締結・更新のタイミングで、「通算契約期間」あるいは「更新回数の上限」の有無と、その内容を明示する ●契約締結後に、新たに更新回数の上限を設ける場合や、上限期間を短縮する場合などは、変更のタイミングでその理由を労働者に説明する |
| 無期転換申込機会 | 有期契約労働者のみ | ●有期労働契約が5年以上更新されている場合、労働者の申し込みによって無期労働契約に転換できる旨を明示する |
| 無期転換後の労働条件 | 有期契約労働者のみ | ●実際に無期労働契約に転換した場合の、転換後の労働条件を明示する |
「就業場所・業務の変更の範囲」については、雇用形態を問わず、全ての労働者に明示しなければなりません。加えて、有期契約労働者の場合は新たに明示が義務化された項目が複数あるため、抜け漏れのないよう押さえておきましょう。
労働条件通知書には、絶対的明示事項や相対的明示事項に加え、2024年4月改正で追加された明示事項も反映する必要があります。記載項目の抜け漏れを確認しながら作成したい場合は、労働条件通知書 兼 雇用契約書のテンプレートを資料ダウンロードしてご活用ください。
労働条件通知書の記入例
厚生労働省のWebサイトでは、労働条件通知書のフォーマットと具体的な記入例が公開されています。
【一般労働者用の労働条件通知書の記載例】

(参照:厚生労働省『労働条件通知書(記載例)』)
こちらの例では、2024年4月からの変更が反映されています。記入のポイントも明確になっているため、労働条件通知書の扱いが初めての人事・採用担当者にとってもわかりやすいでしょう。
裁量労働制・歩合制・シフト制・変形労働時間制の記載例
労働者の勤務形態や給与形態によっては、労働条件通知書を書く際に個別で意識しなければならない点があります。ここでは、以下の勤務形態について、それぞれの記載例を紹介します。
【労働条件通知書の記載方法が異なる勤務形態】
●裁量労働制
●歩合制
●シフト制
●変形労働時間制
裁量労働制
裁量労働制とは、労働時間が労働者の裁量に委ねられており、実働時間に関係なく契約した労働時間を勤務したものとして、給与を支払う制度のことです。毎日決められた時間で勤務するわけではないため、労働条件通知書では始業・終業時刻の書き方に注意する必要があります。
裁量労働制を導入している場合、通常の始業・終業時刻の記載に代えて、制度の種類(専門業務型または企画業務型)と「1日につき何時間労働したものとみなすか」というみなし労働時間を明示します。具体的には以下のように記載しましょう。
【記載例】
裁量労働制(専門業務型)により、出退社の時刻は自由とし、1日〇時間勤務したものとみなす
また、以下の条件に該当する場合は割増賃金を支払う必要があるため、賃金の項目に記載します。
【割増賃金を支払う必要のあるケース】
●1日のみなし労働時間を8時間超とした場合
●深夜勤務をした場合
●法定休日に出勤した場合
なお、裁量労働制を導入するためには、労働条件通知書を労働者に交付するだけでなく、専門業務型の場合は労使協定の締結、企画業務型の場合は労使委員会の決議を行い、いずれも所轄労働基準監督署へ届け出ることが法的要件となります。こちらも事前に別途確認しておきましょう。
裁量労働制の導入方法や運用時の注意点について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『裁量労働制とは?メリット・デメリット、導入方法と運用の注意点を解説』)
歩合制
歩合制とは、労働者の仕事の成果や出来高に応じて給料が変わる給与形態のことです。毎月、一定額の「保障給」に加えて、業績に応じた「歩合給(基本単価)」が支払われます。
毎月の給与額が変動する給与形態であるため、労働条件通知書では賃金の項目に基本単価と保障給を併記します。なお、保障給は労働時間に応じた一定額を保障するものであり、実労働時間に関係なく一定額を支払う固定給とは性質が異なります。
また、出来高給が実労働時間に最低賃金額を乗じた額に満たない場合は、その差額を労働者に支払う義務があります。
【記載例】
出来高給:(基本単価50,000円、保障給130,000円)
最低限保証される「保障給」と、歩合給に該当する賃金を分けて記載しましょう。なお、保障給は最低賃金額を下回らないように設定しなければなりません。
シフト制
シフト制とは、1週間や1カ月など、一定期間ごとに労働日や労働時間を決める勤務形態のことです。毎日決まった時間で勤務するわけではないため、労働条件通知書では始業時間と終業時間の書き方に注意する必要があります。
例えば、以下のようにシフトの変わる期間を明記した上で、始業時間・終業時間の全てのパターンを記載します。
【記載例】
会社が以下の3パターンの中から定めるシフト表による。毎月25日までに翌月分のシフトを定め、各事業所内に掲示して周知する。
【パターン1】 始業:10時 終業:18時 休憩:14時から15時までの1時間
【パターン2】 始業:9時 終業:17時 休憩:13時から14時までの1時間
【パターン3】 始業:13時 終業:21時 休憩:16時から17時までの1時間
※会社の都合により、ほかのパターンのシフトを定めることがある。
上記のようにシフトのパターンが定まっていない場合は「労働時間は1週間40時間以内とし、勤務日および時間については、勤務シフト表により前月末日までに通知する」といったように書きましょう。
変形労働時間制
変形労働時間制とは、労働時間を月・年単位で計算した上で、日・週ごとに労働時間を振り分ける勤務形態のことです。勤務時間が一定ではないため、始業時間と終業時間の書き方に注意しなければなりません。記載例は以下をご覧ください。
【記載例】
1カ月単位の変形労働時間制として、次の勤務時間の組み合わせによる。
●始業:9時 終業:18時(適用日:会社カレンダーで指定する日)
●始業:10時 終業:19時(適用日:会社カレンダーで指定する日)
上記のように、労働時間が決まる単位をあらかじめ明記した上で、想定される始業時間と終業時間を全て記載します。
なお、変形労働制は所定労働時間や残業の考え方などがやや複雑であるため、別途労働者に制度について説明すると良いでしょう。
変形労働時間制の仕組みや労働時間の考え方について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『変形労働時間制とは?1カ月・1年の労働時間と残業代の計算方法を解説』)
労働条件通知書の作成・交付の流れ
新たに人材の雇用が決まったら、以下の手順で労働条件通知書を交付します。
【労働条件通知書の作成・交付の流れ】
1.労働条件通知書を作成する
2.労働条件通知書を発行し、入社承諾者に明示する
3.労働条件に対し同意を得られたら、労働契約を締結する
上記のように、労働条件通知書の内容に合意を得られてから初めて労働契約を締結します。なお、すでに雇用している労働者の労働条件を変更する際も、基本的な流れは同様です。労働条件通知書を発行した上で、その内容に合意を得られたら契約変更の手続きを行います。
労働条件通知書の雛形・テンプレートを無料ダウンロード
労働条件通知書には決められた書式がありません。どのように作成すべきか迷っている人事・採用担当者は、doda人事ジャーナルのテンプレートをぜひ活用してください。
以下のリンクから無料でダウンロードが可能です。
労働条件通知書を作成する際の注意点
労働条件通知書を作成する際は、「内容に過不足がある」や「交付されていない」などのトラブルを避けるために以下の点に注意しましょう。
【労働条件通知書を作成する際の注意点】
●就業規則と整合する
●テンプレートはカスタマイズして活用する
●電子交付は従業員の希望を確認する
●不利益変更にならないように注意する
就業規則と整合する
労働条件通知書と、就業規則の内容をそろえることは鉄則です。両者の内容が矛盾していると、トラブルの元となりかねません。
そもそも就業規則は、労働基準法をはじめとする法定の最低条件を下回らないように定められています。個別の労働条件通知書で定める労働条件が就業規則の基準を下回る場合、その部分は無効となり就業規則の基準が適用されます。
法律上の最低条件を満たすためにも、就業規則と整合するように労働条件通知書を作成する必要があるのです。
労働条件通知書とあわせて整備すべき就業規則について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『【無料テンプレート付】就業規則とは?記載事項と作成・変更の届け出の手順を解説』)
テンプレートはカスタマイズして活用する
厚生労働省のWebサイトや、doda人事ジャーナルでは、労働条件通知書のテンプレートを無料でダウンロード可能です。しかし、これらのテンプレートは自社の実態に合わせて適宜カスタマイズする前提で利用してください。
最適な労働条件や、書類の書式は会社によって異なります。テンプレートの内容が最適とは限らないため、必要に応じてカスタマイズしましょう。
電子交付は従業員の希望を確認する
2019年4月の法改正によって、労働条件通知書は紙だけでなく、メールなどの電子的な方法でも発行・交付できるようになりました。ただし、これは交付を受ける入社承諾者・労働者が希望している場合に限ります。
そのため、電子交付を検討している場合は、個別に意思を確認する必要があります。また、電子交付を行う場合は、データを受け取った入社承諾者・労働者が労働条件通知書をプリントアウトし、その内容を確認できる形式になっていなければなりません。
不利益変更にならないように注意する
労働条件を変更する場合は、対象となる労働者から同意を得なければならないケースがあります。法律違反とならないように基準を確認しておきましょう。労働者にとって不利益な内容に労働条件を変更する場合は、労働契約法第9条により、原則として労働者から同意を得なければなりません。
同意が不要となるケースは、変更がすでに周知されており、かつ変更内容が合理的な場合など、労働契約法第10条で定められている要件を満たしている場合のみです。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。
ただし、次条の場合は、この限りでない。第十条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
(引用:e-Gov法令検索『労働契約法 第9条』、『労働契約法 第10条』)
(参考:『就業規則の不利益変更とは?実施する方法とこんな時どうする?15の事例』)
労働条件通知書の交付時期・保管期間
労働条件通知書は、入社承諾者・労働者に交付するタイミングや、自社で保管しなければならない期間が法律により定められています。守らなければ罰金を科せられる可能性もあるため、こちらも事前に確認しておきましょう。
交付時期

新たに人材を雇用する場合、雇用契約を締結する際に企業は労働条件を明示しなければならない旨が労働基準法第15条で定められています。そのため、雇用契約を締結するタイミング、あるいはその前には労働条件通知書を交付する必要があります。
また、もし入社承諾前の段階で「早めに労働条件通知書を明示してほしい」という希望があった場合は、そのタイミングで労働条件通知書を交付しても問題ありません。労働条件を事前に確認することで、転職希望者が条件について理解した上で入社を承諾し、ミスマッチを防げる可能性もあります。
保管期間
交付した労働条件通知書は、対象の労働者が退職または死亡した日を起算日として、5年間の保管が義務化されています。ただし、この「5年間」という期間は2020年4月に延長されたことによるものです。以前は、保管期間は3年間でした。
なお、法改正に伴う経過措置として、一定の場合には3年間の保管でも直ちに違反とされないケースがありますが、実務上は5年間の保管を前提に対応することが望ましいでしょう。
(参照:厚生労働省『改正労働基準法等に関するQ&A 13p』)
有期雇用契約を更新する場合・しない場合の対応方法
有期雇用契約の労働者に対しては、契約期間が終わるタイミングで契約更新の有無を決める必要があります。契約更新する場合としない場合とでは、企業の対応が異なります。

有期雇用契約の基本や無期雇用との違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『有期雇用契約とは?無期雇用との違いや法律で定められたルールを解説』)
契約更新する場合の対応
契約更新をする場合、新たな契約期間を定めた労働条件通知書や雇用契約書の交付が必要です。この際、契約期間や就業場所・業務内容・賃金といった労働条件を改めて書面で明示しなければなりません。
また、更新後の通算契約期間が5年を超える場合は、無期転換申込権が発生する旨と転換後の労働条件についても併せて明示する必要があります。
なお、当初の契約期間が終了しても更新手続きをすることなく雇用が継続している場合、黙示の更新とみなされ、有期契約が更新されたと判断される可能性があります。
そのため、有期雇用契約を継続したい場合には、契約期間を把握した上で、確実に新しい契約を締結しましょう。
契約更新しない場合の対応
契約更新をしない(雇い止めを行う)場合、以下の要件に該当する労働者については、契約満了日の30日前までに予告を行う義務があります。
●契約を3回以上更新している場合
●雇い入れの日から1年を超えて継続勤務している場合
また、雇い止めの予告を受けた労働者や更新されなかった労働者から請求があった場合は、雇い止めの理由を記載した証明書を速やかに交付しなければなりません。
さらに、以下の場合は雇い止めそのものが制限される可能性があるため注意が必要です。
●契約更新が反復され、雇用継続への合理的な期待が生じている場合(雇止め法理・労働契約法第19条)
●通算契約期間が5年を超え、労働者が無期転換を申し込んだ場合(無期転換ルール・労働契約法第18条)
雇止めについては、労働者保護の観点から、過去の最高裁判例により一定の場合にこれを無効とする裁判上のルール(雇止め法理)が確立しています。
引用:厚生労働省『Ⅱ「雇止め法理」の法定化(第19条)』
なお、2024年4月の法改正により、契約締結後に新たに更新回数や通算契約期間の上限を設けたり短縮したりする場合は、あらかじめその理由を労働者に説明する義務も生じています。
トラブルになる3つのケース
企業側が正しい対応をしないと、労働者とのトラブルに発展するケースは3つあります。
【労働条件通知書に関するトラブルの例】
1.労働条件通知書が交付されない
2.労働者にとって重要な情報が足りない
3.労働条件通知書通りの対応がされていない
1.労働条件通知書が交付されない
労働条件通知書を交付しないと、労働者とのトラブルに発展する恐れがあります。正社員には交付しても、パートやアルバイトには交付しないというケースも中にはあるようですが、労働条件通知書は全ての労働者に対して交付することが義務付けられたものです。
違反した場合は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。雇用形態にかかわらず、全ての労働者に確実に交付しましょう。また、パートタイム・有期雇用労働者に対しては、昇給・退職手当・賞与の有無および相談窓口についても書面または電子メール等により明示しなければなりません。
これに違反し、行政の指導・勧告に従わない場合は、企業名が公表されるほか、10万円以下の過料が科されることがあります。雇用形態にかかわらず、全ての労働者に確実に交付しましょう。
2.労働者にとって重要な情報が足りない
労働条件通知書を交付していても、労働者にとって重要な情報が不十分だった場合はトラブルに発展する可能性があります。
「転勤があるとは思っていなかった」「賞与が毎年もらえるものだと思っていた」といった不満を労働者が抱えることにより、退職などにつながる恐れがあります。
なお、2024年4月の法改正により、全ての労働者に対して「就業の場所および従事すべき業務の変更の範囲」を明示することが義務化されました。
転勤を想定しているのであれば「(最初の事業所)、その他会社が指定する事業所」、賞与の支給の有無は業績次第であれば「本人の実績、会社の業績を勘案し支給することがある」といったように、労働者の理解を得られるように記載しましょう。
3.労働条件通知書通りの対応がされていない
労働条件通知書を交付していても、実際の対応がそれに即したものでないと労働者とのトラブルに発展する恐れがあります。
例として、労働条件通知書に書いてあるよりも実際の勤務時間が長い、残業代が規定どおりには支払われないといったことが挙げられます。明示された条件が実態と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できるほか、就業のために住居を変更した労働者が14日以内に帰郷する場合は使用者が旅費を負担しなければなりません。
また、採用過程で高い条件を提示しながら実際には低い条件で雇用した場合、信義則違反として損害賠償が認められるケースもあります。労働条件通知書の記載内容と実態が一致するよう、適切な運用を徹底しましょう。
労働条件通知書に関するよくある質問
最後に、労働条件通知書に関する疑問にお答えします。
【労働条件通知書に関するよくある質問】
●労働条件通知書は必ず作成しなければいけませんか?
●労働条件通知書はパート・アルバイトにも交付が必要ですか?
●労働条件通知書は雇用契約書と兼用できますか?
●労働条件通知書は就業規則で代用可能ですか?
●労働条件通知書の電子交付はどう対応すれば良いですか?
●労働条件通知書はメール以外でも交付できますか?
●昇格や降格、異動など労働条件が変わった場合の対応方法は?
Q1:労働条件通知書は必ず作成しなければいけませんか?
はい、必ず作成・交付しなければなりません。労働基準法第15条で、労働契約を締結する際には労働条件を明示することが義務付けられているためです。
Q2:労働条件通知書はパート・アルバイトにも交付が必要ですか?
はい、労働条件通知書は、雇用形態に関係なく、全ての労働者に対して発行する必要があります。
なお、パートタイム・有期雇用労働者に対しては、労働基準法上の明示事項に加えて、昇給・退職手当・賞与の有無および相談窓口についても書面または電子メール等(労働者が希望した場合)により明示することが、パートタイム・有期雇用労働法第6条により義務付けられています。
Q3:労働条件通知書は雇用契約書と兼用できますか?
はい、労働条件通知書と雇用契約書は兼用できます。「労働条件通知書兼雇用契約書」として作成すれば、2種類の書類を作成・管理する手間が省けます。
Q4:労働条件通知書は就業規則で代用可能ですか?
原則として、労働条件は労働条件通知書などにより、労働者一人ひとりに個別に明示する必要があります。
ただし、就業規則において当該労働者に適用される労働条件が具体的かつ明確に特定されており、その内容が確実に周知されている場合に限り、実務上は代用が可能と解されるケースもあります。
もっとも、本来就業規則は、全ての労働者が守らなければならない規則などを定めたものであり、一人ひとり個別に作成する労働条件通知書とは性質が異なります。このため、たとえ内容が共通していても、労働条件通知書と就業規則を別々に作成し、併せて交付するケースが一般的です。
Q5:労働条件通知書の電子交付はどう対応すれば良いですか?
以下の条件を全て満たせば、電子交付が可能です。
【労働条件通知書の電子交付の条件】
●労働者が希望していること
●ホームページなど誰でも閲覧できる方法ではなく、特定の本人のためだけに送信する方法で送付すること
●送付された労働条件通知書の内容を労働者が紙にプリントアウトできる状態であること
Q6:労働条件通知書はメール以外でも交付できますか?
はい、メール以外にも、SNSのメッセージ機能によるファイル送信や、ファクスで書面を送信する方法で交付が可能です。
ただし先述したように、ブログやホームページなど、第三者が閲覧できる方法での交付は認められません。また、受け取った労働者が紙に印刷して確認できる書式で交付する必要があります。
例えば、SNSのメッセージ機能での交付自体に問題はありませんが、「契約期間は○○です。」「就業場所は○○です。」といったように、本文に細切れに記載すると、印刷する際に途切れてしまうため望ましくありません。
厚生労働省や当サイトのテンプレートを参考にして書面を作成し、添付ファイルとして交付することをお勧めします。
(参照:厚生労働省『平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります』)
Q7:昇格や降格、異動など労働条件が変わった場合の対応方法は?
労働条件を変更する場合、原則として労働者との合意が必要です(労働契約法第8条)。変更内容について書面で明示した上で、労働者の自由な意思による同意を得るようにしましょう。
なお、入社時に「将来の異動や条件変更に従う」と包括的に合意していたとしても、それのみで個別の不利益変更が直ちに有効になるわけではありません。変更時点での具体的な合意が求められます。
全ての社員から同意を得られない場合でも、変更後の就業規則を周知させ、かつ変更内容が以下の要素に照らして合理的であると認められる場合は、就業規則の変更によって労働条件を変更できることがあります(労働契約法第10条)。
●労働者が受ける不利益の程度
●変更の必要性
●変更後の内容の相当性
●労働組合等との交渉状況
特に賃金や退職金など生活に直結する重要な労働条件を不利益に変更する場合は、高度の必要性に基づいた合理的な内容であることが厳しく判断されます。また、「同意しないなら解雇する」など、解雇を盾に同意を迫ることは認められません。
労働条件通知書の再交付は法的な合意成立の必須要件ではありませんが、紛争防止の観点から、変更内容は書面で明示しておくことが強く望まれます。変更に当たっては変更理由や内容を丁寧に説明し、十分な検討時間を与えた上で対応しましょう。
労働条件の変更時に確認すべき労働契約法の考え方について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『【よくわかる】労働契約法の何条に注意すればいい?条文を使ってしっかり解説/弁護士監修』)
まとめ
労働条件を記した労働条件通知書は、企業側が全ての労働者に対して交付することが義務付けられた重要な書面です。2019年4月からは電子交付が可能となりましたが、労働者の希望を確認し送り方などに注意が必要です。
労働者にとって重要な情報である絶対的明示事項や相対的明示事項を確実に明記し、記載内容通りに実際に対応することで、労働者とのトラブルを回避しましょう。
記事で確認した記載事項や交付時の注意点を、自社の書面に反映することも大切です。労働条件通知書 兼 雇用契約書のテンプレートをWord形式でご用意していますので、以下から資料ダウンロードしてご活用ください。
また、労働条件通知書を適切に運用するには、就業規則との整合性も重要です。就業規則の作成・変更時に確認すべき項目については、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『【無料テンプレート付】就業規則とは?記載事項と作成・変更の届け出の手順を解説』)
(制作協力/株式会社eclore、監修協力/弁護士 中澤 泉、編集/doda人事ジャーナル編集部)
労働条件通知書 兼 雇用契約書テンプレート【Word版】
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