エンゲージメントとは?ビジネス上の意味や種類・高める方法を解説

エンゲージメントとは?ビジネス上の意味や種類・高める方法を解説

d's JOURNAL
編集部

人事の分野での「エンゲージメント」は、企業と従業員の結び付きの強さのことを指します。エンゲージメントを高めることは、従業員の生産性向上や離職防止につながり、企業業績にも良い影響をもたらすとされています。

本記事では、エンゲージメントの概要やエンゲージメントを高めるメリット、低下する原因などを解説します。組織力を強化したい人事・採用担当者は参考にしてください。

エンゲージメントとは

エンゲージメントとは

「エンゲージメント」(engagement)は、「契約」や「誓約」などといった意味の英単語です。いくつかのシチュエーションによって意味が少しずつ異なりますが、人事の分野では企業と従業員の結び付きの強さを表します。

特に、従業員が会社に対して抱く「帰属意識」や「思い入れ」といった意味で使用されるケースが一般的です。企業は、従業員のエンゲージメントを向上させることでさまざまなメリットを実感できます。

なお、企業活動でのエンゲージメントは「従業員エンゲージメント」とも呼ばれます。従業員エンゲージメントに関して、詳しくは以下の記事もご覧ください。

(参考:『従業員エンゲージメントとは|効果的な取り組みと事例・向上のメリットを解説』)

企業でのエンゲージメントの定義

企業でのエンゲージメントは「従業員エンゲージメント」とも呼ばれます。従業員エンゲージメントの定義は、従業員が企業に対して抱く「貢献したい」という想いや、積極的に関与する態度のことです。

この従業員エンゲージメントは、企業に対する従業員の信頼度が大きく関係します。また、従業員の生産性向上や離職防止に影響するため、非常に大切な指標の一つです。

従業員満足度・モチベーションとの違い

エンゲージメントと似ている言葉に、「従業員満足度」「モチベーション」があります。これらは密接に関係していますが、ビジネスにおける意味合いは異なります。

それぞれの違いを整理すると、以下の通りです。

【従業員満足度・モチベーション・エンゲージメントの比較】

概念 ベクトルの向き
従業員満足度 労働環境や職場の人間関係、待遇などのはたらく側から見た「職場環境の居心地の良さ」を表すもの 組織→個人
モチベーション 「収入を上げたい」「スキルアップしたい」といった、個人の目的を達成するための動機付け 個人→自己の目標
エンゲージメント 企業の理念やビジョンへの共感に基づき、組織の成功に向けて自発的に貢献したいという想い 個人⇔組織(双方向)

「従業員満足度」は、主に待遇や職場環境などの「居心地」に焦点を当てているのに対して「エンゲージメント」は、従業員が企業の目指す方向に共感し、自発的に貢献しようとする状態を指します。

また、「モチベーション」は本来「動機付け」を意味し、多くの場合、自分の成長や報酬といった「自分のため」が軸となります。一方、エンゲージメントは「組織の成長が自分の喜びである」という、組織と個人が共に歩む相思相愛の状態を示す点が特徴です。

なお、組織として成長するには、エンゲージメントと従業員満足度、そしてモチベーションを全て意識することが理想的です。エンゲージメントと従業員満足度、モチベーションは連動している側面もあるため、モチベーションがなければエンゲージメントを高めることも難しいでしょう。そのため、組織の力を引き出すためには、いずれも重要な指標として追求する必要があるのです。

従業員満足度については、以下の記事で詳しく解説しています。
(参考:『従業員満足度(ES)とは?要素と向上するメリットと施策を解説 』)

ワークエンゲージメントとの違い

ワークエンゲージメントとは、人々が抱く「仕事に対するポジティブで充実した心理状態」のことです。仕事の際に一時的に抱く感情ではなく、持続的・全体的な感情である点が大きな特徴です。

会社やメンバーに対する信頼が起点となっている従業員エンゲージメントに対し、ワークエンゲージメントは仕事そのものへのポジティブな心理状態である点が異なります。

エンゲージメントが注目される背景

なぜ近年、エンゲージメントが注目を浴びているのでしょうか。ここでは、社会状況を踏まえた背景を解説します。

【エンゲージメントが注目される背景】
●終身雇用・長期雇用の前提が変化している
●はたらき方や価値観の多様化が進んでいる
●人材採用・定着が経営課題となっている

終身雇用・長期雇用の前提が変化している

エンゲージメントが注目されるようになった理由の一つとして、終身雇用や長期雇用といった従来のはたらき方が変化しつつあることが挙げられます。これまでのはたらき方では「組織が個人を支える」という関係性が一般的でしたが、近年は個人のキャリアを自律的に設計できるようになっており、組織と個人が対等な関係を構築できるように変化しています。

このような環境では、組織と個人の結び付きを維持することが難しくなるため、両者をつなぐための新しい方法として、エンゲージメントの向上が重視されてきているのです。

はたらき方や価値観の多様化が進んでいる

デジタルネイティブである「ミレニアル世代」が社会で活躍するようになったこともあり、仕事への価値観の多様化が進んでいるという背景もあります。ミレニアル世代は、画一的な価値観にとらわれず、仕事に対して多様な価値観を持っている傾向があります。例えば、「出世よりも、やりがいを重視したい」「カルチャーが合わない会社で長くはたらかず、合う職場を探して転職する」といった具合です。

さまざまな価値観を持つ従業員に、自社で活躍してもらうためには、画一的なマネジメントでは限界があるでしょう。そのため、エンゲージメントを重視して、個々人の考えを尊重しつつ企業に対する帰属意識を高めてもらう必要があるということです。

人材採用・定着が経営課題となっている

近年は、転職希望者の数よりも求人の数のほうが多い「売り手市場」が続いています。つまり、仕事が見つかりやすいため転職希望者にとって有利な状況であるということです。
その結果、多くの企業で人材の確保や定着率の改善が経営課題となっており、この状況もまたエンゲージメントが重視される要因の一つでもあります。

エンゲージメントが高まると、従業員は仕事にやりがいを持つため、定着率の改善が期待できます。また、「居心地が良く、定着率が高い職場だ」ということを対外的に示せれば、求人への応募が増える可能性もあるでしょう。

エンゲージメントが高い企業・低い企業の違い

「どのような企業なのか」によって、エンゲージメントの度合いが左右されます。以下で解説する、エンゲージメントの高い企業・低い企業の特徴を押さえておきましょう。

エンゲージメントが高い企業の特徴

以下のうち、当てはまる項目の多い企業ほど、エンゲージメントが高いと考えられます。

【エンゲージメントが高い企業の特徴】
●明確なビジョンやミッションが全社に浸透している
●社内のコミュニケーションが活性化している
●人事評価制度が整備されている
●人材配置が適切である
●管理職の育成に力を入れている

自社のミッションやビジョンが浸透している企業では、「自分たちはどこに向かうべきか」が共有されているため、多くの従業員が前向きに仕事に取り組めるでしょう。また、社内のコミュニケーションや人事評価制度、人材配置など、心地良く仕事できる環境が整っていることも非常に重要です。

さらに、従業員のエンゲージメントに大きな影響を与える管理職を適切に育成している企業も、エンゲージメントが高い傾向にあります。なぜなら、管理職とメンバー関係性が良く、スムーズなコミュニケーションが取れると、エンゲージメントに直結するためです。

エンゲージメントが低い企業の特徴

反対に、エンゲージメントが低い企業には以下の特徴が見られます。

【エンゲージメントが低い企業の特徴】
●従業員のモチベーションが低い
●従業員間のコミュニケーションが希薄である
●組織が複雑化し、横のつながりが希薄になっている

エンゲージメントが低い企業では、従業員一人ひとりの仕事に対する熱意が不足しているため、モチベーションが低いことが多いでしょう。結果、チームワークへの意識が欠如し、コミュニケーションが希薄になっていることも考えられます。

また、コミュニケーションが希薄なまま組織が大きくなると、部署同士の横のつながりも薄くなってしまいがちです。このような状態になると、他部署がどのような業務を行っているのかが把握しづらくなり、部署間での協力が必要な場面でも適切な連携が難しくなってしまいます。

エンゲージメントを高めるメリット

エンゲージメントを高めるメリット

ここでは、エンゲージメントを高めることで企業が実感できるメリットを、「経営」「従業員」「採用活動」の3つの視点から解説します。

生産性・業績の向上

自社のエンゲージメントを高めることは、組織の生産性・業績の向上に影響します。エンゲージメントが高い従業員は、「会社の成長」と自身の目標をうまく結び付けて捉えることができるため、自発的に努力したり工夫を凝らしたりするようになります。そのような従業員が多くはたらいていると、組織全体の生産性が向上するでしょう。

また、このように考えられる従業員が増えると、組織の規律性が向上していくことも期待できます。一人ひとりが何事にも自発的に向き合うマインドを持つことで、現場で必要な判断の質が高まるためです。その結果、ボトムアップによるアイデアの提案にもつながります。

市場環境の変化や多様化する顧客ニーズに対しても、現場主導で迅速かつ的確に対応できる柔軟な組織を目指していくためにも、エンゲージメントの向上は不可欠な要素といえます。

離職率の低下・定着率の向上

エンゲージメントが高い従業員は、組織への帰属意識が強くなります。そのため、離職率が下がり、定着率が向上するというメリットにもつながります。

会社の方針や意思決定についても、エンゲージメントが高ければ前向きに捉えられるため、何らかの変更があっても離職につながるリスクは低いでしょう。例えば、業務内容やポジションなどの変更があった場合も、会社への信頼度が高い従業員であれば、その変化を前向きに捉えてくれる可能性があります。

また、一時的な業績悪化に見舞われたとしても、将来を過度に悲観することなく、共に乗り越えてくれることも期待できます。これは、エンゲージメントが高い従業員は長期的な視点で物事を捉え、「この現状をどのように乗り越えるべきか」を考えられるためです。

(参考:『離職率とは?離職率の平均や計算方法、改善策と事例を解説 』)

採用力・組織ブランドの向上

エンゲージメントの向上は、採用活動にもメリットをもたらしてくれます。なぜなら、エンゲージメントが高く、自社に対する誇りを持っている従業員が多い企業は、転職希望者にとって魅力的に映るためです。結果、多くの転職希望者から応募が集まり、自社に合う人材を採用できる可能性も高くなります。

また、従業員の知人が仕事を探している場合、その知人を自社に紹介してもらう「リファラル採用」につながることも期待できます。

エンゲージメントの測定方法と指標


エンゲージメントは、従業員の会社への愛着や帰属意識からなるものなので、エンゲージメントそのものを数値で測定することは難しいでしょう。しかし、「エンゲージメントサーベイ」という方法を用いれば、目に見えない心理状態を客観的なスコアとして可視化することができるため、自社のエンゲージメントの状態を測定できます。
ここからは、エンゲージメントサーベイでエンゲージメントを測定する方法やポイントなどを解説していきます。

エンゲージメントサーベイによる測定

エンゲージメントサーベイは、自社の従業員のエンゲージメントを把握するための調査です。従業員に対してアンケートを実施し、結果を見て「どの回答が多いのか」を数値化することで、自社のエンゲージメントのスコアを計測します。

エンゲージメントサーベイは、半年~1年に1回など、定期的に実施することで、過去の結果との比較が可能です。エンゲージメントスコアの変化から、自社の改善点や強みを分析できます。

主なエンゲージメント指標

エンゲージメントサーベイによる測定を行う際は、「エンゲージメント総合指標」「ワークエンゲージメント指標」「エンゲージメントドライバー指標」の3つからなる指標を用います。

それぞれの役割と具体的な計測手法は、以下の通りです。

【エンゲージメントを測定する主な3つの指標】

指標名 測定する内容 主な測定の項目・計測手法
エンゲージメント総合指標 従業員から企業への評価を数値化したもの ●職場を親しい人に薦めたいか等の推奨度を測る「eNPS」など
ワークエンゲージメント指標 従業員自身の業務に対する熱量を数値化したもの ●活力・熱意・没頭の3項目で計測する「UWES」
●「新職業性ストレス簡易調査票」など
エンゲージメントドライバー指標 エンゲージメントを左右する要因を表すもの ●組織との関係性(組織ドライバー)
●職務への満足度(職務ドライバー)
●個人の資質(個人ドライバー)

エンゲージメント総合指標は、従業員から企業への評価を数値化した指標です。職場の推奨度を計測する「eNPS(Employee Net Promoter Score)」をはじめとする項目が含まれます。

「ワークエンゲージメント指標」は、従業員自身の業務に対する熱量を数値化した指標です。活力・熱意・没頭の3項目でワークエンゲージメントを計測する「UWES(Utrecht Work Engagement Scale)」や、ストレスチェックで用いる「新職業性ストレス簡易調査票(New BJSQ)」などを用いて計測します。

そして、「今後、従業員エンゲージメントを向上させられる要因は何か」を表す数値がエンゲージメントドライバー指標です。企業と従業員の関係を表す「組織ドライバー」と、自身の業務への満足度など、当事者意識を表す「職務ドライバー」、そして従業員自身の資質が業務に与える影響の程度である「個人ドライバー」の3要素で構成されています。

サーベイ設計のポイント

エンゲージメントサーベイを設計するにあたっては、従業員が回答しやすい内容であることを意識しましょう。具体的には、以下のポイントを押さえることが大切です。

【エンゲージメントサーベイを設計する際に押さえておきたいポイント】
●項目数と実施頻度を適切に設定する
●選択肢を5段階前後に設定する
●複数回実施する際は、項目や選択肢をできるだけ統一する
●自由記入欄を設ける

設問数が多いほど、エンゲージメントの実態をより高い精度で把握できますが、同時に回答する従業員の負担が増えてしまいます。そのため、設問数の見極めが重要です。
月に1回など、頻繁に実施するのであれば10~15問、年に1回程度であれば40~50問程度と多めに設定するなど、頻度と回答数のバランスを考えましょう。

ほかにも、選択肢の数や自由記入欄の設置など、従業員目線で考えて「どのように設計すれば負担が少なく、回答しやすいか」を意識することが大切です。

エンゲージメントサーベイの質問例

エンゲージメントサーベイは、調査の目的によって適切な質問項目が異なります。ここでは、「はたらきやすさについて調査したい場合」「はたらきがいについて調査したい場合」の2つに分けて、質問の例を紹介します。

まず、自社のはたらきやすさについて調査したい場合は以下の質問を設けるとよいでしょう。

【はたらきやすさについて調査したい場合の質問例】
●あなたの職場では、業務を遂行するために十分な設備が整っていますか
●現在の業務量は、あなたにとって適切だと思いますか
●現在の業務内容は、あなたに合っていると感じますか
●あなたの職場は、困ったことがあると相談しやすい雰囲気ですか
●評価制度と給与について、納得感がありますか

続いて、はたらきがいについては、アメリカの世論調査会社であるギャラップ社が実施している「Q12(キュートゥエルブ)」を活用すると効率的に調査できます。Q12は、12の質問に対して、1~5点の5段階で回答してもらう方式です。

【Q12の質問項目】
●私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている
●私は自分の仕事を正確に遂行するために必要な設備や資源を持っている
●私は仕事をする上で、自分の最も得意とすることを行う機会を毎日持っている
●直近一週間で、良い仕事をしていることを褒められたり、認められたりした
●上司または職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれている
●仕事上で、自分の成長を励ましてくれる人がいる
●仕事上で、自分の意見が考慮されているように思える
●自分の会社の使命・目標は、自分の仕事を重要なものと感じさせてくれる
●自分の同僚は、質の高い仕事をすることに専念している
●仕事上で、誰か最高の友人と呼べる人がいる
●この半年の間に、職場の誰かが自分の進歩について、自分に話してくれた
●私はこの一年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った

上記のほかにも、「従業員は自社のビジョンにどの程度共感しているのか」を把握したい場合もあるでしょう。ビジョンへの共感度については、言葉の上では理解できていても、行動や価値判断に反映されるとは限らないため、エンゲージメントサーベイだけでは把握が難しい可能性があります。

そのため、ビジョンへの共感度に関しては、人事評価のプロセスに含めて判断することをお勧めします。企業側が「望ましい」とする従業員の行動特性や達成目標を明文化し、評価基準に盛り込めば、評価者の目線を通じて従業員のビジョンへの共感度を測れるでしょう。

エンゲージメントが低下する主な原因

エンゲージメントが低下する場合、主に以下の原因が考えられます。自社では以下のようなことが起きていないか確認しておきましょう。

【エンゲージメントが低下する主な原因】
●評価・処遇への不満
●キャリアの不透明さ
●上司との関係性・マネジメントの課題
●組織のコミュニケーション不足

評価・処遇への不満

人事評価の基準があいまいな場合は、その不満がエンゲージメントの低下につながります。特に、評価基準が透明化されておらず、上司の主観的な評価に偏っていると、公平性が保たれないため、従業員は不満に感じるでしょう。

また、「報酬が成果に見合っていない」と従業員が感じる場合も同様に、エンゲージメントが低下する要因となり得ます。

キャリアの不透明さ

キャリア支援の質も、エンゲージメントを左右します。なぜなら、スキルアップやキャリアアップの機会が少なく、従業員が自身のキャリアパスを描けない場合は、モチベーションの低下に直結するためです。

また、昇進や異動の基準があいまいな場合も、前述の「評価・処遇への不満」と同様に不公平感を生むため、エンゲージメントを低下させてしまいます。

なお、キャリア開発の必要性や具体的な手法については、以下の記事をご覧ください。

(参考:『キャリア開発とは?メリットや具体的な手法・企業の実施例を紹介』)

上司との関係性・マネジメントの課題

適切なマネジメントができておらず、上司と部下の関係性に課題がある場合は要注意です。従業員が会社に対して愛着を抱くには、まず「チームのために頑張りたい」「周囲の人たちに貢献したい」という想いがなければならないため、上司と良い関係性が築けていなければ、エンゲージメントはなかなか向上しません。

単に「一緒にはたらく関係」としか認識していなければ、上司・部下間での関係性の形成や部下のエンゲージメントの向上は難しいでしょう。

組織のコミュニケーション不足

エンゲージメントが低下する原因としては、コミュニケーションの不足も挙げられます。情報共有やフィードバックなど、組織内で適切なコミュニケーションが行われていなければ、従業員が組織のビジョンや目標に対し、十分に納得・共感できないためです。

また、コミュニケーションが気軽に取れない環境では、従業員が自身の意見を自由に提案できないため、主体性や創造性が抑制されて、やはりエンゲージメントの低下につながります。

エンゲージメントを高めるための8つの具体的な施策


上述したように、エンゲージメントはさまざまな要素の影響を受けます。そのため、エンゲージメントを高めるには、企業や組織全体に目を向け、丁寧に改善を重ねていく必要があります。

ここでは、エンゲージメントの向上に向けて取り組みたい、8つの施策を見ていきましょう。

【エンゲージメントを高めるための具体的な施策】
1.評価制度・目標管理の見直しを行う
2.マネジメント力を強化する
3.従業員の適性を活かした人員配置を行う
4.経営理念やビジョンを浸透させる
5.教育・研修を実施する
6.キャリア開発の支援を行う
7.組織コミュニケーションを活性化させる
8.はたらき方・職場環境の整備をする

1.評価制度・目標管理の見直しを行う

評価制度への不満が、エンゲージメントが低下する一因となっている場合は、制度を見直しましょう。例えば、「実績を出しているにもかかわらず、給料に反映されていない」という従業員がいる場合、エンゲージメントを高めることは難しいでしょう。

従業員のパフォーマンスを公平かつ適切に評価する制度を整えられれば、自社への信頼が回復し、エンゲージメントの向上が期待できます。

また、従業員のモチベーションを向上させるには、目標管理制度の導入もお勧めです。従業員が自分で決めた目標を意識することで、仕事に対するやりがいと責任感を感じるようになります。

なお、人事評価でよくある課題や解決方法については以下の記事で解説しています。

(参考:『人事評価とは?意味や目的、課題と対応策を解説』)

2.マネジメント力を強化する

必要に応じて、上司に向けた研修も実施し、上司のマネジメント力を強化したいところです。

具体的な取り組みの例としては、部下の自発的な行動を促す「コーチングスキル」の習得や、部下の本音や悩みを受け止めるための「1on1ミーティング」の実践トレーニングなどが挙げられます。また、結果だけでなくプロセスを認める「適切なフィードバック」の手法を学ぶことも、部下との信頼関係を築く上で非常に有効といえるでしょう。

上司の役割は、部下が最大限のパフォーマンスを発揮できるようにサポートすることです。このようなサポート、つまりマネジメントが適切であれば部下のモチベーションや会社への貢献意欲が向上し、エンゲージメントにも良い影響を与えるでしょう。

3.従業員の適性を活かした人員配置を行う

従業員にはたらきがいを感じてもらうためには、スキルや適性に合った人員配置を行うことも大切です。個々の従業員の能力や適性を正確に把握し、それに見合った評価や配置を行うことで、「きちんと自分が認められている」「会社に貢献が求められている」という実感を得てもらいやすくなります。

また、強みを活かした人員配置を実現すれば、それぞれのパフォーマンスが最大限に引き出されるため、組織全体としての生産性も向上します。目に見える形で成果が向上すれば、それぞれが業務に対する手応えを感じられるため、仕事へのモチベーションがさらに高まるでしょう。

4.経営理念やビジョンを浸透させる

エンゲージメントを高める上では、自社が目指す経営理念やビジョンをきちんと理解してもらう必要があります。それには、単に文字上で浸透させようとするのではなく、日々の業務に落とし込めるレベルにまで体得してもらうことが大切です。

従業員個人の目標と企業の目標の擦り合わせを行い、一人ひとりに自分の役割を認識してもらうことで、より深く理念やビジョンを浸透させられます。また、業務を遂行する上で、日常的にビジョンに立ち返れるような仕組みを設けたり、定期的にディスカッションを行ったりすることも重要です。

経営理念については、以下の記事で詳しく解説しています。

(参考:『経営理念とは?よい経営理念の条件や作り方・事例を解説【テンプレート付】』)

5.教育・研修を実施する

人材育成に注力することも、エンゲージメントを高めるために重要です。

特にマネジメント層は、部下の意欲や能力を引き出す重要な役割を持っているため、重点的に育成のアプローチを行う必要があります。その上で、全従業員を対象にスキルアップのサポートを行うと良いでしょう。近年、日本では終身雇用の考え方がなくなりつつあるため、「この企業で長くはたらいても成長できない」と思われてしまうと、エンゲージメントが下がり、従業員が離れる可能性があります。

例えば、オンライン研修を導入したり、資格取得を支援したりして、従業員のスキルアップを支援することで、自社ではたらく価値を提供するとともにモチベーションや生産性の向上が期待できます。

なお、教育を行う上で知っておきたい「人材育成マネジメント」について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

(参考:『人材育成マネジメントとは?必要なスキルや効果的な手法、導入事例も解説』)

6.キャリア開発の支援を行う

従業員ができることや、「やりたい」と思えることが増えると、仕事のやりがいが生まれ、エンゲージメントの向上が期待できます。そのため、エンゲージメントを向上させるには、キャリア開発を充実させることも大切です。

OJTや定期的な研修を通してスキルアップを支援するほか、上司との相談の機会を設けて、従業員が自身のキャリアについて上司と話す場を提供すると良いでしょう。

キャリア開発の具体的な手法については、こちらの記事で解説しています。

(参考:『キャリア開発とは?メリットや具体的な手法・企業の実施例を紹介』)

7.組織コミュニケーションを活性化させる

従業員の意欲を引き出すためには、社内コミュニケーションを活性化させることも大切です。安心して何でも言い合える風通しの良い関係性が築かれれば、仕事の悩みや不安もすぐに打ち明けられるため、モチベーションが損なわれるリスクが軽減されます。

また、従業員同士のつながりが深くなれば、組織への帰属意識も高まるため、従業員エンゲージメントも自然と向上していくでしょう。さらに、生産性の向上や離職率の低下にもつながるため、社内コミュニケーションが希薄になっている場合は早急に改善を目指すことが大切です。

具体的な方法としては、「定期的な面談の実施」「社内報の充実」「コミュニケーションツールの導入」「ランチミーティングやワールドカフェの導入」「フリーアドレスの導入」といったさまざまなアプローチが考えられます。工夫次第では、それほど費用をかけずに実行できるものもあるため、自社に合った方法を検討してみましょう。

8.はたらき方・職場環境の整備をする

エンゲージメントを高めるためには、仕事に対するネガティブな要因を取り除くことも非常に大切です。そのために、勤務状況や業務フローなどを見直し、従業員がはたらきやすい職場環境を整えていきましょう。

例えば、長時間労働が慢性化している状態では、エンゲージメントの向上は期待できないため、従業員が前向きな気持ちではたらけるように労働環境を整備したいところです。

ほかにも、以下のような制度を取り入れると、職場環境が改善され、エンゲージメントの向上が期待できます。

【エンゲージメントの向上が期待できる制度・施策】
●リモートワーク
●フレックスタイム制
●ワーク・ライフ・バランスを重視した休暇制度
●ハラスメント対策の推進

ただし、職場環境の整備は、エンゲージメント向上の第一歩として、あくまでも現状のネガティブな要因を解消することが目的です。従業員の意見を聞きながら、どの部分を優先的に改善していくのかを明らかにした上で実施計画を立てましょう。

エンゲージメント施策を成功させるポイント


上記で紹介したような施策に取り組む際は、以下のポイントを意識すると、成功する可能性が高まります。

【エンゲージメント施策を成功させるポイント】
●データ・サーベイで現状を把握する
●従業員の意見・データを基に改善する
●中長期的な視点で継続的に取り組む
●必要に応じて外部サービスの活用も検討する

データ・サーベイで現状を把握する

従業員のエンゲージメントを把握するための調査である、データ・サーベイ(エンゲージメントサーベイ)を定期的に実施しましょう。調査結果を確認することで、「今、従業員は自社に対してどの程度のポジティブな印象を抱いているのか」を把握できます。

現状を把握できたら、具体的に改善すべき点も浮き彫りになるため、エンゲージメントのさらなる改善につながります。

従業員の意見・データを基に改善する

具体的な施策を導入する際には、従業員の意見を適切に反映させることも大切です。どれほど良い施策であったとしても、従業員が求めるものでなければエンゲージメントの向上にはつながりにくいといえます。

会社側と従業員側とでは、求める要素に違いがある可能性もあるので、ヒアリングやアンケートを実施して意見を求めるとよいでしょう。例えば、「細かく業務やキャリアをサポートしたほうがよい」と考えて施策を打ったとしても、実際には「もっと裁量を広げてほしい」「自由にキャリアを広げてみたい」と考える従業員が多い場合もあります。

こうしたずれを放置したまま施策を実行しても、なかなか思うような成果は得られません。きちんと効果を出すためには、従業員の考えを丁寧に拾い上げることが肝心です。

中長期的な視点で継続的に取り組む

エンゲージメントを改善するための取り組みは、個々の施策によって得られる効果も違ってきます。目に見える変化が表れるまでには時間がかかることも多いので、データの収集、分析を行った上で、じっくりと取り組んでいくことが肝心です。

データの取り扱いについては、どの要素に原因があるのかを特定するためにも、数値が低い項目に関する分析を徹底することがポイントです。例えば、企業理念に関する項目の数値が優れない場合は、その原因をさまざまな角度から検証してみると良いでしょう。

「従業員に対して発信する機会が不足しているのではないか」「経営層とマネジメント層、あるいはマネジメント層と現場に認識のずれがあるのではないか」「理念やビジョンが現実に即していないのではないか」といったさまざまな可能性が考えられるため、正確に実態を把握することが大切です。

必要に応じて外部サービスの活用も検討する

キャリア支援や福利厚生制度の充実などを自社だけで対応するには、どうしてもリソースが不足する場面もあります。社内環境の改善にリソースを傾け過ぎれば、本来の業務に支障を来してしまう可能性もあるので、必要に応じて外部サービスを活用することも検討してみましょう。

従業員エンゲージメントの向上に関する外部サービスには、次のような種類があります。

【外部サービスの具体例】
●エンゲージメントサーベイのツール
●コンサルティングサービス
●従業員向けのエンゲージメント研修
●マネジメント層向けのリーダーシップ研修
●コミュニケーション研修
●社内コミュニケーションツール
●データ管理ツール・アプリ

例えば、従業員育成に関するリソースが不足しているのであれば、外部の講師派遣サービスなどを利用してみてもよいでしょう。また、社内コミュニケーションを活性化させるために、外部研修や専用のツールを利用してみることも一つの方法です。

エンゲージメント向上に取り組む企業事例


従業員のエンゲージメントが高い企業では、実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。ここでは、企業の事例を参考にしながら、施策に活かせるヒントを探ってみましょう。

事例:経営メッセージの発信とはたらきやすい制度整備「株式会社良品計画」

国内外に「無印良品」の店舗を展開する株式会社良品計画では、商品や無印良品の考え方を正しく伝達していくために、毎年2回、役員が全国各地の店舗を回る「役員行脚」を実施しています。各店舗のパート・アルバイトも含め、全従業員とビジョンを共有し合うことで、雇用形態に関係なく、自社のブランドに誇りが持てる仕組みが構築されているのです。これが、エンゲージメントの向上につながっています。

また、同社ではワーク・ライフ・バランスの支援制度として、独自の育児・介護休暇制度や時短制度、在宅勤務制度を導入し、はたらきやすい職場づくりにも率先して取り組んでいます。特に象徴的な制度が、2016年から導入された「カムバック制度」です。
この制度では、介護や配偶者の転勤などのやむを得ない事情で退職する従業員を対象に、再雇用を約束しています。退職をしても良品計画で培った経験が無駄になることはなく、自身のキャリアとして保管されるのです。

さらに、同社では2022年から、日本・海外事業に従事する正社員・嘱託職員・パート・アルバイトを含む約3万人を対象に、大規模なエンゲージメント調査を実施しています。年1回の調査によって、エンゲージメントに関する検証を丁寧に行いながら、改良を重ねているようです。

(参考:『正式な制度が安心を生む。「カムバック採用」の良品計画がつくる、戻りたくなる組織』)

エンゲージメントに関するよくある質問

最後に、エンゲージメントに関して多くの人事担当者が抱く質問に答えます。

【エンゲージメントに関するよくある質問】
●エンゲージメントとはどういう意味ですか?
●エンゲージメントが高いとはどういった状態ですか?
●ビジネスで「エンゲージメント」を言い換えると何ですか?

Q1:エンゲージメントとはどういう意味ですか?

従業員と企業の結び付きを示す指標が「エンゲージメント」です。従業員は企業に対して、愛着や自発的な貢献意欲を持ち、企業は従業員のはたらきに報う、といった結び付きを指します。

Q2:エンゲージメントが高いとはどういった状態ですか?

企業と従業員が目指す方向が一致しており、双方が信頼し合っている状態は「エンゲージメントが高い」といえるでしょう。具体的には、企業に「求められていること」が従業員の「やりたいこと」であり、双方の期待値が合致している状態が該当します。

Q3:ビジネスで「エンゲージメント」を言い換えると何ですか?

ビジネスシーンでは、エンゲージメントという言葉は「深いつながり」「信頼関係が築かれている状態」を表します。企業と従業員がお互いに信頼し合い、深いつながりが生まれている状態ということです。

まとめ

エンゲージメントとは、企業と従業員の双方による信頼関係のことです。
エンゲージメントが高い企業では、従業員が自発的に業務に向き合い、改善のための提案を活発に行います。エンゲージメントが高い、つまり企業理念に深く共感したメンバーが多ければ、団結力が自然と生まれるため、自由な発想を活かせるしなやかな組織づくりが行えるでしょう。

エンゲージメントを高めるためには、労務環境などのネガティブな要因を解消した上で、自社の理念やビジョンを浸透させる取り組みが必要となります。エンゲージメントの向上に成功している企業の事例も参考にしながら、質の高い改善計画を立てましょう。

(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)

従業員エンゲージメントサーベイシート ~従業員のパフォーマンス向上のヒントがここに~

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