【Excelテンプレート付】スキルマップとは?作り方・項目例・評価基準を解説

スキルマップとは?テンプレートや項目例・評価基準・作成方法を解説

doda人事ジャーナル編集部

スキルマップとは、業務に必要なスキル、および各従業員の習熟度を一覧化するための表です。自社の現状を把握する上で有用であり、育成・人員の配置・採用活動などでも有効活用できる可能性があります。

本記事では、人事・採用担当者がスキルマップを設計するためのノウハウを解説します。「誰が何に対応できるのか可視化してほしい」と求められている人事・採用担当者は、ぜひご覧ください。

記事を読みながら自社のスキルを整理する際は、Excelテンプレートをご活用ください。

スキルマップとは

スキルマップとは

スキルマップとは、各従業員が保有している業務スキル、およびそれに対する評価を可視化した一覧表のことです。従業員一人ひとりが持っているスキルとその習熟度を把握し、業務に対する適性を判断する上で有用なツールだといえます。

スキルマップの取り扱い方は企業によって異なり、数値による段階評価だけではなく「〇×△」と記号で表すこともあります。

また、個人ではなくチームや部門単位でグルーピングして、組織全体のスキルの習熟度を測ることも可能です。

スキルマトリックス・人材ポートフォリオとの違い

スキルマップと似た用語として「スキルマトリックス」と「人材ポートフォリオ」があります。スキルマトリックスとスキルマップは、従業員のスキルや習熟度を表形式で整理する点で共通しており、同じ意味で使われることもあります。

ただし、組織やツールによって定義や対象範囲が異なる場合があります。

一方で、スキルマップと人材ポートフォリオには明確な違いがあります。

【スキルマップと人材ポートフォリオの違い】

スキルマップ 人材ポートフォリオ
目的 従業員一人ひとりの保有スキルや習熟度を可視化する 経営戦略や事業計画の実現に向けて、現在の人的資本の構成、および必要となる人材の要件を分析する
評価の対象 従業員個人 組織全体
活用方法 ●各従業員に不足しているスキルを特定する
●従業員の育成方針を決める
●従業員の配置を検討する
●将来的な人材配置を検討する
●採用計画を策定する

「従業員個人」に焦点を当ててスキルの習熟度を明らかにするツールが、スキルマップです。対して、人材ポートフォリオは「組織全体」に主眼を置いています。経営戦略や事業戦略を実現するために、社内のどの部署に、どのような人材がどの程度必要かを量と質の観点で可視化し、把握することが人材ポートフォリオの目的なのです。

このように、スキルマップと人材ポートフォリオは、導入の軸となる部分が異なります。両者の違いを理解し、自社の状況に応じて使い分けられると最適です。

人材ポートフォリオについては下記の記事で詳細を解説しているので、ぜひご覧ください。
(関連記事:人材ポートフォリオとは?作成の目的や作り方の流れをわかりやすく解説)

スキルマップが注目される背景

かねて製造業などでは活用されてきたスキルマップですが、近年はその他の業界でも注目を集めています。その理由としては、以下の2点が挙げられます。

経営戦略と人材戦略を結び付けるためにスキルの可視化が求められている

スキルマップが注目されている理由を把握するには、まず「人的資本経営」について理解しておく必要があるでしょう。

昨今の企業経営では「人的資本経営」という考え方が注目を集めています。人的資本経営とは、人材を企業の「資本」として捉えて、その価値を最大限に引き出して活用するという経営手法です。人的資本経営の下では「人材は企業価値の向上に欠かせないものである」という考えが重視され、積極的な投資が行われます。

この人的資本経営を実現するに当たっては、採用する人材の要件や育成方針などに、経営戦略の内容を反映する必要があります。そしてそのためには、経営戦略と人材戦略を密に連携させなくてはなりません。

しかし、経営戦略と人材戦略を分断されている企業では、採用・育成・配置といった人材戦略が人事・採用担当者の勘や経験に依存しており、経営戦略に基づいた判断が行われていないのです。

この問題を解決するためのツールが、スキルマップです。スキルマップを導入すれば、従業員一人ひとりが持っているスキルやその習熟度を、共通の評価基準で可視化できます。これにより、経営戦略で掲げられる目標と現状の人材要件のギャップが明らかになれば、データに基づいた戦略的な人材戦略を打ち出せるようになるでしょう。

このように、経営戦略と人材戦略を結び付ける上で、スキルマップは非常に効果的なツールなのです。

なお、人的資本経営については下記の記事でも解説しています。
(関連記事:人的資本経営とは?開示すべき情報や実現の手順・ポイントを解説)

社内のスキル情報がExcel・評価シート・管理職の考えに分散している

スキルマップに注目が集まっている理由としては、各従業員のスキルを一元的に管理できていない企業が多いことも挙げられます。

従業員の持つスキルの管理が、各部門や現場任せになっている企業は少なくないでしょう。このような企業は、資格や研修履歴は人事部がExcelで、人事評価の詳細は評価シートでそれぞれ管理する、という状態になってしまいがちです。

こうした状況を解決するには、各部門や評価シートなどに分散しているスキル情報をスキルマップに集約し、人事評価やキャリア面談の内容と照らし合わせながら活用することが有効です。

共通の基準で整理したスキルの習熟度を、業務上の成果や行動評価などと補完的に用いることで、より公正で納得感のある評価につながります。

また、従業員自身も強みや不足しているスキルを把握しやすくなり、次の目標や育成方針を具体化できるでしょう。こうした活用が期待されることから、スキルマップに注目する企業が増えています。

スキルマップの活用シーン

スキルマップの具体的な活用シーンとしては、以下が挙げられます。

●人材育成に活用する
●人材配置・プロジェクトアサインに活用する
●採用要件の明確化に活用する
●人事評価・キャリア面談の参考にする

人材育成に活用する

スキルマップは、各従業員がどのようなスキルを持っているのか、また習熟度がどの程度であるかを客観的に把握する上で役立ちます。従業員の現状、特に不足しているスキルが明確になれば、その後の研修やOJT、1on1での指導内容も自然と定まるでしょう。

例えば、チームリーダーとしての役割を求めている従業員について、スキルマップ上でメンバー管理のスキルが不足しているとわかったとします。この場合は、チーム運営に関する研修を行う、またリーダー経験の長い従業員をOJTのトレーナーとしてアサインする、といった対応を取ることが効果的であると考えられます。

人材配置・プロジェクトアサインに活用する

属人的な勘や過去の実績だけに基づいて人材配置やプロジェクトへのアサインを決めると、適材適所の配置ができないだけでなく、特定の人材に業務が偏る可能性があります。

その結果、個人の負担が増え、パフォーマンスや生産性が低下するケースもあります。この問題は、スキルマップの導入によって解決できる可能性があります。

スキルマップを用いて、従業員の強み・弱みを客観的な視点で把握すれば、適性のある部署やプロジェクトへの配置が可能となるでしょう。例えば新規プロジェクトを立ち上げる際にも、スキルマップが整備されていれば、その分野での活躍が見込める人材を迅速に把握できると考えられます。

採用要件の明確化に活用する

採用要件を明確化する上でも、スキルマップは有用です。スキルマップを導入し、各従業員に足りていないスキルを明らかにすれば、自社全体で不足しているスキル、そしてそれを補うために必要な人材要件が可視化されます。

例えば、スキルマップの導入によって特定のITスキルを持つ従業員が不足していると判明した場合には、「どのような技術経験が必要なのか」「どの程度の実務経験を求めるのか」を整理し、採用要件として設定すると良いでしょう。

不足するスキルを採用要件へ落とし込む手順は、下記の記事で確認できます。
(関連記事:人材要件のつくり方|採用ミスマッチを防ぐ5つのステップとテンプレート)

人事評価・キャリア面談の参考にする

人事評価やキャリア面談を実施する際に、スキルマップを参考情報として活用することも可能です。業務上の成果や行動評価だけではなく、スキルの保有状況や習熟度も加味することで、多面的に従業員の評価を行えるようになると考えられます。

また「このスキルが足りていないから伸ばしていこう」というふうに、ステップアップに向けた具体的なアドバイスも可能となるでしょう。

ただし、スキルマップの情報だけを、そのまま人事評価に反映することは避けましょう。スキルマップで把握できる内容は、設定する項目や評価基準によって異なるため、スキルの保有状況や習熟度だけでは十分に把握しにくい要素もあります。

そのため、業務上の成果や行動評価など、ほかの評価軸も組み合わせて総合的に判断することが大切です。

スキル以外の評価軸や人事評価の進め方は、下記の記事で詳しく確認できます。
(関連記事:人事評価とは?意味や目的、実施するメリットと手順・注意点を解説)

スキルマップ導入のメリットとデメリット

ここで改めて、スキルマップを導入するメリットを確認しておきましょう。

また、スキルマップの導入に伴うデメリットも併せて解説します。スキルマップを有効活用する上では、メリット・デメリットの両方を把握することが重要となります。

メリット:育成・配置・採用の判断を効率化できる

スキルマップを導入するメリットとしては、以下が挙げられます。

●従業員に足りないスキルを把握した上で人材育成の方針を決められる
●各従業員の適性を考慮した上で人材配置を検討できる
●採用要件の検討に活用できる
●人事評価を行う際の参考情報として活用できる
●業務の効率化につながる

先述した通り、スキルマップは人材育成・人材配置・採用活動・人事評価など、多種多様な業務で活用可能です。

また、人材育成や人材配置が最適化されれば、各従業員がより適性のある部署で活躍できるようにもなります。結果として、社内全体の業務効率化にもつながる可能性があります。

デメリット:作成工数・評価のばらつき・形骸化・従業員の不満などが生じ得る

さまざまなメリットをもたらしてくれるスキルマップですが、以下のデメリット・注意点が伴う可能性がある点には注意しましょう。

●スキルマップの作成工数がかさむ可能性がある
●スキルマップの導入によって、人事評価にばらつきが出る恐れがある
●スキルマップを導入したものの、目的を見失って形骸化してしまう
●従業員からの不満が生じる可能性がある

スキルマップを作成するには、まず従業員の業務内容や保有しているスキルを正確に把握する必要があるため、導入までに一定の工数がかかります。導入後も、各従業員のスキル評価に加え、異動者に合わせた評価項目の再設定や担当者間の引き継ぎなど、継続的な運用工数が発生します。

また、スキルマップの項目や評価基準が適切でない場合や、評価者が基準を十分に理解していない場合は、評価にばらつきが生じる恐れがあります。

評価対象者の自己認知と評価者の認識にギャップがあると、評価理由を伝えて認識を擦り合わせるコミュニケーションの難易度も高まります。こうした状態が続けば、評価への納得感が得られず、従業員の不満につながる可能性があります。

さらに、中長期的には、組織変更や事業環境など社内外の変化に応じて、必要なスキルや評価項目を更新・見直す必要があります。見直しが行われないと、実態に合わないスキルマップとなり、運用が形骸化する恐れがあります。

スキルマップを導入する際は、こうしたデメリット・注意点に対する対策を講じることが欠かせません。具体的な対策については後ほど解説いたしますので、そちらもご覧ください。

スキルマップの導入前に確認したいチェックリスト

スキルマップを導入する際には「なぜ導入するのか」「どの部署に導入するのか」といった点を明らかにしておくことが大切です。重要なポイントを事前にリストアップしておき、チェックリストとして活用しましょう。

チェックが必要な項目としては、以下が挙げられます。

●導入の目的
●スキルマップの管理対象部署
●評価対象者と評価者
●更新頻度
●データの公開範囲
●想定される活用方法
●テンプレートを利用するかどうか
●スキル評価方法(評価段階 〇△×、1~4など)

これらの確認が不十分だと、スキルマップ導入の目的が不明瞭(ふめいりょう)になったり、活用方法がわからず運用が形骸化したりする可能性があるため注意しましょう。

スキルマップの作り方・手順6ステップ

スキルマップは、以下の6つのステップに分けて作成することをお勧めします。

各ステップの詳細を順番に解説します。

①評価対象と評価者への説明・教育
②目的と対象部署・職種を決める
③業務フローから必要スキルを洗い出す
④評価項目を大項目・小項目に整理する
⑤行動ベースの評価基準を設定する
⑥評価対象者と上司の役割分担を明確化する
⑦テスト運用し、項目・基準・入力しやすさを改善する

ステップ1:目的と対象部署・職種を決める

最初に、スキルマップを導入する目的と管理対象の部署・職種を決めましょう。「どの部署・どの職種の課題を解決したいのか」が明確になれば、評価項目や評価基準などもスムーズに設定できると考えられます。

スキルマップを初めて導入する場合は、全社ではなく、まずは1つの部署・1つの職種に対象を絞ることをお勧めします。部署・職種を絞ることで、評価対象者や評価項目の整理が迅速に完了し、短い準備期間で導入を進められるためです。スキルマップの修正にも時間がかからないため、PDCAもスピーディーに回せます。

また、導入目的も1つに絞るほうが良いでしょう。関係者が同じ目的意識を持ってスキルマップを運用できるようになり、取り組みが形骸化することを防げる可能性があります。

ステップ2:業務フローから必要スキルを洗い出す

次に、部署の業務フローにのっとり、従業員が身に付ける必要があるスキルを洗い出しましょう。この際、業務フローを漠然となぞるのではなく、以下の要素からスキルの洗い出しを行うことをお勧めします。

現場へヒアリングする際は、まず「その業務や組織がどのような役割を担っているか」を確認しましょう。役割を明確にすることで、業務遂行に必要なスキルを洗い出しやすくなります。

●業務フローを含む業務プロセス全体の流れ
●業務での成果物
●利用しているツール
●業務遂行に必要な資格
●業務で頻発しているミス・失敗

例えばシステム開発の担当部署であれば、基本設計書や詳細設計書といったドキュメント、またプログラムそのものが成果物となります。

そこから洗い出せるスキルとしては、ドキュメンテーションスキルや表計算ソフトの操作スキル、またプログラミングスキルなどが挙げられるでしょう。

このように、上記の要素を中心にスキルの洗い出しを行えば、業務の実態を反映したスキルマップが作成できると考えられます。

ステップ3:評価項目を大項目・小項目に整理する

次に、洗い出したスキルを基に、スキルマップ上の評価項目を整理します。評価項目は、以下のように大項目と小項目、そして評価の観点に分けて管理することが一般的です。

【評価項目の大項目・小項目の分け方】

分類 大項目 小項目 評価の観点
概要 スキルの大まかな分類 業務の実態に基づいたより具体的な評価項目 小項目それぞれをどのように評価するかの観点
具体例 顧客対応力 ●言葉遣い
●状況把握
●積極的な発言
●顧客に対して丁寧な言葉遣いができているか
●顧客の表情や声色から状況を把握し、柔軟に対応できているか
●商談や会議の際に積極的に発言できているか

このように粒度を分けることで、網羅的かつ詳細な評価が可能となります。

また、評価項目は増やし過ぎないように注意しましょう。評価項目が多過ぎると管理が煩雑になり、スキルマップの運用に割く工数がかさんでしまうためです。

洗い出したスキルを重要度で分け、業務で特に大切であると思われるものをピックアップした上で評価項目を整理できると最適です。

ステップ4:行動ベースの評価基準を設定する

評価項目の整理が完了したら、次はそれらに対する評価基準を設定します。

評価基準の設定時に重要となるポイントが「観察可能な行動・成果で定義する」という点です。「~ができる」「~を理解している」というあいまいな基準では、評価対象者が具体的に何をしたのか、あるいはできなかったのかについて、評価者が正確に把握できません。

一方で、客観的に観察できる行動・成果を評価基準に定めれば、評価対象者が達成したこと・しなかったことを評価者が明確に把握できるようになるでしょう。

例えば、営業担当者の商材理解力を測る場合には、「商材を理解している」「商材を説明できる」ではなく「顧客に対して商材を1人で説明し、質問事項に答えられる」という評価基準を設定できると理想的です。

評価段階に関しては、3~5段階で設定することが一般的です。判断に迷う場合は、厚生労働省の職業能力評価シートにならい、4段階で設定することをお勧めします。

(参照:厚生労働省『職業能力評価シートについて』)

ステップ5:評価対象者と上司の役割分担を明確化する

スキルマップの運用へ入る前に、評価対象者と上司の役割分担を明確化しましょう。この点があいまいだと、上司が評価者としての役割を認識できず、スキルマップによる評価が当事者だけで完結することになってしまいます。

あるいは、評価対象者が「スキルマップは上司が評価の際に用いるものだ」と考えて自己評価を行わなくなる、ということもあるでしょう。

自己評価あるいは上司評価しか行われない状況では、両者の認識のすれ違いから、評価に偏りが生じる恐れがあります。そのような事態を避けるためにも、評価対象者と上司それぞれの役割分担を明確にしておく必要があるのです。

ステップ6:テスト運用し、項目・基準・入力しやすさを改善する

ここまでの対応が完了したら、テスト運用に入ります。対象者を絞ってスキルマップを活用してもらい、入力にかかる工数や評価のばらつきなどを確認します。

また、実際に入力してもらった評価内容をチェックして、人事評価やキャリア面談などで活用できるデータかどうかを確かめることも重要です。

テスト後は上記の観点について効果測定を実施し、改善点を洗い出します。この際、テストに参加した対象者からも必ず意見をもらいましょう。

「このフォーマットは画面上で見づらい」「入力が難しい」など、実際に触ったからこそ出せる意見も、漏れなく反映したいところです。テストを終えてスキルマップの改修が完了したら、本格的な運用を開始します。

作成手順に沿って項目や評価基準を整理する際は、下記のExcelテンプレートをご活用ください。

【職種別】スキルマップの項目例

スキルマップの項目は、対象となる業種・職種によっても異なります。

【職種別】スキルマップの項目例
●全職種共通スキルの項目例
●営業職の項目例
●事務・管理部門の項目例
●ITエンジニア職の項目例
●製造職の項目例
●管理職の項目例

ここでは、全職種に共通している項目と、いくつかの職種に絞った項目の設定例を紹介します。

全職種共通スキルの項目例

多くの職種に共通して必要となるスキルとしては、主に以下が挙げられます。

全職種共通のスキル

分類 スキル項目
対人関係 ●報告・連絡・相談スキル
●協調性
●コミュニケーション力
業務遂行力 ●問題解決力
●論理的思考力
業務姿勢 ●業務改善力
●主体性
●情報セキュリティに関する知識
●コンプライアンスに関する知識

上記は、多くの職種で共通項目として検討できるスキルの例です。実際に採用する項目は、自社の業務内容や職務要件に応じて選定しましょう。

また、各項目については、以下のように評価基準を定めると良いでしょう。

【評価基準の例(報告・連絡・相談スキル)】
●レベル1:上司から催促を受けた場合に報告できる
●レベル2:問題発生時に報告できる
●レベル3:業務の進捗を定期的に報告できる
●レベル4:問題が生じる前に相談できる

上記の例では4段階評価となっていますが、よりシンプルに評価したい場合には3段階、詳細に基準を分けたいといった場合には5段階に分けることも可能です。

営業職の項目例

営業職に求められるスキルとしては、以下のような例が挙げられます。

分類 スキル項目
顧客対応・提案・調整 ●顧客理解
●ヒアリング力
●商談力
●交渉力
●部門間・職種間の連携・調整力
準備・計画 ●商材理解
●資料作成
業務管理 ●案件管理スキル
●CRM管理スキル

商材理解や顧客理解など、営業職には定量的な評価が難しいスキルが少なくありません。そういったスキルに関しては、具体的な行動指標で評価基準を設けることで、習熟度を測ることが可能となります。

以下は、商材理解の評価基準を言語化した例です。

【評価基準の例(商材理解)】
●レベル1:上司のサポートがあれば自社商材について紹介できる
●レベル2:顧客に自社商材の仕様や概要を自力で紹介できる
●レベル3:顧客に自社商材がもたらす具体的な価値やメリットを説明できる
●レベル4:顧客の課題に応じて自社の商品・サービスを提案し、質問や懸念に適切に対応できる

このように言語化すれば、評価にばらつきが出る可能性を減らせます。

事務・管理部門の項目例

事務・管理部門のスキルの例は以下の通りです。

事務・管理部門に求められるスキル

分類 スキル項目
業務遂行 ●データ入力
●請求処理
●給与計算
●文書管理
対人関係 ●社外対応
●社内調整力
専門知識 ●表計算ソフト・ワードプロセッサーの扱い ●法令や社内規程に関する知識

事務・管理部門の業務には、作業スピードと正確性の両方が必要となるものが多い傾向にあります。項目にもよりますが、その点を重点的に確かめる評価基準を設定すると良いでしょう。

【評価基準の例(データ入力)】
●レベル1:上司のサポートがあれば定められた時間内でデータ入力を完了できる
●レベル2:定められた時間内でデータ入力を完了し、ミスが〇件以内に抑えられる
●レベル3:定められた時間内でデータ入力を完了し、ミスがゼロ件に抑えられる
●レベル4:作業時間を大幅に短縮してデータ入力を完了し、ミスがゼロ件に抑えられる

なお、各従業員が担う実際の業務の範囲は、企業によって異なります。自社の実情を反映させたスキルマップを作成するためにも、事前の業務の洗い出しは丁寧に行いましょう。

ITエンジニア職の項目例

ITエンジニア職には、主にシステムやアプリケーションの開発・運用に関わるスキルが求められます。

分類 スキル項目
開発業務 ●プログラミングスキル
●設計スキル
●レビュースキル
●各種テスト
基盤・保守運用 ●サーバーに関する知識
●データベースに関する知識
●クラウドコンピューティングに関する知識
●セキュリティに関する知識
マネジメント ●メンバー管理力
●プロジェクトマネジメント力

チームリーダーのスキルマップに関しては、技術的な項目のほかに、マネジメント関連の項目も設けておきたいところです。

また、項目の洗い出しが難しい場合には、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している「ITスキル標準V3」を参考とすることをお勧めします。

評価基準については、ほかの職種と同様に、可能な限り具体的な指標を設定しましょう。例えばプログラミングスキルであれば、以下のように設定できると最適です。

【評価基準の例(プログラミングスキル)】
●レベル1:プログラミング言語に関する知識がある
●レベル2:サポートを受けながら、設計書に従ってプログラミングできる
●レベル3:設計書に従って自力でプログラミングできる
●レベル4:設計書どおりのプログラミングが可能であり、ほかのメンバーの指導もできる

このように分類すれば、従業員一人ひとりのスキル習熟度を詳細に把握できるようになり、チーム編成や育成の方針も明確となるでしょう。

(参照:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『ITスキル標準V3 2011 ダウンロード』)

製造職の項目例

製造職で必要となるスキルとしては、設計・開発に関連するものや、製品の生産・製造に関わるものが多い傾向にあります。以下がその一例です。

分類 スキル項目
設計・開発 ●機械設計
●電気設計
生産・製造 ●機械組み立て
●汎用(はんよう)機械加工
●精密加工
●仕上げ加工
品質管理 ●品質検査
●機械精密測定
●設備保全
業務改善 ●改善提案
●多能工化

評価基準については、現場での作業内容を難易度で分けて、それを基に作成することをお勧めします。汎用機械加工であれば、以下のような評価基準が有用であると考えられます。

【評価基準の例(汎用機械加工)】
●レベル1:サポートがあれば旋盤やフライス盤の操作が可能
●レベル2:旋盤やフライス盤の基本的な操作が自力で可能
●レベル3:旋盤やフライス盤の応用的な操作が可能
●レベル4:難削材の加工や複合加工が可能

より細かくレベルを分けたほうが良い場合もあるので、自社の業務内容に合わせて柔軟に調整しましょう。

管理職の項目例

管理職の主な業務は、チームや部署・部門を管理することです。従ってスキルマップには、以下のようなマネジメントに関するスキルを設定することが一般的です。

分類 スキル項目
マネジメント ●目標設定
●メンバーの進捗管理
●1on1
●人事評価
●リスク管理
●育成計画の策定
組織内外での連携 ●部門間の調整
●他社との連携
事業戦略 ●市場分析
●戦略策定

同じ管理職であっても、課長・マネジャークラスの人材と、部長・役員クラスの人材では、必要となるスキルは異なります。その点も考慮してスキルマップの項目を調整できると理想的です。

評価基準は、対応の早さやメンバーとの関わり方、管理するプロジェクトの規模といった指標を基に設定すると良いでしょう。

以下は進捗管理での評価基準の例です。

【評価基準の例(進捗管理)】
●レベル1:自身やチームの業務の進捗状況を把握できる
●レベル2:チームの進捗を把握し、遅延が生じた際に適切なフォローができる
●レベル3:チームの進捗を把握し、遅延が生じる前に計画や人員を調整できる
●レベル4:遅延の根本的な原因を特定し、再発防止に向けた改善を図れる

実際の評価基準は、項目や評価対象者の役職などを踏まえて調整してください。

スキルレベルの評価基準の作り方

先ほど少し触れた通り、評価基準は4段階ではなく3段階、あるいは5段階で設定可能です。評価対象者の役職や業務内容などによって、最適な段階数は変わります。スキルマップを作成する前に、その使い分け方を把握しておくと良いでしょう。

ここでは、4段階評価の設定例、そして3段階・5段階評価との使い分け方を解説します。

4段階評価の例

4段階評価には中央の評価値がないため、評価者が判断を保留して中央値を選ぶ「評価の中央化」を避けやすくなります。各レベルの違いが明確になり、評価のあいまいさが減ることで、評価の客観性が高まり、対象者の課題も把握しやすくなるでしょう。

また、評価段階が多過ぎず基準も明確に設定できるため、評価判断に迷いにくく、運用負荷を抑えやすい点もメリットです。

4段階評価を設定する場合は、各レベルに以下のような観点で基準を設けることをお勧めします。

●レベル1:知識はあるが単独実施は難しい
●レベル2:支援があればできる
●レベル3:単独で実施できる
●レベル4:他者へ指導・改善提案できる

実際の評価基準については、上記を参考にした上で、詳細な内容や文言を調整しましょう。

3段階・5段階評価との使い分け

3段階評価は、高・中・低とシンプルに評価できる点が強みです。入力にかかる負担や工数も比較的少ないため、特にスキルマップを初めて導入する場合に適しています。

評価段階を細かく分けたい場合には、5段階評価が最適だと考えられます。評価作業の負担は増えるため、従業員がスキルマップにある程度慣れてきてから導入すると良いでしょう。

シンプルに評価を行うなら3段階で、評価の中央化を回避したいなら4段階、細かく評価したい場合は5段階、というふうに使い分けられると理想的です。

定量化しにくいスキルは行動基準に置き換える

コミュニケーション力やリーダーシップ、提案力などは、定量的な評価が難しく、評価者によってばらつきが生じやすい傾向にあります。こういった項目については、行動基準に置き換えて評価基準を設定すると良いでしょう。

例えばコミュニケーション力であれば、以下のような置き換えが効果的であると考えられます。

置き換え前 置き換え後
●コミュニケーション力がない
●コミュニケーション力がある
●レベル1:自身の意見だけを押し通そうとする
●レベル2:相手の話を聞き、意図を理解した上で返答できる
●レベル3:意見の相違がある場合に、論理的に話を組み立てて考えを伝えられる
●レベル4:関係者間の意見を整理した上で、結論をまとめられる

このように、実際の振る舞い方を参考に評価基準を設定することが、定性的なスキルを評価する際のポイントです。

行動特性の具体例や評価への活用方法は、下記の記事で詳しく確認できます。
(関連記事:コンピテンシーとは?意味や項目と具体例、評価や面接での活用方法を解説)

評価のばらつきを抑える方法

スキルマップによって正確に従業員を評価するには、評価者ごとにばらつきが出ないようにする必要があります。そのための対策としては、以下が挙げられます。

対策案 概要
評価ガイドの作成 スキルマップの各項目の説明、また評価の観点などを記したガイドを作成し配布する
サンプル評価の作成 具体的な記入例を記載したサンプルを配布し、評価の際の参考資料として活用してもらう
説明会の実施 評価対象者および評価者向けに、スキルマップ導入の目的や各項目の詳細を説明する会を設ける
ダブルチェックの実施 評価対象者と評価者、あるいは評価者と別の評価者、といった形でダブルチェックを実施し、評価の妥当性を確かめる
面談での擦り合わせ 評価対象者と評価者で面談を行い、評価が妥当であるかの擦り合わせを行う

上記の対策を実施すれば、スキルマップでの評価がばらつく可能性が減り、従業員から不満が出るリスクも低減できるでしょう。

スキルマップの作成・評価・更新における役割分担

スキルマップを作成し、活用するに当たっては、関係各所の役割分担を明確化しておくことも重要となります。以下の解説を参考に、スキルマップを作成・活用する際の役割分担を整理しましょう。

人事・現場管理職・本人・上司の役割分担

スキルマップを運用するに当たっては、人事・採用担当者や現場の管理職、評価される本人、上司それぞれに重要な役割があります。人事・採用担当者は、スキルマップのフォーマットや運用ルールを整備します。

また、スキルマップの運用実態と比較して、ルールに見直しが必要な点があるかを検討する、といった対応を行うことも人事・採用担当者の役割です。

業務内容を整理し、フォーマットに従って項目を埋めていく役割は、基本的に現場の管理職が担います。現場を俯瞰視点から確認している管理職は、業務内容を網羅的に把握していると考えられるためです。

評価項目が埋められたスキルマップは、評価される本人およびその上司が活用します。本人は自己評価を、上司は客観的な行動事実に基づいた評価を行い、それらの内容を擦り合わせて最終的な評価を決定します。

自己評価と上司評価を併用するメリット

スキルマップを活用する際は、評価対象者本人の自己評価、そしてその上司の評価を併用することをお勧めします。自己評価を取り入れれば本人の納得感が高まり、後々不満が出るリスクを減らせる可能性があります。

その一方で、上司の視点からの評価も取り入れることで、評価の客観性もある程度は確保可能です。このように、自己評価と上司評価を併用すると、本人の納得感と評価の客観性を両立できるわけです。

本人と上司の評価に乖離(かいり)がある場合は、評価面談などを通じて認識の擦り合わせを行いましょう。「なぜその評価なのか?」をお互いに話し合い、両者が納得できる落としどころを見つけることが重要です。

評価面談で認識をそろえた後、継続的な成長支援には1on1を活用できます。進め方は下記の記事をご覧ください。
(関連記事:1on1ミーティングとは?目的や効果、導入する方法と進め方を解説)

スキルマップの公開範囲と個人情報・心理的安全性への配慮

スキルの習熟度は各従業員の強み・弱みであり、その内容によっては個人情報として見なされる場合もあります。そのようなセンシティブな情報を、制限を設けず全従業員に公開してしまうと、従業員の心理的安全性を脅かすことになりかねません。そうなると、従業員が自身の現状を正直に登録しなくなってしまうでしょう。

そのような事態を避けるためにも、スキルマップを運用する際は、心理的安全性と情報の利用目的の両方を踏まえて公開範囲を設定することが重要です。公開範囲を狭め過ぎると、人材育成や配置など本来の目的に十分活用できなくなる可能性があります。

そのため、評価対象者が自身以外のデータを確認できないようにする、また自身のデータであっても評価確定前の上司コメントは見えないようにするといった制限を設けつつ、業務上必要な範囲で閲覧権限を設定しましょう。

具体的には、直属の上司だけでなく、その上位のどの階層まで閲覧できるのか、人事部門ではどの部署・担当者が閲覧できるのかを、利用目的と併せて明確に定めることが大切です。スキルマップの情報が何に使われ、誰が閲覧できるのかを事前に従業員へ説明することで、運用への納得感も高まりやすくなります。

スキルマップの活用・更新方法

スキルマップの導入によって、従業員のスキルの習熟度を一覧で整理したあとは、その情報をさらに活用していきましょう。

また、自社の最新の状況に合わせて、スキルマップを定期的に更新することも大切です。

ここからは、スキルマップの具体的な活用方法や更新方法を解説します。

研修・OJT・1on1に反映する

研修やOJT、1on1などは、スキルマップの活用先の一つです。従業員に不足しているスキルを把握する際の判断材料としてスキルマップを活用することで、研修内容や育成方針を検討しやすくなるでしょう。

研修・OJT・1on1にスキルマップの情報を活用する際は、不足しているスキルのほかに、以下の要素もスキルマップ上で管理できるようにしておくと良いでしょう。

【テンプレートで管理する要素】
●次の育成アクション(研修の内容やOJTでの対応など)
●育成の担当者
●次の効果測定の予定日
●効果測定の実施方法

これらの要素がスキルマップ上でまとめて確認できれば「誰が・何を・いつまでに対応する必要があるのか」があいまいになる可能性が減り、育成を滞りなく進められると考えられます。

人材育成マネジメントについてより詳細に知りたい方は、下記の記事も併せてご覧ください。
(関連記事:人材育成マネジメントとは?必要なスキルや効果的な手法、導入事例も解説)

人材配置・プロジェクト編成に活用する

スキルマップに集約されたデータは、人材配置やプロジェクト編成を検討する際にも活用できます。部署やプロジェクトに必要なスキルと、各従業員が保有しているスキルを照らし合わせれば、適材適所で人材を配置できるようになるでしょう。

ただし、スキルマップのデータだけで、配置や編成を決めてしまうことがないように注意してください。従業員本人の意向を無視すると、不満が募ってメンタルに不調を来したり、パフォーマンスが悪化したりする恐れがあるためです。

スキルマップのデータも踏まえつつ、可能な限り本人の希望にそった配置を実現できると理想的です。

人材配置のポイントについては、下記の記事でも解説しています。
(関連記事:社員の価値を最大限に活かす戦略的人材配置に向けて。人事担当者に必要な「大きなストーリー」の描き方)

定期更新とイベント発生時の更新を組み合わせる

スキルマップを活用するに当たっては、定期的に内容を更新することも大切です。例えば、半期・年次といった期の変わり目のタイミングで、自社の状況に合わせて項目の変更や修正を行うと良いでしょう。

また、年に1回など、従業員が上司と今後のキャリアについて話し合う機会を、スキルマップの更新タイミングとして活用する方法もあります。

本人が今後実現したいこと(Will)を確認するだけでなく、現在できることや強み(Can)、組織から期待される役割や求められること(Must)とスキルマップを連携させることで、キャリア形成や育成方針を具体化しやすくなります。

定期更新だけではなく、従業員のスキルセットが変わるタイミングで更新することも重要です。スキルセットが変わるタイミングとは、例えば部署異動や研修受講時、資格取得時、あるいは業務内容の変更時などです。業種・業界によってスキルセットが変化するきっかけはさまざまなので、自社に合った更新タイミングを検討しましょう。

運用開始時に従業員へ説明すべきこと

スキルマップの運用を開始する際は、従業員に以下の内容について説明しましょう。

●スキルマップ運用の目的
●スキルマップを用いた評価の方法
●人事評価との関連
●スキルマップの公開範囲・閲覧権限の設定
●育成支援に活用する旨

これらの内容が明確になれば、スキルマップ導入後に従業員から不満の声が出るリスクを減らせると考えられます。社内報やメールで説明を行う際は、以下のような文章で伝えられると良いでしょう。

【従業員に通知する際の例文】

このたび、従業員一人ひとりのスキルや習熟度を可視化し、今後の人材育成やキャリア形成に活用することを目的として、スキルマップの運用を開始します。

スキルマップでは、業務に必要なスキルを項目ごとに整理し、それぞれの習熟度を一定の基準に従って評価します。日ごろの業務への取り組みや実際の業務遂行状況などを踏まえ、上司が確認・判断します。

(※)なお、スキルマップの情報は、人事評価における参考情報の一つとして活用します。スキルマップの結果だけで人事評価を決定することはなく、業務上の成果や行動など、ほかの評価項目と組み合わせて総合的に判断します。

また、スキルマップには個人の評価情報が含まれるため、閲覧できる範囲を設定します。評価情報を含む個人データについても適切に管理します。

今回のスキルマップ導入を通じて、個々の強みや課題を各従業員が把握し、一人ひとりが成長できる環境をつくりあげていきたいと考えています。
運用について不明な点がありましたら、人事部までご連絡ください。

(※)人事評価に反映しない企業は、以下の文章に差し替えてください。なお、スキルマップは人材育成やキャリア形成に活用するものであり、人事評価には直接反映しません。

従業員が不安に思う部分について明確にしつつ、運用に対して前向きな気持ちになれるような説明ができると理想的です。

スキルマップが形骸化する原因と対策

スキルマップが形骸化する原因としては、主に以下の4点が挙げられます。

●導入目的があいまいなまま項目を増やしている
●評価基準が抽象的で評価者によって判断がぶれる
●評価後の活用先が決まっていない
●従業員に導入目的や公開範囲を説明していない

ここでは、各原因の詳細と対策を解説します。

導入目的があいまいなまま項目を増やしている

目的があいまいなままスキルマップを導入すると、評価する項目や評価の軸が定まらず、運用が形骸化してしまうと考えられます。

また、目的が不明瞭(ふめいりょう)な状態では、スキルマップに必要な項目も定まらないでしょう。その状態で評価項目を増やしたとしても、従業員のスキル習熟度を正確に評価することは困難です。

スキルマップを導入する際は、まずその目的を明確化することが重要となります。

また、運用の初期段階では目的を1つに絞り、それに合わせて評価項目も必要最低限にとどめることを意識しましょう。

評価基準が抽象的で評価者によって判断がぶれる

スキルマップの評価基準が抽象的だと、評価者によって捉え方に差が生じて、評価にばらつきが出てしまう可能性があります。そうなると、スキルマップによる評価が正確でなくなり、運用が形骸化すると考えられます。

この問題を解決する方法としては、実務に基づいた具体的な評価基準を設定することが効果的です。その上で、評価者ごとに基準がぶれるリスクを少しでも減らすためにも、評価の実例を示したサンプル評価を配布する、また評価者向けの説明会を実施するといった取り組みも行いたいところです。

評価後の活用先が決まっていない

スキルマップの運用が形骸化する原因としては、評価によって得られたデータの活用先が決まっていないことも挙げられます。活用先が明確に決まっていないと、従業員がスキルマップの必要性を理解せず、自身の現状について正確な情報を入力しなくなる可能性があるためです。

そのような事態を避けるためにも、スキルマップの活用先を明確化し、運用することが将来的なメリットにつながることを周知しましょう。

研修やOJT、1on1、配置転換、採用活動などに活用するということを従業員が把握すれば、スキルマップに取り組む意義を実感しやすくなり、継続的な入力や更新につながることが期待できます。

従業員に導入目的や公開範囲を説明していない

スキルマップを導入する目的や、データの公開範囲を事前に従業員に説明していないと、従業員が不信感を抱いて、運用に非協力的になってしまうかもしれません。

特に「従業員の監視や序列化が目的なんだ」と受け取られてしまうと、大きな反発を招いてしまう恐れがあります。従業員がスキルマップに対して不信感を抱かないように、導入目的や公開範囲を事前に明示しておきましょう。

特に従業員に対しては、スキルマップの作成自体が目的ではなく、適切に更新しながら、自身のキャリア実現や必要な学びを考える機会として活用するものであること、そのメリットを丁寧に伝えることが大切です。

また、社内の各ポジションや業務に必要なスキルを公開し、従業員が自身の保有スキルと期待される水準を把握できるようにすることも有効です。

目指すポジションとのギャップを可視化した上で、その差を埋めるための研修や学習支援の仕組みを整えることで、スキルマップをキャリア形成と能力開発により効果的に活用できます。

Excelテンプレートとシステム管理の使い分け

スキルマップを導入する方法としては、Excelのテンプレートを用いるパターンと、専用のシステムを導入し管理するパターンの2種類があります。ここでは、各パターンが適しているケースを解説します。

Excelテンプレートが向いているケース

Excelのテンプレートが向いているケースとしては、以下が挙げられます。

●スキルマップを初めて導入する
●1部署だけで導入する
●評価対象者が少ない
●評価項目や評価基準が定まっていない
●システムを導入する要件を整理したい

スキルマップの導入が初めての場合や小規模に運用を行う場合には、Excelテンプレートでの管理がお勧めです。導入に時間がかからない上に項目の修正も容易であり、運用負担が比較的低いためです。

同様の理由から、スキルマップを運用する中で評価項目や評価基準を整理していきたい、というケースもExcelテンプレートが適しています。

また、システムの導入要件を整理するために、Excelテンプレートで事前にテスト運用を行う、といった活用も可能です。

システム管理を検討したほうが良いケース

以下のケースに該当する場合は、システムでスキルマップを管理するほうが良いでしょう。

●複数の部署・拠点で運用を行う
●評価対象となる従業員が多い
●Excelでのバージョン管理が煩雑化した
●複雑な権限管理を行いたい
●研修データやほかの評価データとスムーズに連携したい
●検索や集計をより効率的に行いたい

複数の部署・拠点が対象となる、また評価対象者が多いなど、大規模な運用となるケースではExcelによる管理が難しくなると考えられます。

また、Excelでもバージョン管理は可能ですが、バージョンが増えてくると管理が煩雑になる可能性があります。こういったケースでは、システムの導入を検討しましょう。

このほか、複雑な権限管理や他データとの連携、効率的な検索・集計などが必要になるケースでも、システムの導入を検討することをお勧めします。

スキルマップの無料テンプレートと活用方法

スキルマップのフォーマットや項目を、一から全て作成することは簡単ではありません。

そのため、すでに用意されているテンプレートを活用して、効率的に作成することをお勧めします。その際は、必要に応じて以下に挙げる3種類のテンプレートを活用しましょう。

①厚生労働省の職業能力評価基準・評価シートを参考にする
②IPAなど職種別のスキル標準を参考にする
③「doda人事ジャーナル」の無料Excelテンプレートを活用する

厚生労働省の職業能力評価基準・評価シートを参考にする

厚生労働省が提供している職業能力評価基準、および職業能力評価シートは、公的な基準として活用できるテンプレートです。

業務に必要な知識や技術・技能などが業種・職種・職務別に整理されているため、スキルマップの項目を検討する際の参考情報として最適でしょう。職業能力評価シートの項目例をそのまま使うのではなく、自社の業務内容や状況に合わせてカスタマイズすることをお勧めします。

同省から、評価基準・評価シートをカスタマイズする際のポイントがまとめられた資料も配布されているので、そちらを参考に項目や評価基準を調整しましょう。

(参照:厚生労働省『職業能力評価基準』)(参照:厚生労働省『職業能力評価シートについて』)

IPAなど職種別のスキル標準を参考にする

特定の職種や業種・業界に関しては、その分野での公的・業界標準を参考にしたいところです。

例えばIT分野であれば、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が用意している「ITスキル標準V3」や「ITSS+(プラス)」を参考にすると良いでしょう。前者は、IT分野に関するスキルが体系的に整理されたものであり、ITエンジニアなどのスキルマップを作成する際に活用できます。

対して後者は、クラウドコンピューティングやデータアナリティクスなど、近年特に重要性が増している分野に特化したスキル指標です。自社の業務内容に応じて、最適なほうを活用しましょう。

また、これらの指標についても、必要に応じて自社の業務に合わせて調整することをお勧めします。

(参照:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『ITSS+、ITSS、UISS 関連情報』)

「doda人事ジャーナル」の無料Excelテンプレートを活用する

当サイト「doda人事ジャーナル」でも、無料で使えるExcelテンプレートを提供しています。スキル項目の行と従業員名の列、そして習熟度や目標レベルなどの指標がそろっているため、ダウンロード後すぐに活用できます。

また、必要に応じて新しい列も追加可能であり、カスタマイズ性も十分です。空欄を埋めるだけではなく、貴社の状況に合わせて最適なフォーマットにカスタマイズしましょう。

自社に合う項目を整える際は、汎用・DX向けのスキルマップ資料をご活用ください。

スキルマップに関するよくある質問

最後に、スキルマップに関するよくある質問に回答します。

●Q1:スキルマップの評価は何段階が良いですか?
●Q2:スキルマップは誰が作成し、誰が評価しますか?
●Q3:スキルマップはどのタイミングで更新しますか?
●Q4:Excelで作ったスキルマップは何人くらいまで管理できますか?
●Q5:スキルマップを人事評価に使っても良いですか?
●Q6:スキルマップを形骸化させないポイントは何ですか?

Q1:スキルマップの評価は何段階が良いですか?

判断に迷う場合は、4段階評価がお勧めです。3段階評価よりもスキルレベルを具体的に区分できる一方、5段階評価のような中央値がないため、評価が中央に偏ることを防ぎやすくなります。

評価のあいまいさが減ることで、従業員のスキル課題が明確になり、人材育成や配置などへの活用範囲も広がります。

また、5段階評価と比べて評価項目や判断の負担を抑えやすく、継続的に運用しやすい点もメリットです。

Q2:スキルマップは誰が作成し、誰が評価しますか?

スキルマップの作成・運用時には、以下のように役割を分担することが一般的です。

人事・採用担当者 ●スキルマップの共通ルールの作成
●運用実態の確認、および共通ルールの見直し・改修
現場管理職 評価項目の設定
評価対象者 自己評価の実施
評価対象者の上司 評価の実施

なお、上司だけではなく、他部署の管理職や役員にも評価を行ってもらう場合もあります。評価対象者のスキルレベルを多面的に評価したいケースでは、この方法がお勧めです。

Q3:スキルマップはどのタイミングで更新しますか?

基本的には、半期や年次の周期で定期的に更新することをお勧めします。期の変わり目には、自社の状況や業務内容に変更が生じることが多く、従業員に求めるスキルも変わる可能性があるためです。

また、上記のタイミングとは別に、評価対象者のスキルセットに変更があったタイミングで更新することも重要です。具体的には、評価対象者が異動するタイミングや、研修受講時、資格取得時、業務内容の変更時などが該当します。

Q4:Excelで作ったスキルマップは何人くらいまで管理できますか?

企業の規模や業務内容などによって異なりますが、Excelで管理する場合は、部署ごとに1人の評価者が5~10人程度を評価し、対象部署数は10~15部署程度を一つの目安とすると良いでしょう。

1人の評価者が担当する人数がこれより多い場合は、評価や更新にかかる負荷が大きくなることが想定されます。

ただし、スキルマップを管理する際は、評価対象者の人数だけではなく、以下の要素も考慮に含める必要があります。

●評価の項目数
●更新頻度
●権限管理の方針
●スキルマップの集計結果を必要とする担当者・部署の数

これらの要素を総合的に考慮した上で、スキルマップを管理する方法(Excelかシステムか)を検討することが大切です。

Q5:スキルマップを人事評価に使っても良いですか?

人事評価を行う際の参考情報の一つとして、スキルマップを活用することは可能です。

ただし、スキルマップの情報だけを基に人事評価を行うことは避けましょう。スキルマップだけでは、仕事に対する姿勢や態度、実際の成果などは評価できないためです。

スキルマップを人事評価に活用する際は、業務上の成果や行動評価、職務要件といったほかの基準と必ず組み合わせましょう。スキルマップはあくまでも観点の一つである、という意識を持った上で、総合的な観点で評価を行うことが大切です。

Q6:スキルマップを形骸化させないポイントは何ですか?

スキルマップの形骸化を防ぐポイントとしては、以下が挙げられます。

●導入目的を絞り、明確化する
●評価項目を増やし過ぎない
●スキルマップで評価を行ったあとのアクション(研修やOJT)を決める
●導入目的や公開範囲を社内に通達する
●更新日を必ず記載し、最後の更新日がわかるようにする

これらの点を意識すれば、各従業員が明確な目的意識を持ってスキルマップを活用できるようになると考えられます。

まとめ

スキルマップは、従業員の保有スキルや習熟度を共通の基準で整理するためのツールです。ほかの評価情報や本人の意向と組み合わせることで、人材育成や人員配置を検討する際の判断材料として活用できます。

スキルマップを導入する際は、テンプレートを活用することをお勧めします。全ての項目を一から作成する場合と比較して、導入までにかかる手間を削減できる可能性があるためです。

また、テンプレートはそのまま流用するのではなく、自社の実情に合わせて適宜カスタマイズしましょう。

自社の育成や配置に役立つスキルマップづくりに、下記のExcelテンプレートをご活用ください。

(制作協力/株式会社eclore、編集/doda人事ジャーナル編集部)

人材スキルマップ管理表テンプレート【Excel版】

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