失敗例から学ぶ!「リファラル採用」の意外な“落とし穴” ~解決ポイントも添えて~

d’s JOURNAL編集部

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  • 「文化のミスマッチ」や「待遇の不公平感」などが原因となって起こる、リファラル採用の落とし穴に注意
  • リファラル採用でも通常の採用基準に統一するなど、公平な評価と適正な報酬制度を整えることが必要
  • 企業文化や評価基準を社員と共有し、紹介者や転職希望者との関係悪化を防ぐ仕組みの構築を

自社の社員から知人・友人などを紹介してもらう「リファラル採用」。自社の文化や雰囲気を熟知した社員による紹介であることから、「できる限り採用コストを抑えたい」「即戦力となる人材がほしい」といったベンチャー企業・中小企業などに向いている採用手法といえます。

一方で、実は注意しなければならない落とし穴が存在することに注意が必要です。この記事では、5つの失敗例をご紹介します。リファラル採用を取り入れる前に読んで、落とし穴を回避しましょう。

リファラル採用とは

リファラル採用とは、自社の社員から友人や知人などを紹介してもらう採用手法のこと。リファラル(referral)には、「推薦」や「紹介」という意味があります。

アメリカなど海外では広く取り入れられていますが、近年の日本は売り手市場となっていることもあり、需要の高まりが顕著に。日本でもベンチャー企業を中心としてリファラル採用を行う企業が増えてきています。

リファラル採用には、主に3つのメリットがあります。

●人材紹介サービスの利用費や求人広告の出稿費が省けるため、採用コストの削減につながる
●企業の風土・雰囲気を知っている社員からの紹介のため、人材がマッチングしやすい
転職潜在層にアプローチし、採用の幅を広げられる

こうしたメリットを見ると、リファラル採用がとても魅力的に見えますよね。しかしメリットの陰には、意外な落とし穴も…。うっかり落ちてしまう前に、失敗例から回避ポイントを学びましょう。

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ケース1:文化のミスマッチ

Aさん
Aさん

スタートアップの当社では、ある社員が前職の同僚を紹介してくれました。採用者は技術的にとても優れていましたが、スタートアップのスピード感や幅広い業務を行う文化になじめず、「こんな仕事をするとは聞いていない」と他の社員との間に摩擦が生じました。結果として、チームの士気が低下し、プロジェクトの進行にも悪影響を及ぼしました。

落とし穴:既存社員の紹介だとしても企業文化が合うとは限らなかった

【こうすればよかった!落とし穴の回避ポイント】
明確な企業文化の共有
企業のミッション、ビジョン、価値観を明確にし、社員全員に共有して適切な転職希望者を紹介してもらえるようにする。紹介者以外の従業員がカジュアル面談などを行うのも一つの方法

カルチャーフィット評価基準の設定
企業が持つ独自の文化や風土に対して、人材がうまくフィットするかを評価する基準を設ける

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ケース2:待遇面で紹介者との関係が悪化

Bさん
Bさん

スタッフに紹介してもらった方は当社の業務で役立つ資格を持っていたため、即戦力として活躍してくれることを期待していました。その資格に応じて比較的高い待遇としたところ、採用者から紹介者へとその話が伝わり、紹介者と企業の関係が悪化。紹介者からは面談で不満を訴えられ、自社へのエンゲージメントが低下してしまいました。

落とし穴:全社員に不公平感のない給与テーブルの設定が必要だった

【こうすればよかった!落とし穴の回避ポイント】
待遇についての社内共有
事前に給与や待遇に関する明確なルールを設けて既存社員にも周知し、不公平感をもたれないようにする

紹介者への事前説明・フォロー体制の構築
就業年数にかかわらず、経験値やスキルによって待遇が変わることを事前に説明する。紹介者へのフォロー体制も整えておく

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ケース3:採用基準のブレからトラブルに発展

Cさん
Cさん

「せっかく見つかった人材を逃したくない」との気持ちがあり、リファラル採用を通常の選考フローや基準とは異なる方法で行いました。結果的に採用にはなったのですが、既存社員が「不公平だ」として、採用者とのトラブルに発展。その結果、採用者は働きづらくなり早期離職してしまいました。

落とし穴:リファラル採用であっても通常の選考方法と統一すべきだった

【こうすればよかった!落とし穴の回避ポイント】
採用基準の統一化
一般選考と同じ選考フローでリファラル採用も行う。異なる場合は「一般選考と違う理由の周知」などを徹底する。企業側は策定した採用基準を守る

紹介者への事前説明・フォロー体制の構築
リファラル採用の仕組みについて理解を深められるように社内で説明し共有する。既存社員とのトラブルに備えフォロー体制を構築しておく

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ケース4:不採用により紹介者と転職希望者の関係に亀裂

Dさん
Dさん

選考の結果、転職希望者が採用基準を満たさないと判断したため、不採用としました。紹介者は「彼ならきっと採用される」と思っていたようで、その後転職希望者との関係が気まずくなってしまったようです。それが原因で自社への信用も落ち、リファラル採用に協力してもらいにくい雰囲気になりました。

落とし穴:紹介者への採用基準の説明が不十分だった

【こうすればよかった!落とし穴の回避ポイント】
縁故採用との区別化
入社を前提とした「縁故採用」と誤解されないよう、リファラル採用では推薦された転職希望者に対しても一般応募者と同じ条件・基準で評価することを周知する

リファラル採用の意義と採用条件を事前周知
リファラル採用の意義を定期的に社内で説明し、ポジティブなイメージを持ってもらう。求める人物像も明確に示し、自社に適した人材を紹介してもらうよう求める

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ケース5:紹介者報酬が違法になる可能性

Eさん
Eさん

リファラル採用を取り入れたばかりのころ、法律のことをよく知らずに、採用が成功したら紹介者へ高額なインセンティブを渡していました。しかし後に、厚生労働省の許可なく紹介者にインセンティブを渡すのは法律違反となる恐れがあることを知り、金額や内容を見直すとともに、しかるべき対応を行いました。

落とし穴:リファラル採用の導入前に、法律の確認が必要だった

【こうすればよかった!落とし穴の回避ポイント】
リファラル採用を業務の一部として就業規則に明記
厚生労働省の許可なく社員が有料の職業紹介を行うことは、職業安定法第30条・40条に違反していると見なされる。また、高額な報酬には罰則が科せられる恐れもある。法に触れないためには、業務の一部とすることを就業規則に明記し、報酬を設定する

自社にフィットしたルールの策定
報酬を設定する際は、自社に合ったルールを設ける。現金以外(ギフト券やプリペイドカード)で支給するほか、人事考課の評価項目に組み込むのも一つの方法

・参考:e-Gov法令検索『職業安定法

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編集後記

既存社員から知人を紹介してもらうリファラル採用は、採用コストを抑えたりアプローチの幅を増やしたりできる特長があります。一方で、取り入れてみたはいいけれど、「こんな落とし穴があった」という失敗談も少なくありません。

企業の風土や文化にマッチした人材を採用するには、紹介者と転職希望者・採用者が不公平感を抱きにくい仕組みをつくることや、既存社員へリファラル採用の目的と求める人物像、評価基準などを説明して理解を得ることが大切です。今回ご紹介した失敗談と落とし穴から学んだことを自社のリファラル採用に活かして、成功につなげましょう。

(企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、制作協力/株式会社mojiwows

リファラル採用、みんな協力してる?社員の本音とは

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