BCP(事業継続計画)とは?意味や策定方法を簡単にわかりやすく解説

d’s JOURNAL編集部
BCP(Business Continuity Plan)とは、自然災害や感染症などの緊急事態発生時に企業への被害を最小限に抑え、事業を継続させるための計画のことです。
日本は地震や台風などの自然災害が多い国であるため、企業はさまざまな緊急事態を想定し、あらかじめ対応策を整えておく必要があります。
そこで本記事では、BCPの策定手順や実効性を高めるポイントを解説します。
BCP(事業継続計画)とは
BCPとは、企業が自然災害や感染症、テロ、サイバー攻撃などの被害を受けた際に、事業への影響を最小限に抑え、速やかに復旧を図るための計画のことです。
日本では、「事業継続計画」と呼ばれることもあります。
BCPの意味と目的
BCPは、「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉です。単語ごとの意味は、以下をご覧ください。
【「Business Continuity Plan」の単語ごとの意味】
●Business:事業、仕事、業務
●Continuity:継続、連続性
●Plan:計画、企画
各単語が示すとおり、BCPは、緊急事態が発生しても企業活動を止めないための経営上のリスク対策です。その主な目的としては、次のような項目が挙げられます。
【BCPの目的】
●従業員の安全確保
●中核事業の継続・早期復旧
●顧客や取引先への影響の最小化
●企業の信用・事業基盤の維持
不測の事態によって企業活動が停止すると、顧客や取引先に悪影響を及ぼすだけでなく、社会的信用や市場競争力の低下にもつながる恐れがあります。
こうした事態に備えるために、BCPでは優先的に維持する必要のある中核事業を特定し、復旧までの目標時間や対応手順、責任体制などを定めます。
BCPと防災計画の違い
BCPと混同されやすいものとして、「防災計画」があります。防災計画とは、非常時の対応を事前にまとめ、災害による被害を最小限にとどめるための計画のことです。
BCPとの違いは、計画の主たる目的です。防災計画では、災害による被害を軽減し「従業員の命や企業の経営資産を守る」「早期復旧を目指す」ことに主軸を置いています。それに対し、BCPの目的は「災害後」の速やかな復旧により「事業を継続する」ことです。
こうした違いはあるものの、どちらの計画も、企業のリスク管理には欠かせないものであるといえます。
企業にBCPが求められている背景
BCPの概要を踏まえ、本項では企業にBCPが必要とされる背景を解説します。
【企業にBCPが求められている背景】
●自然災害の頻発による事業停止リスク
●サプライチェーンの維持
●ステークホルダーとの信頼関係の維持
●中小企業庁の動き
●日本企業のBCP策定状況と課題
自然災害の頻発による事業停止リスク
企業にBCPが必要とされる背景としては、まず自然災害による事業停止のリスクが挙げられます。
日本は地震や豪雨、台風など、自然災害が多い「災害大国」といわれています。特に、2011年3月の東日本大震災で甚大な被害を受けたことを契機に、企業は事業継続や早期復旧の重要性を改めて認識するようになりました。
以下の表では、地震をはじめ、企業が直面する可能性のある自然災害とその影響を示しています。
【自然災害と企業に及ぼす影響】
| 自然災害 | 企業活動への影響 |
|---|---|
| 地震 | ●建物・設備・車両の損壊 ●物流停止 ●人的被害 ●データ消失 |
| 津波 | ●工場・倉庫の浸水 ●物流停止 ●人的被害 ●データ消失 |
| 豪雨・洪水 | ●建物・設備・車両の損壊 ●物流停止 ●サプライチェーンへの影響 |
| 台風 | ●建物・設備・車両の損壊 ●停電 ●物流停止 ●出勤・業務停止 |
| 大雪 | ●物流の遅延・停止 ●出勤・業務停止 |
自然災害は、いつ発生するか予測が困難です。このような背景から、企業には自然災害が企業活動に与える影響を把握し、BCPの策定に取り組むことが求められています。
サプライチェーンの維持
サプライチェーン(モノの流れ)を維持することも、企業にBCPが必要な理由の一つに挙げられます。
自然災害や事故でサプライチェーンが途絶すると、必要な部品や原材料が届かなくなり、顧客や取引先への供給に支障を来すリスクが高まります。こうした事態に備えるため、BCPではサプライチェーン全体を見渡し、代替の調達ルートや仕入先を確保することが大切です。
ステークホルダーとの信頼関係の維持
企業にBCPが求められる背景には、ステークホルダーとの信頼関係を守ることの重要性もあります。
企業は自然災害や突発的なトラブルなどの緊急事態に直面した際に、製品やサービスの提供が滞ることで、顧客や取引先からの信頼を損なうリスクを抱えています。しかしBCPに基づき具体的な対策を講じておけば、トラブル発生時も業務の中断によるリスクを最小限に抑え、製品やサービスの供給を維持できる可能性が高まるのです。
その結果、顧客や取引先から「信頼できる企業」として評価され、企業イメージの向上にもつながる場合があります。
中小企業庁の動き
中小企業は、大企業と比べて被災後の倒産・廃業のリスクが高いことが実情です。そのため、中小企業庁では事業の継続や取引先・市場から信頼される企業体制の構築に向け、BCPの策定を推進しています。
現状では中小企業の策定率が低いとされていますが、こうした動きによりBCPへの関心は徐々に高まっていくと考えられます。
日本企業のBCP策定状況と課題

(引用:帝国データバンク『事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2025年)』)
帝国データバンクが2025年6月に発表した『事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2025年)』によると、2025年5月時点でBCPを「策定している」企業の割合は20.4%でした。「現在、策定中(7.4%)」「策定を検討している(22.0%)」を含めても49.8%と、5割を下回っています。
また、同調査で企業規模別のBCP策定率の推移を見てみると、年々微増はしているものの、2025年時点での策定率は大企業で38.7%、中小企業で17.1%となっています。
次に、BCP策定率の推移を規模別に詳しく見てみましょう。

(引用:帝国データバンク『事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2025年)』)
2024年と2025年を比較すると、「大企業」は37.1%から38.7%へと1.6ポイント増であることに対し、「中小企業」は16.5%から17.1%へと0.6ポイント増という結果でした。また、「大企業」が2019年から2025年までに9.5ポイント上昇している一方で、「中小企業」は5.6ポイントの上昇にとどまっています。
これらの調査結果から、大企業に比べて中小企業のほうがBCP策定率が低く、策定率の上昇幅も緩やかであることが見て取れます。
しかし、災害時の従業員の安全確保や事業の継続は、企業規模にかかわらず行わなければならないことです。そのため、まだ策定していない企業には早急な対応が求められるでしょう。
近年では、医療機関や介護事業所を対象に、BCPの策定が法令や行政通知によって求められるケースが増えています。特に介護分野では、感染症のまん延や自然災害の発生に備えたBCPの策定が義務化されており、厚生労働省はガイドラインや様式例(ひな型)を公表しています。
このように、医療・介護・福祉分野では、事業継続が患者・利用者の生命や生活に直結することから、BCPの重要性が一般企業以上に高まっており、計画策定の取り組みも年々強化されています。
(参照:厚生労働省『介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修』)
BCPを策定するメリット
自社にBCPを取り入れるメリットは、以下の点です。
【BCPを策定するメリット】
●従業員の安全確保につながる
●被害を最小限にして早期復旧できる
●企業のイメージ向上に寄与する可能性がある
順番に詳しくご紹介します。
従業員の安全確保につながる
緊急事態を想定した対策を施しておくことは、従業員の安全確保につながります。反対にBCPを策定しておらず、災害が実際に起きてから対処方法を考えていては、判断に多くの時間を要し、その間に被害が拡大する恐れがあります。
また、BCPに基づいた「瞬時に決断できる指針」は、緊急時に対する意識の向上や対応の迅速化、早期復旧にも貢献します。
なお、BCPを策定している企業は「従業員の安全確保に力を入れている企業」といえるため、従業員が安心感を抱き、定着率の向上につながる可能性もあります。
被害を最小限にして早期復旧できる
あらかじめ緊急時の優先事項や行動の手順を定めることで、現場の混乱を防ぎ、被害を最小限にとどめられる点もBCPのメリットです。被害を抑えて緊急時に動ける体制を整備することは、事業の速やかな復旧にもつながります。
事業再開へのスピードが早いほど顧客・取引先の他社への流出を防げるため、自社のシェアを維持するためにも、BCPの策定は非常に重要です。
企業のイメージ向上に寄与する可能性がある
BCPの策定は、企業イメージの向上に寄与する可能性もあります。
緊急時の体制や対応を計画しておくことは、「リスクマネジメントの実践」「商品サービスの継続提供」「機会損失の抑制」につながります。そのため、顧客や株主、転職希望者などからの信頼の獲得が期待できるでしょう。
また、不測の事態に備えておくこと、災害を受けても安定して経営できる体制を整えておくことは、ビジネスパートナーとしての価値を高めることでもあります。
BCPを策定する方法と手順
ここからは、BCPの具体的な策定手順を見ていきましょう。
【BCPを策定する方法と手順】
●ステップ1.目的や基本方針を決定する
●ステップ2.中核事業とリスクを洗い出す
●ステップ3.想定されるリスクへの対応の優先度を決める
●ステップ4.リスクに応じた具体的な対応策を決める
●ステップ5.BCPの運用体制を整える
●ステップ6.BCPのマニュアルを作成する
●ステップ7.従業員の教育や訓練を実施する
ステップ1.目的や基本方針を決定する
まずはハザードマップなどを参考にしながら災害時のリスクを洗い出し、BCP策定の目的や基本方針を決定します。
目的を明確にすることで従業員が共通認識を持ち、緊急時にスムーズに判断・行動できるようになります。また、複数の営業所や支店がある企業の場合は、以下のように地域ごとの災害リスクを把握し、対策を検討することも重要です。
【地域ごとの災害リスクの対策例】
●海岸部にある営業所:津波発生時の対応
●豪雪地域にある営業所:大雪発生時の対応
●活火山のある地域の営業所:噴火発生時の対応 など
目的や基本方針が決定したら、中核事業とリスクを洗い出す作業に移ります。
ステップ2.中核事業とリスクを洗い出す
STEP2では、自社の中核事業および想定されるリスクを明確化します。まずは以下で、中核事業の具体例を確認しましょう。
【中核事業の具体例】
●売上規模が大きい事業
●納期遅延による影響が甚大な事業
●市場評価や顧客からの信頼維持に直結する事業
中核事業を特定する際は、企業活動全体に与える影響度を基準に判断することが大切です。
最優先の業務を明確化したあとは、以下のように「現在の事業継続能力を把握する」という観点で、想定されるリスクを整理します。
【リスクを洗い出す際の確認ポイント】
●自社の業務が停止した場合の影響はどの程度か
●現在の人員・設備・システムで事業継続が可能かどうか
●どの業務がどの程度止まる可能性があるか
自社の中核事業とリスクを整理し、事業へのインパクトを可視化することが本ステップの重要な目的です。
(参照:厚生労働省『生産性&効率アップ必勝マニュアル~マネジメント手法~』)
ステップ3.想定されるリスクへの対応の優先度を決める
リスクを洗い出したあとは、それぞれの影響度に基づき、対応の優先順位を設定します。災害時は限られた経営資源を効率的に活用しなければならないため、事前に重要度の高いリスクに焦点を当ててBCPを策定する必要があります。
優先順位を設定する際は、「発生頻度」と「影響の深刻度」の2点を考慮してください。具体的には、「どのくらいの頻度で発生する可能性があるか」「発生した場合に想定される損害はどの程度か」などを総合的に評価し、優先度を決定します。
ステップ4.リスクに応じた具体的な対応策を決める
BCPでは、緊急事態発生時の対応策を事前に決めておくことが不可欠です。各リスクに応じた具体的な対応策を定めておかなければ、緊急時に即応できず、判断の遅れや混乱を招く恐れがあります。
対応策を決める際は、次のポイントを考慮することが大切です。
【対応策を設定する際の確認ポイント】
●代替拠点や在宅勤務への切り替え
●代替調達先の確保
●業務の優先順位に応じた対応
●緊急時の連絡・指示体制
これらのポイントを組み合わせてリスクごとの対応策を明確化すれば、緊急時に迅速かつ的確に行動できるようになります。
(参考:『生産性&効率アップ必勝マニュアル~マネジメント手法~』)
ステップ5.BCPの運用体制を整える
具体的な対応策を決めたあとは、BCPの運用体制を整えます。
BCPの運用は、トップダウン方式で行うことが基本です。そのため、まずは経営層を含めてBCP策定・運用の統括責任者を任命しましょう。また緊急時に指揮が滞らないよう、代理責任者も決めておきます。
次に、現場に即したBCPを策定するために各部署から参画者を選出し、部門ごとの役割分担を明確化してください。企業の規模や業務の特性に応じた人選を行えば、緊急時に迅速かつ的確な対応につながります。
また、取引先や自治体などの外部関係者と連携できる体制を整えておくことも大切です。これにより緊急事態発生時の混乱を最小限に抑えつつ、事業継続の可能性を高めることができます。
ステップ6.BCPのマニュアルを作成する
BCPの策定では、マニュアル作成も欠かせません。マニュアルには、中核事業を基に、4大経営資源「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の各視点での対応策を記載しましょう。作成の際は、過去の災害例や同業・同地域の他社の事例を参考にすると、より実務に即した内容に仕上げられます。
加えて、作成したマニュアルを適切に周知することも重要な手順の一つです。オフィスの掲示板や社内イントラネットへの掲載、簡易マニュアルの配布などを通じて、全従業員が内容を把握できるようにしてください。
なお、マニュアルの作成は自社内で行う場合と、行政書士や中小企業診断士などの専門家に依頼する場合があります。自社で作成する際は、内閣府の『企業防災のページ』や中小企業庁の『BCP策定運用指針』などを参考にすることをお勧めします。
(参照:内閣府『企業防災のページ』)
(参照:中小企業庁『中小企業BCP策定運用指針~緊急事態を生き抜くために~』)
ステップ7.従業員の教育や訓練を実施する
最後のステップでは、従業員一人ひとりがBCPの内容を理解し、緊急時に適切に行動できるよう、教育および訓練を実施します。
BCPに関する教育で、重点的に伝える内容は以下のとおりです。
【BCPの教育で重点的に伝える内容】
●BCPの目的と基本方針
●想定されるリスクと対応策
●緊急時の役割分担と対応手順
●避難経路や安全確保の方法
こうした教育と併せて緊急時を想定した訓練を行えば、従業員は自らの役割を理解し、迷わず行動できるようになります。
BCPを機能させるための運用ポイント
本項では、BCPを現場で機能させるための運用上のポイントを解説します。
【BCPを機能させるための運用ポイント】
●定期的な教育研修や訓練を実施する
●BCP策定の定期的な見直しや改善を行う
●クラウドサービスの活用やバックアップの作成などのIT対策を取り入れる
定期的な教育研修や訓練を実施する
BCPを有効に機能させるためには、定期的な教育研修と訓練の実施が欠かせません。
教育研修では、全従業員を対象にBCPの重要性や各自の役割を明確に伝え、組織全体の意識の定着を図ることが重要です。訓練は、全社的な実地訓練や役員向けの意思決定訓練など、対象や目的に応じて実施すると効果的です。
訓練によって計画上の欠陥や課題が見つかった場合は、BCPの改善にもつながります。
BCP策定の定期的な見直しや改善を行う
内容を定期的に見直し、改善を図ることも、BCPの実効性を高めるためのポイントです。事業環境は、組織体制の変更や技術の進展、新たなリスクの発生などによって変化し続けており、それに伴い、BCPも常に最新の状態を維持しなければならないためです。
具体的な取り組みとしては、中核事業および想定されるリスクの再評価や、組織変更・人事異動への対応、訓練で明らかになった課題の是正措置などが挙げられます。
見直しや改善は、月次・四半期・年次などの周期をあらかじめ定め、計画的に実施すると良いでしょう。これにより、企業は現状のリスクに即したBCPを維持しながら、迅速かつ的確に問題を解決できるようになります。また、改定した内容は全従業員に確実に周知することも不可欠です。
クラウドサービスの活用やバックアップの作成などのIT対策を取り入れる
BCPをきちんと機能させるには、クラウドサービスの活用やバックアップの作成など、各種IT対策も取り入れたいところです。
クラウドサービスを活用すれば、リモート環境での業務やデータの安全な保管ができるようになります。これにより、自然災害やサイバー攻撃などの予期せぬ事象が発生した場合でも、業務の中断によるリスクを最小限に抑えられます。またバックアップデータを作成しておくことで、万が一業務に必要な情報が破損・消失してしまっても迅速な復旧が可能です。
このようにIT対策を実施することで、BCPは実効性の高いものとなり、企業は安定的に事業を継続できます。
BCP策定時の注意点
BCPを策定する際は、事前に押さえておきたい注意点もあります。
【BCP策定時の注意点】
●策定・設備に費用がかかる
●実施可能な対策から進める
●想定どおりに機能しないリスクがある
●従業員に対応方法が浸透しない可能性がある
●外部環境の変化に対応するための柔軟性が求められる
本項でお伝えする内容をきちんと把握して、機能的なBCPを策定しましょう。
策定・設備に費用がかかる
BCPを策定するには、一定の費用がかかることを念頭に置いておきましょう。
例えば、自社のみでのBCPの策定が難しいときは、行政書士や中小企業診断士などの専門家に支援を依頼することになります。その場合、内容や支援範囲に応じて数十万~100万円程度の費用が発生することがあります(支援範囲等により費用は異なります)。
また、設備面での費用もあらかじめ見込んでおかなければなりません。具体例としては、建物の耐震補強や設備の転倒防止対策、専用システムの導入、バックアップ体制の構築などにかかる費用が挙げられます。
BCPを策定する際は、こうした費用負担が伴う点を踏まえ、費用対効果を事前に見極めることが重要です。なお、自治体によってはBCPの策定を支援する助成金・補助金制度が設けられています。費用面に不安がある場合は、こうした公的支援制度の活用をお勧めします。
実施可能な対策から進める
前述のとおり、BCPの策定には一定の費用がかかります。全ての対策を一度に行うと、経営資源を大きく圧迫する可能性があるため、着手する順序や優先度は慎重に決める必要があります。
まずは、対応マニュアルの整備や従業員向け研修の実施など、比較的少額で行える施策から着手すると良いでしょう。限られた予算と人員の中で実効性を高めるには、実現可能性と効果を総合的に判断し、計画的に推進していくことが大切です。
想定どおりに機能しないリスクがある
BCPは、全ての不測の事態に完全に対応できるとは限りません。災害の規模や被害状況、自社を取り巻く事業環境によっては、計画が想定どおりに機能しない可能性もあります。
BCPが想定どおりに機能しない要因としては、主に以下の点が挙げられます。
【BCPが機能しない要因】
●策定時には想定していなかった事象が発生した
●計画内容が自社の実態や経営資源に適合していなかった
●実際には実行困難な対応手順を定めていた
●行動内容が抽象的で、具体性を欠いていた
●想定されるリスクを過小評価していた
BCPを有効に機能させるために、リスクを過不足なく見積もるとともに、「誰が・いつ・何を行うのか」を明確にした対応手順を整備しておきましょう。
従業員に対応方法が浸透しない可能性がある
BCPで定めた対応方法が従業員に浸透しない可能性があることも、覚えておきたい注意点の一つに挙げられます。BCPが従業員に浸透しない主な要因は、以下のとおりです。
【BCPが浸透しない要因】
●継続的な周知活動を行っていない
●定期的な見直しが行われず、形骸化している
●経営層が主体的に関与せず、管理職層に危機意識が十分に共有されていない
●単なる資料にとどまり、自社の事業特性や業務内容に踏み込めていない
年に一度を目安に経営層によるレビューを実施し、妥当性と実効性の検証・改善を繰り返すことで、BCPは組織文化として定着につながるでしょう。
外部環境の変化に対応するための柔軟性が求められる
BCPを策定する際は、外部環境の変化に対応できる柔軟性も持ち合わせていなければなりません。
例えばデジタル化の進展は、サイバー攻撃や情報漏えい、システム障害などの新たなリスクを招くことがあります。これらの脅威に適切に対応するには、従来の想定にとらわれない柔軟なリスク評価が求められるのです。
状況に応じて柔軟に対応できる力こそが、BCPの効果を高める基盤となります。
企業や自治体でのBCPの具体例
BCPの内容は、業界ごとの中核事業や想定リスクに応じて異なります。その点を踏まえて本項では、企業および自治体でのBCPの具体例をご紹介します。
【企業や自治体でのBCPの具体例】
●製造業でのBCPの例
●ITサービス業でのBCPの例
●自治体でのBCPの例
製造業でのBCPの例
製造業では、製造ラインの停止が、事業に与える影響が最も大きなリスクといわれています。こうした特性を踏まえ、製造業のBCPでは製造ラインの停止を未然に防ぐ対応策と、やむを得ず停止した場合の代替策を計画することが求められます。
対応策の例は、以下のとおりです。
【製造業での対応策の例】
●原材料や部品の在庫確保
●製品の出荷ルートや物流拠点の多様化
●代替工場や代替設備の準備
●非常用発電機の稼働
製造業では、物流網の影響で製造ラインが停止する可能性を考慮し、原材料や部品の在庫確保、物流拠点の多様化といった事前対策が必要です。また代替工場や代替設備の準備、非常用発電機の稼働などにより、業務継続の柔軟性を高めることも欠かせません。
ITサービス業でのBCPの例
ITサービス業で想定されるリスクには、通信障害やサイバー攻撃などが挙げられます。これらのリスクに対応するため、ITサービス業のBCPには情報資産の保全や業務継続の仕組みづくりといった計画を盛り込みます。
ITサービス業の具体的な対応策は、以下を確認してください。
【ITサービス業での対応策の例】
●データの復旧方法の策定
●サーバのクラウド化やデータセンターへの移管
●データのバックアップ体制の構築
●リモートワーク環境の整備
ITサービス業では、データの復旧やバックアップの作成、サーバのクラウド化などを行うことで、情報の消失やサイバー攻撃に対応できます。またリモートワーク環境を整備すれば、通信障害発生時でも業務の継続が可能となります。
自治体でのBCPの例
自治体は、住民の安全や社会機能の維持に直結する役割を担っていることから、多様なリスクを想定しておく必要があります。リスクの具体例としては、指揮命令系統の混乱やインフラの機能不全、住民サービスの停止などが挙げられます。
こうした事態に備えるための対応策は、以下のとおりです。
【自治体での対応策の例】
●首長不在時の対応手順の整備および職員の参集体制の明確化
●代替庁舎の確保と施設の可用性の検証
●非常用物資およびライフライン確保策の整備
●通信手段の多重化による情報途絶リスクの低減
●行政データのバックアップ体制と迅速な復旧手順の構築
●非常時に優先する業務の整理と担当部署・役割の明確化
自治体では、BCPに加えて、地域全体の機能維持を目的とした地域継続計画を指す「DCP」の策定も重要です。DCPは、地域内の行政・企業・住民などが連携してライフラインや施設の復旧を図る計画であり、BCPとともに災害に強い地域をつくります。
BCPに関するよくある質問
ここでは、BCPに関するよくある質問にお答えします。
【BCPに関するよくある質問】
●BCPとは簡単にいうと何ですか?
●BCP対策は誰が対応するのですか?
●BCP対策の具体例を教えてください
BCPとは簡単にいうと何ですか?
BCPとは、自然災害や感染症、テロ、サイバー攻撃などの不測の事態が発生した際に、被害を最小限に抑え、事業を迅速に復旧させることを目的とした計画です。日本では、「事業継続計画」という名称が用いられることもあります。
BCP対策は誰が対応するのですか?
BCPの策定・運用は、基本的にトップダウンで行うため、経営層から選出された統括責任者が中心となって進めます。統括責任者は、BCPの適用時に迅速に意思決定できるよう内容を十分に理解しておかなければなりません。
BCP対策の具体例を教えてください
BCP対策の具体例は、業種によって異なります。ただし、業種にかかわらず整備しておきたい内容としては、以下のような項目が挙げられます。
【BCP対策の具体例】
●従業員の安全確保
●連絡・情報共有体制
●中核事業の特定と優先順位付け
●情報資産の保全
●代替手段の確保
BCPの実効性を高めるには、上記の対策を適切に実施することが不可欠です。
まとめ
BCPとは、自然災害や感染症、テロ、サイバー攻撃などの緊急事態に直面した際、企業活動への影響を最小限に抑え、事業を継続・早期復旧させるための計画のことです。策定には、中核事業やリスクの特定、優先順位の設定、具体的な対応策の明確化といったステップが必要となります。
BCPの策定後は、定期的な見直しや訓練の実施、また従業員への周知を徹底しましょう。そうすることで、緊急時でも混乱を最小限に抑え、企業として安定的に事業を継続できます。
(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)
企業防災 ToDoリスト(備蓄リスト付)
資料をダウンロード
