たった一人で従業員数を10倍に!知名度がなくても採用力はあげられる。「選ばれる」側の企業が抑えておくべき採用成功のポイント

株式会社プレックス

HRマネージャー 渡邉花梨(わたなべ・かりん)

プロフィール
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  • 成果の最大化と工数削減を目指して人材紹介サービスを活用。人材紹介サービス担当者の「目標」を理解して関係性を構築
  • 中途採用でも新卒のように「職種を問わないオープンポジション」で募集。大手・有名企業とは異なる入り口を設けて母集団を拡大
  • 面接で志望動機は聞かない。応募者の人生を理解し、「強みを言語化」することで自社のファンに変える

大手企業と比べれば知名度も人的リソースも予算も劣る中、転職市場で勝つには何が必要なのか。そんな悩みを抱える中小企業に知ってもらいたいのが株式会社プレックスの取り組みです。直近の3年強で従業員数は10倍、2024年度だけでも200名超を採用。さらに驚かされるのは、最近まで採用担当1名の“ぼっち人事”で進めていたという点です。

プレックスの採用力の秘訣とは?同社HRマネージャーの渡邉氏に、母集団形成や選考プロセスのポイントを聞きました。

人材紹介サービスの活用を中心に、年間200名超を採用

——まずは御社の事業内容についてお聞かせください。

渡邉氏:当社はインフラ産業を支えて日本を成長させることを目指し、人材紹介サービスやダイレクト・ソーシングなどの採用支援に加え、SaaS、M&A仲介といった新規事業にも取り組んでいます。

2025年4月から8期目に入りますが、事業の成長とともに組織規模も拡大しており、現在の従業員数は約400名です。私が入社した2022年の初頭は40名弱でした。

——約3年で10倍の規模になったのですね。

渡邉氏:事業の成長スピードに合わせて採用も加速していて、2024年4月から現在(2025年2月時点)までに200名超が入社しました。職種としては人材紹介事業に携わるキャリアパートナー(キャリアアドバイザー)が多いですね。来期はさらに採用数を倍増させる計画を立てています。

——メインで活用している採用手法を知りたいです。

渡邉氏:人材紹介サービスの利用が中心で、約30社とお付き合いしています。

最近まで私が一人で採用全般を担っていたため、成果の最大化と工数削減の観点から、人材紹介サービスをメインで活用しています。人材紹介サービスの担当者が当社の良さを応募者に伝え、選考プロセスをサポートしてくれる魅力はやはり大きいですよね。

求人広告はコスト面でのメリットを感じますが、途中で連絡が滞ったり、やり取りに時間がかかったり、オペレーションに苦労することがありました。今後はダイレクト・ソーシングにも注力したいと思っていますが、現状の当社の人的リソースを考えると、人材紹介サービスに頼るほうが成果の最大化につながりやすいと考えています。

「オープンポジション」を活用し、最適な領域へアサイン

——人材業界では大手各社も中途採用を強化しています。母集団形成ではどんな工夫を凝らしているのでしょうか。

渡邉:当社では、「職種を問わないオープンポジション」の募集を積極的に行っていて、母集団形成の最大化につなげています。当社が手がけている人材紹介事業の領域に、最初から関心の高い転職希望者は多くありません。そのため、募集段階では職種を限定せず、転職希望者のスキルや考え方を理解した上で、最適な領域へアサインしたほうが一人ひとりの強みや個性を活かせると考えています。

転職希望者の立場で考えると、人材業界における当社の知名度はまだまだ低いと思うんですよね。大手人材企業や、急成長した知名度の高いベンチャー企業がひしめく中で、当社に興味を持ってくださった方たちをいかに大切にできるかが採用成功のポイントだと思います。

——渡邉さん自身も大手人材企業の出身ですが、人材紹介サービス各社との付き合い方で大切にしていることはありますか?

渡邉:人材紹介サービスの担当の方がどんな目標を追いかけていて、何を大切にしているのかを理解するように心がけています。

所属企業によって紹介者数や採用決定数、売上など、さまざまな目標設定がありますが、担当の方がどうすれば社内で評価されるのかを理解し、「プレックスに紹介したい」と思っていただけるような働きかけをしています。

その上で、お互いに「何を相談しても大丈夫」と思える関係性を築くことも大切です。当社の場合は私がスピーディーに意思決定できるため、担当の方に困っていることがあればお願いごとを聞きますし、「採用決定のためにこれをやってほしい」という依頼があればすぐに対応します。

応募者を口説くコツは「強みの言語化」

——選考プロセスのポイントについても教えてください。面接では、どのようにして応募者の心をつかんでいますか?

渡邉:自社のファンになってもらうことを意識しています。そのためには、こちらが相手を深く理解することが大切だと考え、面接では職務経歴書に頼らずに、応募者の人生を一から聞かせていただくことが多いですね。限られた時間の中でポイントを絞って話を聞き、本心ではどんなことを考えているのかを理解するように努めています。

逆に、面接の定番のような質問でも、不要なことは聞きません。たとえば当社の面接では志望理由については質問しないんです。企業が「選ぶ」側ではなく「選ばれる」側となった今は、志望理由を聞いてもそこまで役立ちませんよね。

——応募者を口説くコツも知りたいです。

渡邉氏:人事・採用担当者によっていろいろあると思いますが、私の場合は、「相手の良さを言語化する」ことを意識していますね。

○○さんは、一見困難に思えるような仕事で勝ち筋を見つけることに喜びを覚えるのではないでしょうか?

それができるのはとても素敵だと思います。○○さんの強みを活かすとしたら製造業の採用支援が向いているかもしれません。

なぜなら、製造業の採用競争は世の中全体で見ても特に厳しく、正解が見つけられていない領域だからです。具体的な例では〜

といったように個別化しながら、応募者の強みや興味を言語化して当社の仕事に紐づけています。

意外と応募者自身も強みや興味を的確に言語化できていないケースは多いんです。「まさに私が頭の中で思っていたことです!」と喜んでもらえることもありますね。

——短い時間内で、さまざまな業界経験者の強みや興味を深掘りするのは簡単ではないと思います。渡邉さんのように相手の良さをうまく言語化するためには、どんなトレーニングをすると良いでしょうか。

渡邉氏:私の場合は、前職の法人営業時代にさまざまな業界や事業について学んだことが大いに役立っています。ただ、そうした経験がなくても、お付き合いのある人材紹介サービスを頼って、あまり接したことのない業界や業種の情報をたくさん仕入れてみるといいと思います。

トレーニングという意味では、面接が最良のインプットの場ではないでしょうか。多様なバックグラウンドを持つ応募者がいる中途採用では、数多くの面接を経験すればするほど、さまざまな業界についての理解を深めることができます。私は以前、住職の経験がある方の面接をしたこともあります。そのおかげで、お寺の運営にも少し詳しくなりました。

私自身、面接を通じてたくさん勉強させてもらったからこそ感じることですが、特に人事経験が浅いうちは、できるだけ多くの応募者と出会い、どんなやり取りをしたのか、相手をどのように理解したのかを振り返っていくことで、ビジネスの感度も磨かれていくと思います。

「人事としてやるべきことは手を抜かない!」。常にそう自分に言い聞かせています。

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取材後記

年間200名超の採用を実現している渡邉さんは、月間約150件の面接を担当しているそうです。母集団形成や選考プロセスのノウハウは、その圧倒的な実戦経験に裏打ちされたものなのだと感じました。特殊な経験やスキルがあるからではなく、「やるべきことをさぼらない」からこそ実現した採用力。プレックスの取り組みを活かせる中小企業はたくさんあるのではないでしょうか。

企画・編集/森田大樹(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也

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