年間200名採用を成功させた“ぼっち人事”の仕事術をご紹介。秘訣は「良い意味で愛社精神がないこと」

株式会社プレックス

HRマネージャー 渡邉花梨(わたなべ・かりん)

プロフィール
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  • 経営陣やマネージャー陣と1on1を行い、飲み会や休憩室にも顔を出す。「コミュニケーションに手を抜かない」ことで採用活動への協力体制を確立
  • 入社後の定着・活躍にこだわる。面接では自社の課題も含めた「事実だけ」を、包み隠さずざっくばらんに伝える
  • 人事に求められるのは「自社愛」よりも「課題解決力」。経営・現場・人事の三権分立によって人と組織を守る

過去3年で従業員数が10倍となり、2024年度だけでも200名超の中途採用に成功している株式会社プレックス。この実績だけでも驚かされますが、採用活動をリードする同社HRマネージャーの渡邉氏は、なんと「つい最近まで“ぼっち人事”(採用担当1名のみ)だった」と話します。

昨今の人事といえば、転職市場が厳しさを増す中、社内外でさまざまなプレッシャーにさらされる立場です。そんな役割をポジティブに捉え、大きな成果へつなげる渡邉氏の原動力とは?人事として大切にしているスタンスや行動について聞きました。

「人事との距離を感じさせない」。妥協なき現場へのアプローチ

──プレックスでは2024年度だけでも200名超を採用しているそうですが、つい最近まで渡邉さんは“ぼっち人事”だったと聞きました。

渡邉氏:2024年5月に1名が加わるまでは、私だけで労務以外の人事業務すべてを担っていました。その後も新たに4名が加わり、現在は6名体制で取り組んでいます。

──採用規模を考えると、1人で仕事をしていたことが信じられない気もしますが、なぜそれができたのでしょうか。

渡邉氏:前職で鍛えられた部分が大きいのかもしれません。私は業務効率を高めることへの意識が人一倍強く、一つひとつのタスクを処理するスピードも速い方だと思います。

とは言え、私の頑張りだけではどうにもならない部分もあり、プレックスの「人」や「体制」にも大いに助けられていますね。

1つは社長との距離感が近いこと。私は週2回、社長とのお茶会(1on1)の時間をもらっていて、その際に社長の考えをインプットしているんです。私が経営方針や経営課題を理解できるように、密にコミュニケーションを取っています。

もう1つは、現場が採用にとても協力的なことです。「20時から面接をお願いします」「会社見学の対応をお願いします」といった急なお願いをしても快く協力してくれますし、現場からの情報共有も多いので、高い解像度で事業や仕事を理解することができます。

──他社では、現場との連携を課題に挙げる人事・採用担当者が多い印象です。渡邉さんはどんな工夫をしているのですか?

渡邉氏:私は営業職出身ということもあり、「現場の理解なくして人事は成し得ない」と考えています。現場とのコミュニケーションには絶対に手を抜きません。事業責任者やマネージャー陣とも月1回の1on1を設定して、部署ごとの状況を把握していますし、飲み会や休憩室にも積極的に顔を出すようにしています。こうした動きをしているうちに、現場が人事を信用して協力してくれるようになりました。

意識しないと現場と人事との距離は開いてしまうのかもしれませんが、「ただでさえ忙しいのに、週に何度も面接対応できない」という状態にならないように、対話しながらお互いの考え方を共有する機会をつくっていくことが大切なのだと思います。

採用でのミスマッチを減らすコツとは

──年間200名規模という採用数に加えて、社員が定着・活躍している秘訣は?

渡邉氏:入社後のミスマッチを極力なくせるように、当社の面接では「事実だけ」を伝えています。たとえば当社ではまだまだ教育体制が整っておらず、人材育成はOJTが中心ですし、現場の仕事には泥くさいことや大変なこともたくさんあります。こうした事実も包み隠さず、ざっくばらんに伝えているんです。

また採用の観点では、入り口での見極めを重視しています。少しでも当社に合わない可能性があれば採用しないということを徹底しているからこそ、組織が崩れにくいのだと思います。

──早期離職防止のために、社内の体制づくりで気を付けていることはありますか?

渡邉氏:社内の問題に対して、個別かつ属人的に解決するようにしています。

人事は「新たにサーベイを入れました」「その結果、こんな声が多かったのでリモート勤務を導入します」といった具合に、一般論で施策を進めることも多いと思うんです。

でも、そうした声は本当に全社員から上がっているわけではありません。大切なのは誰が、どんな課題を抱えてそのような意見を言っているのかを理解すること。一般論ではなく個別に課題を確認し、一人ひとりと向き合うことを大切にしています。みんなに良い顔をしようとする組織には、誰も残らなくなるのではないでしょうか。

人事に求められるのは「自社愛」よりも「課題解決力」

──渡邉さんの話を聞いていると、自社を客観的に見て、転職市場での立ち位置を冷静に把握しているのだと感じます。企業内人事であっても客観的な視点を持ち続けられる理由は?

渡邉氏:私には、良い意味で愛社精神がないんです。人事としてやるべきことがあるからやっているだけで、「プレックスはこんなに素敵な会社なのに、なぜ人が来てくれないの!?」とは考えません。

もちろん当社で働く仲間のことは大好きですし、尽くしたいと思っていますが、当社が全員にとって世の中で一番いい会社だとも思っていません。社長は私のことを「エモくてドライ」だと言っていますね。

私は人事には「自社愛よりも課題解決力」が求められると考えていて、新たに採用チームのメンバーを迎え入れる際にも、同じような考え方の人を選びました。

これは営業職のマインドに近いのかもしれません。営業パーソンは自社商品への愛を持ちつつも、それ以上に顧客の課題解決を優先しますよね。人事にも同じ感覚が求められるのではないかと思っています。

──今後も採用計画が拡大していくと聞きました。人事・採用担当者として、渡邉さんがモチベーションを高く保っていられる秘訣を教えてください。

渡邉氏:当社は「経営」「現場」「人事」の三権分立を大切にしています。

経営は未来を見続け、現場は今の成果を追いかける。その中で人や組織を守るのが人事の仕事であり、社員が本当に輝けるようサポートしていく役割を担っています。そのためには、経営や現場と対等に会話して三権分立を実現しなければいけません。私が何も言えなくなったら人と組織を守れない。その責任感がモチベーションにつながっています。

もう一つは、「期待されたことに120%応えたい」という想いですね。私にとってはその相手が社長なんです。私が考えて行動することを社長は喜んで応援してくれますし、日頃から感謝の言葉をたくさんかけてくれます。この社長の下でなければ、私は辞めていたかもしれません。

日頃から、人事に「ありがとう」と感謝を伝えている経営者は、案外少ないのではないでしょうか。トップの接し方一つで、人事・採用担当者のモチベーションは大きく変わると思います。

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取材後記

「エモくてドライ」と社長が評価する渡邉さんの考え方に、これまでの固定観念が崩される思いがしました。厳しい転職市場の中で戦う人事・採用担当者は、自社の置かれている状況を俯瞰してとらえ、必要な施策を考えなければいけない──そう頭で理解していても、「自社が好きだからこそ」冷静になれない場面も多いのではないでしょうか。「私が何も言えなくなったら人と組織を守れない」という言葉に、人事パーソンとしての渡邉さんの強い覚悟を感じた取材でした。

企画・編集/森田大樹(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也

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