面接官が変わってもブレない!適性検査で面接体験を最適化したResilireの選考戦略【連載第22回 隣の気になる人事さん】
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役員経験者など面接に慣れている人が多い組織でも、「見極めの厳しさ加減」や「アトラクトの上手さ」には大きな差が生じていた
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まずは社員全員で適性検査を受け、社員の特徴を把握。選考でも適性検査によって転職希望者の性格的特徴や思考の癖を理解し、自社のバリューとマッチング
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適性検査で「転職希望者にとって望ましいアトラクト」を実現。「最終面接前sync」や「クロージング定例会議」などの場を通じて、関係者全員で一人ひとりの転職希望者と向き合う
全国各地の人事・採用担当者や経営者がバトンをつなぎ、気になる取り組みの裏側を探る連載企画「隣の気になる人事さん」。
第21回の記事では千葉興業銀行の加藤陽介さんにご登場いただきました。しばらく連載をお休みしていましたが、今回から再開します。
■千葉興業銀行の加藤さんが登場した第21回の記事はコチラ
地方銀行が「選考ファストパス」で新たな採用チャンス!100人の入社承諾前辞退者とつながる千葉興業銀行の母集団形成術
今回はd’s JOURNAL編集部が先進的な取り組みを進めていると注目した企業、株式会社Resilire(レジリア)をご紹介します。同社は従業員数45名のスタートアップでありながら、まず社員全員が適性検査を受検し自社の特性を可視化。その上で転職希望者にも同じ適性検査を用いることで、「再現性のある選考設計」を実現し、採用に関わる現場関係者との連携を強化しています。
採用の難度が高まるなか、経営者や人事・採用担当者のみで採用を続けるのは、成果の面でも工数の面でも限界があるでしょう。一方、採用ノウハウが経営者や人事・採用担当者の“自己流”に依存し、体系的な仕組みを構築できていないため、「採用活動にうまく現場を巻き込めない」と悩む企業も多いようです。
来期は従業員数倍増を計画しているというResilire。どのようにして再現性のある選考設計を形にしてきたのでしょうか。

面接経験が豊富な故に「見極め」や「アトラクト」のやり方に違いがあった
──Resilireで「再現性のある選考設計」を模索するようになったのには、どのような背景があったのでしょうか。
伊弉末氏:ハイクラス層を中心とした中途採用を進めていく中で、面接官ごとの属人性に頼っていることがネックになってきました。
当社はもともと「全員採用体制」で採用活動を進めており、現場のメンバーに協力してもらいながら、転職希望者に合わせて面接官をアサインしています。
ちなみに当社のメンバーは取締役・執行役員経験者が組織の25%、VP・部長以上の経験者を合わせると35%となっており、採用するターゲットも3割ほどが部長以上やCxOレイヤーなどのハイクラス層です。採用に関わる現場関係者は前職でも面接などを経験している人が多いため、人事からはResilireの採用についての在り方や選考基準、質問例などの最低限の情報提供にとどめ、面接の指導などは特に行っていませんでした。
しかし実際に採用を進めていくと、面接官によって、「見極めの厳しさ加減」や「アトラクトのやり方」に違いがあることが見えてきました。前職とは選考基準や採用ターゲットが異なるため、こうしたばらつきが生じていたのです。

──そもそもハイクラス層の採用が難しい面もありますよね。
伊弉末氏:はい。当社の事業は、大手製造企業を主な対象とし、「止まらないモノづくりを実現するサプライチェーンリスク管理基盤」を提供し、経営課題解決を担っています。そのため、扱う課題が大きく、製品要件や扱う商材単価も高くなるため、採用要件は必然的に高まります。転職希望者は採用市場での引き合いが強いので、その中からResilireを選んでもらうのは非常に難しいです。選考でのちょっとしたかけ違いによって他社を選ばれてしまうリスクもあると考えています。
当社のメンバーは、過去在籍企業での面接経験が豊富な人が多いですが、これまで在籍していた企業とは採用対象や採用基準も異なります。また、アサインされていた面接の目的も「アトラクト中心」「カルチャーマッチの見極め中心」「スキル・経験の見極め中心」などと異なり、本人の特性によっても得意不得意が分かれます。当初はHRチームで面接官ごとの強みを把握し、転職希望者ごとに面接官のアサインを行っていましたが、感覚的な部分も大きく、今後の採用規模拡大に伴う面接官の増員と面接の質の維持・向上が追いつかなくなることを懸念していました。当社としてより良い候補者体験の実現に向けた仕組みづくりが必要不可欠だと感じていたのです。
まずは社員全員で適性検査を受け、それぞれの理解を深めた
──そうした課題に対して、なぜ適性検査を活用しようと考えたのでしょうか?
伊弉末氏:きっかけは他社が中途採用で適性検査を活用していると聞いたことでした。
ただ、私は前職でも人事を担当していましたが、これまで適性検査を使ったことがなく、最初は正直なところ半信半疑でした。「自分たちの目で見極めたほうが、機会損失が生まれないのでは?」と思っていました。
それでも、試すこと自体は損にはなりません。まずは社員全員で適性検査を受けてみることから始めました。全員で受けて、全員に結果を共有したのです。

──これだけでも大きな変化がありそうですね。
伊弉末氏:自分自身の結果やお互いを知るメンバー同士で結果を共有し合うことで、適性検査の結果の信憑性が非常に高いことが確認できました。面白いのが、一つの特徴を切り出して見るのではなく、いくつかの特徴で捉えることでより本人の特性が見えてくる点です。また、あくまで特性であって、人の良し悪しを判断するものではなく、役割と特性の相性を見るのが重要だとも感じました。たとえば「感情的に物事を捉えやすい」という特性を持つ人は、シビアな意思決定を求められる役割には向いていないかもしれませんが、相手の感情に寄り添える強みを活かせるような役割とは相性が良いとも言えます。
また、私たちが活用している適性検査では、相手にどのようなコミュニケーションを取ると良いかを4象限に分けてマッピングしてくれます。縦軸は「リスクを取る」と「確実さを重視する」、横軸は「ビジネスライク」と「一体感を求める」です。

出典元:リクルートマネジメントソリューションズ「あなたは自分の性格と、マネジメントの希望と実態との関係を把握していますか?」
これで社内のメンバーをマッピングしてみると、セールスチームは「大きな目標や理想を掲げる、ビジネスライクなコミュニケーション」を好むのに対して、エンジニアチームでは「確実さを重視する、ビジネスライクなコミュニケーション」を好む傾向が明らかになりました。
こうした情報を社内に共有し、楽しみながら適性検査の結果に触れてもらい、「このような特性の人が少ないから、チームのバランスを取るために異なる特性の人を採用したいよね」といった会話のきっかけにしていきました。
適性検査でわかる、転職希望者が「本当に知りたい」こと
──具体的な選考プロセスでは、適性検査をどのように活用していったのですか?
伊弉末氏:実際の選考では、スキル・スタンスを見る面接の前に、転職希望者に適性検査を受けてもらっています。
面接前には、適性検査で取得した転職希望者の情報や面談内容、転職軸、意向度などを踏まえ、転職希望者の性格的特徴や言動、考えなどから、自社のバリューにマッチしそうか、懸念になり得るところはないかを人事と面接官で話し合っています。
──転職希望者の反応はいかがでしょうか。
伊弉末氏:転職希望者に抵抗感が生まれないように、能力検査の機能は使わず適性検査のみを実施し、「結果は合否判定には使用しません。あなたのことを深く知るために行っています」と説明しています。選考でも適性検査の結果によってスクリーニングすることはありません。
こうした説明を行うことで、転職希望者にも意図を理解してもらえていると感じます。
──適性検査を用いたことによって、属人的だった選考がどのように「再現性のある選考」へと変化したのでしょうか。
伊弉末氏:これは、明らかに変わってきたと感じています。
当社ではもともとバリューマッチを重視し、採用の場面でも意識してきましたが、面接官が人である以上は、どうしても感情や感覚的なものに左右されてしまう部分があります。そこに定量的なファクトとして適性検査の情報が加わることで、感情や先入観に引っ張られることなく、転職希望者の特性と自社のバリューのマッチング度合いを判断できるようになってきました。以前までは面接官ごとに評価コメントの粒度や観点がバラつきもありましたが、今は「この特性に対してどう見たか』という共通フォーマットで議論できるようになっています。
また、アトラクトの観点でも進展がありました。適性検査を活用し始めてからは、転職希望者と近いタイプのメンバーに面接を担当してもらい、「転職希望者にとって望ましいアトラクト」ができるようになってきました。
転職希望者のなかには「入社するにあたっての足元の不安や課題」に目が向く方もいれば、「5年後、10年後のあるべき姿や目標」に目が向く方もいます。それぞれの興味の方向性や気になるポイントが近いメンバーと話してもらうことで、面接体験の質が上がってきたと感じています。
──適性検査の活用を通じて、採用成功につながった実際のケースを知りたいです。
伊弉末氏:当社の面接ではまず、ビジョンやミッションを語り、事業に共感してもらえるように努めています。しかしある転職希望者の場合は、適性検査によって「社会貢献する壮大な事業に携わりたいと思っているが、実際に知りたいのは目の前の課題」だということがわかりました。
その転職希望者が同時期に選考を受けていた他社では、ビジョン・ミッションを中心とした長期の視点での話が多かったようです。当社は適性検査の結果を見て、一緒に働くチームや目の前の事業・業務課題などに切り替え、それらのテーマを深く語れるメンバーをアサインして語りかけました。結果、当社を選んでもらうことができました。

一人ひとりの転職希望者と向き合う「最終面接前Sync」や「クロージング定例mtg」
──適性検査で得る情報を活用できるようになったとしても、現場との目線合わせは簡単ではないように思います。この部分ではどんな工夫をしていますか?
伊弉末氏:魔法のような打ち手があるわけではなく、とにかく泥臭く話すしかないと思っています。
「面接前のすり合わせ」は大事だと言いながら、本当にそれをやりきっている企業は意外と少ないのかもしれません。当社もかつてはそうでした。
現在は、1人の転職希望者に関わる面接官全員が集まって、その方のことを徹底的に話し合う場を設けています。たとえば「最終面接前Sync」と名づけたミーティングでは、転職希望者本人のキャリア志向など、適性検査で得た情報以外のことについても深く話し合っています。
他にも、人事部門では週次で「クロージング定例mtg」を開き、現在最終ラインに載っている転職希望者のクロージングストーリー設計を行っています。
このように、当社では一人ひとりの転職希望者に腰を据えて関わり、かなり時間を割いている自負があります。それぞれの場面で適性検査の情報を共有しながら進めているので、現場との共通言語も増え、共通認識を持って会話できるようになりましたね。
──徹底されていますね。選考スピード低下のおそれはないのでしょうか?
伊弉末氏:当社の場合はカジュアル面談から始まり面接3回、合間に適性検査、さらにリファレンスチェックも行っているので、そもそも選考プロセスが多いです。加えて前述のような目線合わせの場を重視しているので、形式的には他社と比べてスピード感のあるフローとは言いにくい部分もあります。
一方、再現性のある選考設計を進めてきた結果、当社では面接官の選択肢を豊富に持ち、転職希望者ごとの最適なアサインを素早く行えるようになりました。日程調整などの業務もタイトに進められるので、プロセスの多さに反して、実際の選考スピードで他社に後れを取ることはほとんどありません。
今後も適性検査を有効に活用しながら、一人ひとりの転職希望者と徹底的に向き合い、その人が本当に望んでいる情報を得られる選考体験を実現していきたいと考えています。

【取材後記】
「面接のためのすり合わせ」は大事だと言いながら、本当にやりきっている企業は意外と少ない──。そんな伊弉末さんの言葉が突き刺さる取材でした。複雑なプロセスや会議体が積み重なっている選考フローであるにも関わらず、最終的に転職希望者に選ばれているのは、人事と現場の垣根を超え、一人ひとりの転職希望者について考え抜くResilireの本気度があるからこそだと感じました。
企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、岩田悠里(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也
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