「ニッチだから応募が来ない」から脱却!Shippioの異業種人材を惹きつける採用術【連載第23回 隣の気になる人事さん】
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現場社員や経営陣を巻き込んだプロジェクトとして採用広報を推進。AI検索を前提としたキーワード設計や多様なチャネルでの発信で転職潜在層への興味喚起を実現している
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カジュアル面談を起点に業界理解と事業意義への解像度を高め、異業種人材が「自分も貢献できそう」と思える設計に。カジュアル面談後の辞退率は1割未満となっている
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経営陣や社員の熱量を直接伝えることで転職希望者の志望度を高め、「一緒に業界を変える」という共感や当事者意識を醸成して最終的な入社の決め手につなげている
全国各地の人事・採用担当者や経営者がバトンをつなぎ、気になる取り組みの裏側を探る連載企画「隣の気になる人事さん」。
第22回の記事では株式会社Resilire(レジリア)の伊弉末大悟さんにご登場いただきました。
▼Resilireの伊弉末さんが登場した第22回の記事はコチラ
面接官が変わってもブレない!適性検査で面接体験を最適化したResilireの選考戦略
その伊弉末さんに「気になる企業」としてご紹介いただいたのは、独自のクラウドサービスで貿易業務のDXを支援する株式会社Shippio(シッピオ)です。
2016年の創業以来、急成長を続ける同社。エンジニアや営業、カスタマーサクセスなどさまざまな職種で中途採用を強化していますが、「国際物流」というニッチな領域で人材を集めるのは簡単ではありません。そこで同社では各種施策を組み合わせ異業種人材に向けた採用広報を進めるとともに、カジュアル面談を入り口として「事業の社会的意義を理解し、仕事に興味を持てる」選考体験を提供しているといいます。

異業種人材からは「間口が狭い」と思われてしまう
──国際物流という領域は、転職希望者の多くから「なじみがない」「業界知識がなければ難しそう」などと思われやすい側面があると思います。Shippioではどんな壁に直面してきましたか?
小野寺氏:私は2020年に1人目の採用担当者として入社したのですが、当時は応募自体がゼロに近い状態でした。
採用活動は、創業時から代表がコネクションを作っていたエージェント経由のみ。そもそも自社が求める人物像の定義も十分に定まっておらず、国際物流経験者だけを紹介してもらっていたので、母集団がとても小さかったんです。
サービスのSaaS化を進めるためにフィールドセールスやカスタマーサクセスといった職種も必要になっていきましたが、こうした職種の経験者は同業にはほとんどいません。そこで異業種の人材をターゲットにするものの、ご指摘のようにShippioは転職希望者にとって間口が狭く見えやすく、なかなか採用に至りませんでした。
今もこの難しさと向き合っているところではありますが、6年間にわたりさまざまな取り組みを続け、現在では月間で数百人規模の方々にご応募いただける状態となりました。

──応募ほぼゼロの状態から月間数百人規模というのは大きな変化ですね。どのような秘訣があるのでしょうか?
小野寺氏:できることは、全てやってきたと自負しています。現場社員と一体化した採用活動の体制を整え、エージェントとのリレーションを強化してきました。
また、採用広報を強化してダイレクト・ソーシングに取り組み、最近では当社の公式noteなどを見て応募してくださる方も増えてきました。カジュアル面談から始まる選考プロセスでは、異業種出身の方々に国際物流の世界へ興味を持ってもらえるよう努めています。
メンバーや経営陣を巻き込み、AI検索最適化につながる情報を発信
──Shippioの公式noteでは職種ごとにメンバーが自身の業務について発信していますね。こうした発信は、どのように仕組み化しているのでしょうか。
小野寺氏:noteやXを通じた発信に本格的に取り組むようになったのは約3年前です。プロダクトチームの採用活動でプロダクトマネージャーやデザイナーなどの採用が思うように進まなかったことがきっかけでした。今すぐに転職しようとしていない、いわゆる転職潜在層にも自社を知ってもらい、好意を持ってもらえるようにする必要があると感じていました。
そこで、プロダクトチームからも採用広報担当を半期ごとに複数人アサインしてもらいました。一緒に年間プロジェクトを走らせ、ターゲットのインサイト分析やキーワードの言語化、それに基づくコンテンツ発信を進めてきました。今ではこのやり方が全社に広がっています。
──発信するテーマはどのように決めているのですか?
小野寺氏:AI検索最適化を意識してテーマを決めています。
入社してほしい人物像を職種ごとに考え、「その人が生成AIに転職相談するとしたらどんなキーワードを入れるのか?」などを想定しながら発信テーマを決めるんです。生成AIが具体的なアドバイスを返すときにShippioを選択肢として挙げてもらえるよう、当社発の情報を充実させています。
──メンバーの皆さんだけでなく、経営陣も積極的に発信していますね。
伊達氏:当社の代表は「採用は全員で取り組むもの。組織づくりは事業責任者の仕事であり、人事・採用担当者に丸投げするものではない」と常々言っています。
採用広報につながる発信も経営チームの重要なミッションです。たとえば2025年にシリーズCの調達を行ったタイミングでは、これに関連するテーマで経営チームがリレー形式で記事を発信していきました。
私自身はもともとあまり発信が得意ではなかったのですが、小野寺から、あるいは広報室長からもサポートをしてもらいながら、隔週1本の記事執筆を続けています。「人事×事業」などの文脈で発信し、人事・採用担当者だけではなく事業側で人や組織に悩んでいる方にも見てもらえるようにして、結果的にShippioの発信だという認知につながるよう意識しています。

──テキスト情報だけではなく、音声プラットフォームのPodcastでも配信していますね。
小野寺氏:採用時には、転職希望者へのアンケートで「どんな情報がほしかったのか」を尋ねています。そこで「社風がわかるコンテンツがもっとほしい」という声をもらっていたので、社員同士のコミュニケーションや日常的な会話のトーンが伝わりやすい音声コンテンツを発信することにしました。
社内で話を聞いていると、プロダクト系のメンバーは音声で情報収集する人も多いんです。そうした層を取りこぼさないよう、発信方法を多様化させていくことが重要だと考えています。
「さよなら」させないカジュアル面談。異業種人材の興味をかき立てるポイントとは
──選考プロセスの工夫についても教えてください。異業種出身者が国際物流の世界へ興味を持ってくれるようになる秘訣は?
伊達氏:当社の選考プロセスは「転職希望者の抽象度を下げていく設計」にしています。
選考はすべてカジュアル面談からスタート。この最初の接点ではShippioの事業について説明するのですが、プロダクトなどの細かい話はほとんどしません。「国際物流とは」「貿易とは」といったテーマで話し、根本的な業界理解を深められるようにしています。
異業種の方々のほとんどは、普段あまり国際物流を意識しませんよね。でも、日常生活で触れている身近なアイテムの、ほとんどは海外から入ってきています。逆に日本企業もあらゆる国への輸出で事業成長しています。自分たちと密接に関わる事業だということを理解してもらい、どんな課題があり、日本や世界にどんな影響があるのか、大きな世界観で興味を持ってもらうことが大切だと考えています。
結果、カジュアル面談で話を聞いてもらえば、多くの方が国際物流に興味を持ってくれるようになります。転職意向が顕在化している人の中で、この段階での辞退率は1割未満です。
──カジュアル面談で「さよなら」をさせないようにしているのですね。転職希望者の関心度合いが一気に高まるポイントはありますか?
伊達氏:2段階あると思います。
国際物流とはどんな業界でどのような課題を抱えているのか、課題が解決されないままだとどんな未来になってしまうのか。まずは業界の課題への理解が深まることで、転職希望者は「この事業には本当に社会的意義があるんですね」と反応してくれます。
もう一つのポイントは、その課題に対してShippioがどのように事業展開をしていくのか。短期的には貿易業務のDXを支援していますが、長期的には当社のミッション「産業の転換点をつくる」の通り、貿易を通じてあらゆる産業のあり方自体を転換するプラットフォーマーになることを目指しています。この戦略に基づき、各職種で取り組んでいることへの解像度も高めてもらえるようにしています。これによって、異業種人材も「自分の経験を活かせそう」と感じてくれるんです。

「全社で採用に向き合う」風土を醸成するために
──現在の選考プロセスに、どんな手応えを持っていますか。
小野寺氏:もともと貿易や国際物流の領域に興味を持っていなかった方々が、なぜShippioを選んだのか。その理由を聞くと「経営陣の熱量に圧倒された」「選考中に会った社員の意欲が高く、一緒に業界を変えていきたいと思った」など、“メンバーの本気度”に触れたことが決め手になっていました。この状態を実現できていることに手応えを感じています。
伊達氏:代表が担当する最終面接やオファー面談では、「5年、10年かけて一緒にこの業界を変えていこう」「キャリアも一緒に創っていこう」と、長期的なキャリアビジョンや業界変革への展望を自らの言葉で語っています。ある営業メンバーの入社後のコメントでは、「オファー面談では社長が息切れするくらい一生懸命に話してくれた」という内容もありましたね。
小野寺氏:社員も自発的に熱量を発揮してくれています。人事・採用担当者からは「合否にかかわらず採用で出会ったすべての人にShippioのファンになってもらう」というスタンスを伝えており、これを意識してくれているメンバーが多いことに感謝しています。
──御社が取り組んできた中で「これは他社でも再現できる」と思うポイントがあれば、ぜひ教えてください。
伊達氏:基本的に、どの組織でも再現できる取り組みだと思います。経営チームがコミットしている状態で、プロジェクトとして全社で動く体制を作れたら、後はやるだけ。当社のように「事業を伸ばすためには人事が本当に大切」「採用は人事だけでなく全社で取り組むべき」という前提がそろっている組織なら、一気に進めていけるはずです。
ただ、こうした組織体制や前提条件によって、進めやすさには差が出るかもしれません。採用が「必要な人数を確保するもの」として人事に委ねられ、事業側も「それは人事の仕事」と捉えているような組織だと、社内を巻き込むこと自体が難しいかもしれませんね。
小野寺氏:その場合は、ボトムアップで協力者を見つける人事・採用担当者の動きが大切になるのではないでしょうか。事業部門の中にも「書くのが好き」「話すのが好き」というメンバーはきっといるはず。そんな人を見つけ、noteやPodcastなどを使って少しずつ発信し、地道に協力者を増やしていくアクションです。短期的に大きな成果を出すのは難しいかもしれませんが、こうした取り組みを積み重ねていけば、全社で採用に向き合う風土が醸成されていくはずです。

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【取材後記】
伊達さんが「発信のサポートをしてもらっている」と話していた広報室長も今回の取材に同席してくれました。印象的だったのは「採用広報と事業広報は地続き」という言葉です。それぞれの立場で採用活動にコミットすることが、結果的に自社の事業成長をもたらす。そんな共通理解の広がりが、全社を巻き込むShippioの採用コミュニケーション術につながっているのだと感じました。
企画・編集/海野奈央(doda人事ジャーナル編集部)、岩田悠里(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也
これだけは押さえておきたい!選考設計とフロー構築の基本
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