企画職採用で失敗しないために――人事と現場で押さえるべき採用のポイント

New!

河上泰之 氏

Beth合同会社 代表取締役社長、合同会社e-Beth 代表取締役社長

プロフィール

中村友香

パーソルキャリア株式会社 人事本部 リクルーティング統括部 エグゼクティブマネジャー

プロフィール

髙橋遼太郎

パーソルキャリア株式会社 doda事業本部 採用ソリューション事業部 企画統括部エグゼクティブマネジャー

プロフィール
この記事の要点をクリップ! あなたがクリップした一覧
  • 求人票における要件定義は、採用の入り口ではあっても、採用の全体ではない
  • 企画職を採用する際に必要なのは、情報量を増やすことより、仕事像を具体的にイメージさせること
  • 人事と現場では、どんな人物を採用するかだけではなく、活躍の定義も擦り合わせるべし

「即戦力となる企画職が採用できない」という多くの企業が直面するこの課題の背景には、企画者という職種に対して、求める人物像や役割の解像度が不足している点があります。また経験者を採用しても、期待通りの活躍に至らないケースも少なくありません。

企画職の採用だけを見るのではなく、誰をどう見極めるのか、どのように受け入れるのか、入社後に何をもって活躍と見なすのか。この三つが人事と現場の間で一貫した設計としてつながって初めて、再現性のある採用が実現できます。

今回パーソルキャリアが、現場で起きている「企画者採用とOJTの課題」について、河上泰之氏(専門家)/中村友香氏(人事リーダー)/髙橋遼太郎氏(現場リーダー)の三者が徹底討論するセミナーを開催しました。

本記事では、その内容を起点に、河上泰之氏が企画職採用で外しやすいポイントを「見極め」「受け入れ」「活躍」の三つの軸で整理しています。自社の企画職採用の課題が、どこにあるか判断するヒントとしてご活用ください。

企画職の採用は、求人票を整えればうまくいくと思われがち

企画職採用がうまくいかないとき、多くの場合、最初に見直されるのは求人票です。採用活動は募集要件・条件で始まるため、どの経験を必須要件にするか、どの条件を設定するかなど、求人票上で課題が見えやすくなっています。また企画職は、事業企画、事業戦略、営業企画、商品企画と名前は似ていても業務内容やミッションが異なる職種も多く、まずは募集要件に関する言葉の定義を精密にする必要があります。

今回のセミナーの中で中村氏(人事リーダー)も、「当社では各サービス、プロダクトごとに企画職が配属されており、100ポジションあれば100通りの採用要件がある感覚です」と語っています。そのため、新卒採用のように、適性検査や入社後評価のデータを一律に当てはめることが難しく、中途採用では、ポジションごとに別の整理が必要です。その結果、募集要件に関する言葉の定義をさらに細かくする状況が生じやすくなります。

出典:『やり切る企画者の「採用要件」とは?企画の採用とOJTの詰まりを徹底解剖 dodaが現場で使う最新の「要件」』セミナー講演資料

また求人票の必須要件には、資格、経験年数、〇〇領域の経験など、わかりやすい項目の記載が望まれます。一方で、仕事を自分ゴト化して広げる力、他部署との調整でボールを拾い続ける力、あいまいな状況でも前に進むことができるマインドは、文章で表現しにくい側面があります。そのため、企画職では、求人票の言葉の定義を精緻にするほど、ポジションに求められる本質的な能力・スキルが抜け落ちてしまいます。

中村氏は続けて、企画人材を見る観点を、テクニカルスキル、ポータブルスキル、マインドの以下三つに分けて整理しています。
・テクニカルスキル(職種固有の専門スキル)
・ポータブルスキル(課題特定力や調整力など、汎用的なスキル)
・マインド(姿勢や価値観)

出典:『やり切る企画者の「採用要件」とは?企画の採用とOJTの詰まりを徹底解剖 dodaが現場で使う最新の「要件」』セミナー講演資料

短期的なミッションをクリアしなければならない現場においては、テクニカルスキルが重視される傾向がありますが、中村氏は「どんなにテクニカルスキルが高くても、仕事を自分ゴト化して広げられない方や、調整業務を避ける方はフィットしにくい」と語っています。要するに採用で重視すべきなのは、経験者かどうかより、この組織で仕事を前に進められるかどうかです。

求人票における要件定義は、採用の入り口ではあっても、採用の全体ではありません。転職希望者にどんな情報を訴求するか、入社後に誰がどう受け入れるのか、さらに、その人が活躍している状態を人事と現場が同じ言葉で語れるのか、について一連の流れとしてつながっていないと、募集要件が正しそうに見えても、失敗するリスクがあります。

採用できない理由は、要件のアンマッチではなく「仕事像の不在」だった

髙橋氏(現場リーダー)は、営業企画のポジションを募集していた当時のことを、「自信があるという人に応募してほしいという意図から、任せたい業務内容についてあえてハードルの高い表現を用いていたこともあります」と振り返っています。プレッシャーのかかる仕事を正しく、かつ短く表現し、通用すると思う人だけに応募してもらうようにする、企画職採用でよく見られる打ち手です。

髙橋氏は続けて、「応募は一定数あったものの、転職希望者が具体的な仕事イメージを持つことができず、最終選考で辞退になるケースが増えてしまった」と語っています。募集内容は、転職希望者を集めることにつながったものの、転職希望者の頭の中に、自分がこの仕事でどう動くのかというイメージを描くことができなかったことが要因です。そのため、選考が進むほど不安が増し、最終選考で辞退となってしまうのです。

この失敗は、企画職採用にありがちな誤解をよく表しています。採用する側は、難しいミッションであることを伝えれば、自信がある人が応募すると思っていたものの、転職希望者側にとっては、担当業務が難しそうだという印象だけが強まります。その結果、自分の役割や裁量が見えないまま不安になるという反応になります。あえて狙いを定めた表現が悪いのではないですが、そうした言葉での説明で、仕事を正しく伝えたつもりになってしまうことが問題です。

採用活動において、仕事が伝わらない背景には、企画そのものの構造理解が不足している点があります。これについて河上氏(専門家)は、企画を三層で捉えるフレームを提示しました。

河上氏は、「そもそも企画という概念に求められることは大層、中層、小層の三層に整理することができます。大層は何を伝えるのかという本質的なメッセージ、中層は見たくなる・気になるという遊びの要素、小層は細かなテクニックです。そして企画者として差がつくのは、この中層で相手の関心をひく仕掛けができるかどうかです」と話しています。

出典:(河上氏資料)『やり切る企画者の「採用要件」とは?企画の採用とOJTの詰まりを徹底解剖 dodaが現場で使う最新の「要件」』セミナー講演資料

先ほどの営業企画の募集事例と照らし合わせると、高い期待値や厳しいミッションを示すこと自体は、大層としては間違っていません。しかし、それだけでは転職希望者には伝わらないものです。自分がどこまで裁量をもってはたらけるのか、どこまで役割を広げてよいのか、どの部分で創意工夫を発揮できるのか。そうした見たくなる・やってみたくなる仕事像、つまり中層がないままでは、文章は正しくても、仕事のイメージを具体的に描くことができないのです。

髙橋氏は求人募集時の修正策について「情報を可視化した図解資料を作成し、選考で説明する時間を設けました」「どこまで個人の自由があるのかという、業務の裁量範囲を視覚的に提示することで、転職希望者の理解度と納得感が大きく向上しました」と語っています。求人票の文章をさらに増やしたのではなく、転職希望者の頭の中に仕事の輪郭を立ち上げる方向へかじを切ったのです。

さらに髙橋氏は、「任せたいコア業務は明確にしつつ、それ以外の領域にはあえて柔軟性を持たせることもあります。この範囲であれば自由にやってよいと伝えることで、主体性のある人材を引き付けやすくなります」とも語っています。転職希望者が自分の工夫の余地を感じられるように、仕事での遊ぶ枠を示すことが重要です。

企画職採用には典型的な誤解があります。採用できない理由は、募集要件の誤りではありません。むしろ、募集要件を正しく見せることに意識が偏り、転職希望者が自分ゴトとして仕事を想像できる工夫が抜けていたことです。企画職を採用する際に必要なのは、情報量を増やすことより、仕事像を具体的にイメージさせることが不可欠です。

採用した人材の活躍には、見極め・受け入れ・活躍設計の連動性が重要

採用した人材の活躍に目を向けると、新たな課題が見えてきます。活躍する人材をどう見極めるのか、採用後のオンボーディングはどうするか、どんな状態を活躍と呼ぶのかという点が、各組織で別々に運用されることも多いです。選考では魅力的に見えた人でも、入社後の活躍に至らないということも起こりえます。

まず見極めの段階で、現場と人事が見ているものは同じではありません。中村氏は、「企画人材を見る観点をテクニカルスキル、ポータブルスキル、マインドの三つに分けて整理している」と説明しました。ここで重要なのは、どんなにテクニカルスキルが高くても、「仕事を自分ゴト化して広げられない方や、調整業務を避ける方はフィットしにくい」と、語っていた点です。企画職は役割の境界があいまいで、他者を巻き込みながら前に進める仕事のため、専門知識だけで業務を進めることは難しいです。そのため、入社後に教えられることと、採用時点で見ておくべきことを分けて考える必要が出てきます。

一方で、現場が求める人物像を募集要件に落とし込むと、理想が先行しやすいのも特徴です。髙橋氏は、「スキル定義そのものよりも、人事と現場の間で、具体的な人物像の解像度を上げるプロセスを大切にしています」と話しました。どんな経験であれば活かせるのか、どんな条件を想定しているかといった議論を先に行い、その後に細かなテクニカルスキルを確認する。このステップを飛ばしてしまうと、採用はすぐに「市場にいない人」探しに変わってしまいます。そもそも、マーケットに存在しない人材要件を定義してしまうと、採用が成立しにくくなります。

次には受け入れの問題が発生します。髙橋氏は、早期に即戦力化しやすい人の特徴として「良い意味での鈍感さ(過度に空気を読み過ぎない行動力)」を挙げました。入社直後はわからないことが多いため、もう少し情報を整理してから聞こうと止まる人より、わからないからすぐ聞こうと動ける人の方が、正しい情報に早くたどり着きやすいです。中村氏も、「謙虚でありながら目的志向があり、必要に応じて空気を読まずに質問できる人材は、早期に活躍しやすい傾向があります」と重ねています。

受け入れの問題を解決する中で大事なことは、質問できる人を褒めて終わらないことです。質問しやすい状態がなければ、どんな人でも立ち上がりは遅れる傾向にあります。中村氏は、「実力を発揮してもらうためには、オンボーディングの質を上げることや、過度な期待をかけないことも大切です」と語っています。オンボーディングを担当するべきなのは事業部門か人事か、あるいは採用チームなのか、体制を統一することで組織間でのばらつきが解消され、育成の質を平準化することができます。

特に企画職で受け入れ設計が重要なのは、役割のあいまいさが高いためです。定型業務の比率が高い職種であれば、立ち上がりの品質も比較的そろえやすいものの、企画職は誰に聞けばいいのか、どこまで提案してよいのか、どの論点は自分で拾うべきなのか、といった境界の学習が必要です。ある意味で受け入れ設計とは、境界を教えず、本人のセンスに賭けるのをやめることでもあります。

河上氏は、「活躍できる企画職の本質は、中層で論理とデザインを駆使して人を引き付ける仕組みを作ることを楽しんできた経験がある人だと考えています。企画は、正しいことを伝えるだけでは成立しません」と語りました。

加えて河上氏は、人を見抜く視点は「タイミング」「適性」「知識技能(スキル)」「関係性」の四項目の掛け算であり、中でも特に重要なのは「関係性」だと提言します。どれだけ高いスキルを持っていても、上司、同僚、他部署との関係性がつくれなければ、企画職は成果に結びつきにくいから、です。

出典:(河上氏資料)『やり切る企画者の「採用要件」とは?企画の採用とOJTの詰まりを徹底解剖 dodaが現場で使う最新の「要件」』セミナー講演資料

河上氏は、個人の思考特性やコミュニケーションスタイルの違いを理解するための手法として、「あたまの情報処理8タイプ」というフレームも紹介しました。これは、人がどのように情報を処理し、意思決定を行うかの傾向を分類したものです。特に関係性の構築においては、こうした思考特性の違いが影響します。

河上氏は、「深掘りが得意なのか、つなげるのが得意なのか、人間に関心が向くのか、仕組みに関心が向くのか、綿密に想定してつじつまを合わせるのか、わからないことはすぐ聞いて前に進むのか、といった違いがコミュニケーションギャップを生む一因になる」とも話しています。

出典:(河上氏資料)『やり切る企画者の「採用要件」とは?企画の採用とOJTの詰まりを徹底解剖 dodaが現場で使う最新の「要件」』セミナー講演資料

このあたまの情報処理8タイプ診断は人を判断するためではなく、どこで会話がすれ違いやすいのか、どの関係性で力を発揮しやすいのかを見るための補助線になります。このような視点がないと、面談で能力を見抜くのではなく、会話しやすい人を評価し、能力があるのに会話がすれ違いやすい人を不合格にしてしまうケースもあります。その結果、組織の同質性が上がり、変化に強い組織を作ることも難しくなります。

さらに実務では、活躍の設計には境界条件も含まれます。髙橋氏は、「仕事で遊びを実践する上では、コンプライアンスとのバランスも課題になります。大切なのは、何を守るべきかについて社内で合意があることです」と話しました。ルールがあるから動けないのではなく、どこまでなら動けるかが共有されていないから、現場も中途入社者も身動きが取りにくくなる。

中村氏は、「パーソルキャリアとしてはこう、個人としてはこう、と主語を分けて話すこともある」と語っています。こうした境界を言葉にする工夫をすることで、自由を与えることではなく、動ける範囲を明確にしています。

企画職採用で本当に擦り合わせるべきことは、人事と現場が、どんな人物を採用するかだけではなく、どの段階で何を期待し、どの関係性が築ければ活躍とみなすのかまで、同じ言葉で語れることです。

企画職採用は、「採用」ではなく統合設計である

河上氏はここまでの話を、できるだけ単純な論理に整理し、企画職採用の成否は次の式で表せると整理しました。

企画職採用の成否=見極め×受け入れ×活躍設計

求人票における募集要件の工夫は、見極めの入り口にすぎません。受け入れの責任があいまいであると、どんな人でも立ち上がりが遅くなり、活躍の定義が共有されていなければ、現場は「期待と違う」と感じます。この三つのどこかが欠ければ、活躍する人材の採用は実現が難しくなります。逆に言えば、企画職採用で結果が出ないときに確認すべきなのは、求人票の改善だけではなく、この三つのどこで分断が起きているかです。

現在採用がうまくいっていないと感じる場合は、そもそも市場にいない人を探しているのか、転職希望者に仕事像が伝わっていないのか、採用後の立ち上がりで歩留まりに課題があるか、活躍の定義が現場と人事で共通見解を持てているかを整理することが重要です。

まとめ

企画職採用で失敗しないために必要なのは、求人票の工夫だけではなく、誰を採用するか、どう受け入れるのか、どの状態を活躍と呼ぶのかを人事と現場で擦り合わせること。

一方で、社内だけで整理しようとすると、各組織が自分の持ち場の正しさを語るだけになりやすく、原因が絞りきれず改善が遅れてしまいます。そんな時は、見極め・受け入れ・活躍のどこで分断されてしまっているか、人事と現場の両方の視点から整理し、活躍まで含めた設計について、パーソルキャリアへ相談することも有効な選択肢の一つです。

[取材・編集/doda人事ジャーナル編集部、合同会社e-Beth河上泰之、制作協力/シナト・ビジュアルクリエーション]

面接質問集付き!すぐに使える採用活動のマニュアル

資料をダウンロード