20代はなぜ“組織”に定着しないのか─志向タイプと4象限でひも解く「採用」と「育成」の本質
-
20代は転職を前向きに捉える「転職ネイティブ世代」。「自分らしくはたらく」ことを重視し、将来的な転職を前提にファーストキャリアを選ぶケースもある
-
人事の本質は「人を生かし事を成す」であり、個と組織の両立が成果創出の鍵となる
-
20代の採用・育成において、個と組織/主観と客観の4象限で捉え、それらを目標設定に統合し、スパイラルアップさせる考え方が重要
新社会人の転職サイト登録が過去最高を更新するなど、若年層のキャリア観は大きく変化しています。転職を前提にキャリアを設計する「転職ネイティブ世代」に対し、企業はどのように向き合うべきなのでしょうか。
本セミナーでは株式会社壺中天(こちゅうてん)COO 高橋奎氏をお招きし、20代の価値観や行動背景を紐解きながら、MBO(目標管理)の正しい捉え方や若手採用全体の設計、採用手法などのヒントを伺いました。
20代は“転職前提”で動く時代へ─「doda」のデータから読み解く20代の転職動向
──新社会人の転職登録者数は過去最高に。20代は「転職ネイティブ世代」
パーソルキャリア株式会社 神埜氏:2025年4月時点で「doda」の新社会人登録者数は前年比113%と過去最高を更新し、特にコロナ禍以降に大きく増加しています。また、調査開始時期の2011年と比較すると、全体の登録者数は7倍、新社会人に限れば31倍にまで拡大しています。

出典:パーソルキャリア株式会社『「新社会人(※)の転職サイト登録動向」2025年版』
このデータが示していることは、もはや「転職は特別な行為ではない」という事実です。実際に、新卒で入社した社員が、入社後すぐに転職サイトに登録することは珍しくありません。
例えば「給与が上がらない」という不満がある場合の行動を見ると、「支出の見直し」「投資」に続いて「転職」が選択肢として挙げられています。特に若年層では、給与アップが見込めない場合に、より積極的に転職を検討する傾向が見られます。

出典:パーソル総合研究所 「賃上げと就業意識に関する定量調査」
多くのZ世代は転職を前向きに捉える「転職ネイティブ世代」です。「自分らしくはたらく」ことを重視し、将来的な転職を前提にファーストキャリアを選ぶケースも少なくありません。そのため、「採用すれば長くはたらいてくれる」という前提はすでに崩れており、企業には採用や育成のあり方そのものが問われています。

人事の本質的な在り方「人を生かして事をなす」
株式会社壺中天 高橋 奎氏(以下、高橋氏):中学時代、サッカー部のキャプテンとしてチームをまとめる難しさに直面したことを原点に、「組織をどのようにマネジメントすればよいのか」という問いを持ち続け、現在はコンサルティングや講演を通じて企業のマネジメント支援を行っています。
私は研究者ではなく「実践者」です。体系的な知識と自身の経験から得た知見を掛け合わせ、大手企業、スタートアップ企業、NPO組織など、30以上の組織に支援を行ってきました。
人事とは職種ではなく、「人を生かして事をなす」あり方だと思っています。「人を犠牲にしてでも、事をなす」というのは「搾取」です。逆に、「人は元気だが、事がうまくいっていない」という状態はぬるま湯にすぎず、現在は後者のような組織が増えているように感じます。
重要なことは、一人ひとりの力が十全に発揮されながら組織の目的が成し遂げられる状態であり、「人と事を同時に実現すること」こそが、人事の本質的な在り方だと言えるでしょう。
本日は弊社代表の坪谷邦生の100のツボシリーズと私の専門である20代についての知見を合わせて、皆さまに20代採用と育成についてお届けします。

20代の採用・育成を考える前に押さえたい「3つの傾向」
高橋氏:今回のセミナーテーマである「20代の採用と育成」について、「世代が違う」と切り離して考える必要はありません。なぜなら、人間の原理原則は変わらないからです。そもそも皆さんは、なぜはたらいているのでしょうか。「生きていくお金を得るため」「社会的な地位を得るため」「家族のため」など、はたらく理由はさまざまです。これは20代も同じではないでしょうか。
一方で、20代ならではの行動や背景の違いを理解しておくことは重要です。20代の採用・育成について考える際、以下「3つの傾向」を知っておくと、マネジメントしやすくなります。
① スマホ社会によるドーパミン中毒
SNSの影響により、「他人からの承認」が即時に得られる環境に慣れており、「すぐに成果を得たい」「もっと成果を獲得したい」という刺激を常に求めてしまう傾向があります。
しかし、会社に入ると承認を得るまでには時間がかかります。これまで当たり前のように得られていた承認が、仕事ではなかなか得られない。そのギャップに戸惑い、離職につながってしまうケースも少なくありません。承認欲求が強いという性質は、年齢や個人のせいではなく、スマホやSNSによるスピーディーな「社会の影響」だと理解しておくとよいでしょう。
② 「独立」や「転職」が身近で、選択肢(セーフティネット)が拡充している
かつて「独立」といえば一念発起が必要で、ハードルが高い選択肢でした。しかし近年では、「Uber Eats」や「タイミー」などのサービスの登場により、良くも悪くも組織に属さずとも一人で生きていける社会になりつつあります。こうした社会環境の変化によって、「独立」という選択肢は、より現実的で選びやすいものになっていると考えます。
また、現代においては求人広告・求人数も多く、転職を繰り返しやすい環境にあります。
所属する会社でパフォーマンスが出せないのであれば、1つの会社にしがみつかずに転職・独立するという傾向は、決して悪いことではありません。むしろ、「はたらくことに対する選択肢が多い」とポジティブに捉えるとよいでしょう。
③ ロールモデル不在や不安定な社会を背景とした個人主義へのシフト
終身雇用の崩壊により、明確なキャリアモデルが描きにくくなっていることに加え、AIの台頭による成長プロセスの変化など、時代とともにさまざまな変化が起きています。
安定がなくなりつつある社会において、「自分で何とかするしかない」という危機意識を持って生きている人は多く、個人主義にならざるを得ない状況があります。そのため、「組織のためにはたらく」という意識よりも、「自分が生き残るための道」や「自分にとって何が得か」を重視する傾向が強くなっているのです。
採用・育成に必要な「組織の目的」と「自律的な貢献」
高橋氏:個人でも生きられる時代において、「なぜ組織ではたらくのか」という問いは避けられません。また、この意味づけを考えることは、人事が人材育成を担当する上で大切なことです。
組織とは、「組んで織りなす」と書きます。「組む」ということは、同じ目的に向かうということですが、先ほど皆さんに「はたらく目的」を伺ったところ、さまざまな意見がありました。このように、目的がバラバラでは同じ方向を向くことができませんから、「こっちの方向に行こう!」と目的を提示することが「組織」であることの最重要条件です。
「織りなす」とは、個人では非効率なことを「協働」によって実現することです。個人でうまく完結できるのであれば、組織である必要はありません。

つまり組織とは、「協働によって目的を達成する仕組み」であり、そのために、採用と育成が存在するのです。当たり前と思われがちですが、採用時点で組織の目的を伝えていなかったり、育成しても「協働する」という観点が欠如していたりすることが多いものです。
──MBO(目標管理)から考える「成果」と「マネジメントの役割」
ドラッカーの哲学であるMBO(Management By Objectives and self-control)は、日本語で「目標管理」と訳されます。「共通の目標」と「各自の自律的な貢献」により、組織としての成果を挙げるという考え方です。

「マネジメント=管理すること」と考えている人が多いのですが、本来マネジメントとは管理することではありませんし、「管理型」には限界があります。管理するというよりも、「馬を乗りこなすようなもの」と理解する方が実際のイメージに近いでしょう。
ドラッカーは、「成果は組織の中には存在しない」と言っています。たとえばストーブ会社の場合、部品を作る人は作ったねじを見せて、「これが成果です」と言うかもしれません。しかしこれは「貢献」に過ぎず、「成果」ではないのです。ストーブ会社における「本当の成果」とは、ストーブを購入したお客様が寒い日に帰宅し、ストーブの前で「暖かくて幸せ!」と喜んでくれることに他なりません。
つまり、組織の中に成果はなく、企業が提供する価値が顧客や社会に届き、喜びに変わった時こそが、「成果」と呼べるものなのです。

メンバー一人ひとりがすべきことは、それぞれの強みを生かして、成果につながる「貢献」を行うことです。そしてマネジメントには、メンバーが質の高い貢献ができるよう、個々の強みを生かし、支援をすることが求められています。
──日本企業におけるMBOの失敗
日本でMBOがうまく機能しなかった理由は、「自律的な貢献」という視点が欠落していた点にあります。部下の自律性が低いと、マネジャーに負担がかかります。メンバー一人ひとりが「何に貢献すべきなのか」を理解し、自らを律して行動できなければ、マネジメントもうまくいきません。
以下は、日本にMBOを広めた五十嵐先生の著書を図式化したものです。

「自律的な貢献」が欠落した結果、多くの企業は以下2つの型に陥りました。
・ノルマ管理型(業績変調)
・人間性偏重型(ぬるま湯組織)
大企業のほとんどは「ノルマ管理型」です。市場に余白があり、事業が成長している局面では、短期的に成果を出しやすい手法です。しかし長期的にみると、組織の疲弊に繋がり、離職を招きやすくなります。日本はこの30年間、こうした「ノルマ管理型マネジメント」によって苦しんできた側面があるといえるでしょう。
そこで、危機感を抱いた企業は1on1で「個人がやりたいこと」をひたすら傾聴し、「人間性偏重型」にシフトしていきました。その結果、個人がやるべきことに対する責任が放棄され、権利ばかりを主張し、ぬるま湯組織となってしまったのです。人間性偏重型は組織としての成果が出ず、最終的には崩壊します。個人にとっても、それは望むことではないでしょう。
──目指すべき「葛藤克服型」を実現していくには
理想は、「個人」と「組織」の両立を図る「葛藤克服型」です。その実現に向けて重要なのが、弊社代表の坪谷邦生氏が作ったMOK4というフレームワークです。個と組織/主観と客観の4象限で捉え、それらを目標設定に統合しながら、スパイラルアップ(全開)させていく考え方です。一人ひとりがこの状態になる仕事の仕方を目指してほしいのです。

・個×主観:自分の夢や価値観
・個×客観:他者から見たできること/得意なこと
・組織×主観:組織の存在意義
・組織×客観:業績・成果への貢献
これはインテグラル理論*を基にしています。「自分の夢(私が思うこと)」を起点にしつつ、「自分の強み(周りからできると思われていること)」を生かしながら自律的に貢献することで「組織の業績(顧客・社会への価値の集合体)」につながる。その過程で「組織の使命(存在価値)」を感じ、見出していく。この循環こそが、個人と組織の両立を可能にするのです。
*インテグラル理論:トランスパーソナル心理学者・文明思想家のケン・ウィルバーによって提唱された、人間と世界を包括的に捉えるための理論
20代の採用・育成でも「4象限」を軸に「スパイラルアップ」することが重要
高橋氏:採用・育成の段階でも、「MOK4の4象限」と「スパイラルアップ」を意識することが重要です。
採用面接の場で、4象限を軸に応募者との対話を行うことで、その人の「夢」や発揮できる「強み」が見えてきます。結果として、自社とのマッチ度や、採用すべき人材かどうかを、現場メンバーも含めてより的確に判断できるようになります。
例えば、「組織の使命が合うかどうかがわからない」という場合には、社長や上司とのカジュアル面談を設定し、価値観や使命が合致するか否かを確認するというような選択肢も出てくるでしょう。また、一次面接では「夢」を、二次面接では「強み」や「業績への貢献」を確認するといった面接のプロセス設計も考えられます。

経営者は「お客さまの喜び」という成果に向かう、エネルギーある組織をつくりたいと思っています。マネジャーは、メンバーが強みを生かして成果につながる貢献を、自律的に行ってほしいと考えるでしょう。
メンバー目線では、単に業績だけを追うのではなく、自分の強みを生かして組織の喜びも感じたいと考えるものです。
そう考えると、4象限を実行しながらのスパイラルアップは、ステークホルダー全員が求めるところなのです。この考え方を中心に据えて仕事を進めていけば、みんなの悩みが解決するのではないでしょうか。これこそが、ドラッカーがいうところのMBOそのものなのです。

──本音を引き出すカギは「共通体験」
4象限を実行するためには、本音でのコミュニケーションが欠かせません。相手の本音を引き出すためには、共通の体験を持つことが重要です。共通体験にお勧めしているのが、ボードゲームによる疑似体験です。

ゲームは事業部単位で行うことが理想です。また、内定者研修やマネジメント研修でもよいでしょう。まずは、「目標管理の4象限を回す」という考え方に賛同する人で行い、小さな成功体験を重ねていくことが大切です。
またボードゲームには、以下のようなシートがついてきます。これを埋めていく形で進行すると、分かりやすいでしょう。マネジメントでまずはボードゲームとMOK4シートを用いた上で、採用活動でその感覚を基に採用できるようにするのが、本質的といえます。

──「過去の体験」から本音を見出す
パーソルキャリア株式会社 石井 宏司氏(以下、石井氏):面接で本音を引き出すには、うまく伝わらなかった経験や、相手に理解してもらえなかった過去の体験について語ってもらい、「本当はどうしたかったのか」「その時に何を感じ、考えたか」を丁寧に質問してみるというやり方があります。
過去の体験を振り返って語ることは、比較的、心理的安全性が高く、本音を引き出しやすいアプローチだと言えるでしょう。面接を担当する方は、あらかじめ複数の質問パターンを用意しておくことをお勧めします。

高橋氏:転職希望者が20代の場合、「体験を語る」ことへのハードルはそれほど高くありません。逆に「聞いてもらえた」というプラスの要素となることが多いので、そのアプローチは有効だと思います。
──採用の要件定義も4象限を基にする
高橋氏:採用の要件定義も、4象限を基に見直すことができます。要件が曖昧なまま採用すると、入社後にミスマッチが発生し、早期離職につながります。現場メンバーと共通認識を持ち、4象限をベースに採用要件を設計することが重要です。
スパイラルアップしている社員を見つけて、その人の夢や強み、貢献の方法、ミッション・ビジョン・バリューへの理解を記事化し、応募者に読んでもらって感想を聞いてみることも有益です。

出典:「図解採用入門」坪谷邦生 採用要件シートより
まとめ
転職が前提となる時代において、採用と育成の在り方は大きな転換期を迎えています。本セミナーでは、20代を「特別な世代」と捉えるのではなく、その背景にある環境変化を理解した上で、個人と組織の両立をいかに実現するかが問われました。
特に印象的だったのは、「成果は組織の外にある」という視点や、「自律的な貢献」「4象限によるスパイラルアップ」という考え方です。採用・育成・マネジメントを分断せず、4象限による目標管理を軸に設計し、個人と組織が共に成長する仕組みづくりを目指したいものです。
若手社員受け入れ時に知っておくべき!若手の早期離職防止策
資料をダウンロード
