「こんなはずじゃなかった退職」は防げる─U24世代の転職活動からひもとく“若手の離職防止策”

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パーソルキャリア株式会社

キャリアアドバイザー 髙橋 賢太郎(たかはし・けんたろう)

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キャリアアドバイザー 岩井 美樹(いわい・みき)

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キャリアアドバイザー 佐藤 和輝(さとう・かずき)

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  • U24(24歳以下)世代は転職を「キャリアのリスタート機会」ととらえ、新卒時の就活をやり直したいという意向が強い
  • U24世代で「ホワイト企業の基準」が上がっている。研修不足で現場へ投入されることへの不満も目立つ
  • U24世代は安定や年収アップを重視する一方、「自分らしさ」や「自由」も強く求める。期待・承認の声かけや、人事による相談窓口設置などが定着のカギとなる

若手人口の減少や、求人倍率の上昇、さらに2029年春に卒業見込みの学生から新卒就活日程の前倒し案が政府で検討されており、新卒市場は年々厳しさが増す見込みです。

企業は「採用する」だけでなく「今いる若手社員を離職させない」ことがますます重要になってきました。一方で、若手の早期離職は増加傾向にあり、苦労して採用した人材が短期間で流出してしまうケースも少なくありません。

本記事では、U24(24歳以下)世代を主に担当するキャリアアドバイザー3名に、若手が転職を考えるきっかけや退職理由、次の職場に求める条件などを取材しました。U24世代が抱えるリアルな悩みから、若手定着に向けたヒントを探ります。

転職活動を「キャリアのリスタート機会」ととらえるU24世代

──「新社会人の転職サイト登録動向」2025年版によると新社会人の「doda」登録者数は、過去最高値を更新し、2011年比で31倍伸長しています。「第二新卒」層の登録数について、現場での肌感覚はいかがでしょうか。

岩井氏:転職希望者の方々と向き合う中で、第二新卒層からのご相談は着実に増えていると感じます。若手のうちにキャリアチェンジしたいという意向を持つ人が多いですね。

髙橋氏:近年、パーソルキャリアでは U24(24歳以下)層の転職希望者を担当するキャリアアドバイザー組織が拡大傾向です。背景には、第二新卒層の登録者数やキャリア相談件数の増加が影響しています。

出典:パーソルキャリア株式会社『「新社会人(※)の転職サイト登録動向」2025年版』

──U24世代からはどのようなキャリア相談が寄せられていますか。

髙橋氏:カウンセリングの場では「新卒で就職活動をやりきれなかったので、もう一度挑戦したい」という声を聞くことが多いです。裏を返せば、新卒時の就職活動に対する向き合い方が変わってきているのかもしれません。

佐藤氏:現在のU24世代は、コロナ後に再び売り手市場に転じた状態で就職活動をしています。それなりに環境が恵まれていることに加え、転職が当たり前になった市場環境で「仮に最初の会社でうまくいかなくても何とかなる」という感覚があるのではないでしょうか。

岩井氏:学生時代はコロナ禍真っただ中だったこともあり、他者とのコミュニケーション不足によって自己分析やキャリア探求が十分にできなかった面もあるのではないかと思います。感覚値ですが、実際に私がお会いするU24世代は、「転職したい」という意思が明確に固まっている方が4割、「なんとなく相談してみたい」方が6割。新卒就職活動で自己分析や企業選定を十分にできていなかった方も多く、転職活動を「キャリアのリスタート機会」ととらえ、じっくりと情報収集している人も多い印象です。

佐藤氏:「何が自分に向いているのかわからない」「こんなはずじゃなかった」という声もよく聞きますね。

髙橋氏:U24世代は、これまでキャリアにポジティブになれる瞬間があまりなかった層なのだと感じます。私たちがキャリアアドバイザーとして介在するからには、キャリアに対してポジティブになっていただきたいという思いで接しています。

U24世代は「ホワイト企業の基準」が上がっている?

──U24世代が退職や転職を考え始める理由としては、どのようなものが多いのでしょうか。

岩井氏:高卒の方は、自宅からの通いやすさなど「条件」で選ぶことが多いです。また、数年はたらく中で見えてきた仕事の意味を考え直し、改めて企業選択したいというニーズが多いですね。

大卒の場合はさまざまです。「仕事内容や勤務条件が思っていたものと違った」、「中間層が少ないことで上の世代とのコミュニケーションにギャップを抱えている」、「想定していたキャリア形成や昇給ペースと実際の年収水準にギャップを感じている」といった理由が挙がります。

その中でも特に多いのは「十分な研修をしてもらえない」「教育研修が思ったような内容と違っていた」というケースです。OJTだけですぐ現場に投入され、心の準備ができないまま仕事内容に戸惑う人が目立ちます。

髙橋氏:私が主に担当する営業職では、「残業が多い・業務の拘束時間が長い」、「新規獲得やノルマなどの負担が大きい」、「体育会系の社風が合わない」といった声もよく聞きます。

総じてU24世代の「ホワイト企業の基準」が上がっていると感じます。企業としては世間の平均的な感覚で「残業月30時間」と伝えていても、若手はこれで選択肢から外れる場合もあるんです。

出典:パーソルキャリア株式会社 「転職理由ランキング【最新版】 みんなの本音を調査!」

佐藤氏:こうした不満が募った結果、まったく違う職種に挑戦したいと考えたり、同じ営業を続けるにしても他の企業を知りたいと考えたりすることになります。現在の職場で、希望する職種への異動がかなわずに転職を選択する人も少なくありません。

──文系・理系で違いはありますか?

岩井氏:文系ではここまで紹介した例のほかに、マーケターや編集者、エンタメ関連など、華やかなイメージのある職種にあこがれる傾向もあります。また、介在価値や自己成長を感じられずに悩んでいる人も少なくありません。

理系では、現在の仕事で技術力を高められないと感じ、よりスキルフルに成長していきたいと考える人が多いですね。その先に現実的な年収アップを目指している印象です。

安定重視の裏側で、「自分らしさ」を追求する志向も強い

──そうした悩みを抱えるU24世代は、転職先にどんな条件を求めるのでしょうか。

岩井氏:前職のはたらく環境にネガティブな印象を持っている一方、次の転職先に求めるものとして「年収アップ」や「ネームバリュー・安定感」を挙げる人が多いです。矛盾しているようですが、昨今の物価高による影響も大きいのではないでしょうか。カウンセリングの場では、「年収だけを追いかけるとジョブホッパー(転職を繰り返す傾向が高い人)になりやすいですよ」とアドバイスすることもあります。

髙橋氏:年収や社内の教育体制、勤務地の近さ、年間休日数などの条件を除外して、やりがいだけで意思決定する人はあまりいません。逆に、条件だけで決める人もおらず、仕事のやりがいもやはり大事にします。結果的には「はたらくストレスをいかに減らせるか」が意思決定要因になることが多いですね。

──U24世代の志向性について、ここ数年で変化を感じる面はありますか?

佐藤氏:本業の仕事に対する優先順位が下がっている人も多い印象です。今は、お金を稼ぐ手段として副業もあるので、なるべく負荷やストレスがない本業を探しているのではないでしょうか。目の前の環境に「とにかく安心してはたらけること」を求めている人が多いと感じます。

「年代別|正社員の副業実施率」

引用:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」

岩井氏:確かに、会社に属するだけではないキャリア観を持つ人が増えていますね。リモートワークやフルフレックス、副業可、服装・髪型自由など、はたらく上で自分が自由であることを求める人が多いです。また、今後AIが人間の仕事を代替していくことを考え、「自分だからできるスキルを身につけたい」「他の誰にでもできるような仕事はしたくない」と考える人も増えていると感じます。

髙橋氏:「自分らしさ」を重視する人は確かに多い印象です。さまざまなキャリアの選択肢がある中で、安定重視の意向に沿う業界や企業を提案した結果、「もっとワクワクしたい、自分らしくはたらきたい」といった希望が出てくることもあります。

──転職活動を開始した後で、結果的に現職に残ることを決めるU24世代もいるのでしょうか?

佐藤氏:個人の感覚にはなりますが、カウンセリングを担当した方の中で、3割程度は現職に残る決断をしていると感じます。離職せずに転職活動を開始される方の中には、緊急性がなく、期限を切って活動をしていない傾向が見られます。いろいろな情報に触れた結果、「それなら現職のほうがいいかも」となることもあるんです。他社の条件が思いのほか良くないと知ったり、自社の福利厚生のほうが最適だと気づいたりして、転職活動を中断することも多いですね。

髙橋氏:退職を思いとどまった理由として、「異動がかないました」という声も多いですよ。実際に職場で異動希望を出してみたら案外通った、そもそも自分が声を上げていなかっただけ、ということもあります。若手の中には、異動希望を口にすること自体にハードルを感じていたり、社内制度の存在を知らなかったりするケースも少なくありません。制度の周知や相談しやすい環境づくりが、離職を防ぐ可能性につながります。

佐藤氏:U24世代は、いわゆるタイパ(タイムパフォーマンス)を意識する世代だと言われます。そういった傾向からか、「正解」を求めて私たちに会いに来る人も増えているように感じますね。ただ、その人に向いている仕事の正解をキャリアアドバイザーが最初から持っているわけではありません。対話を通じ、ともにキャリアについて考えていく中で、現職に残る選択をすることも自然なことなんです。

「推し」が仕事と重なったときのエネルギーはものすごい

──多くの企業で、若手世代の早期離職防止や定着・活躍が課題となっています。企業側ではどのような対応が必要だと感じますか?

岩井氏:AI時代に「他の誰にでもできるような仕事はしたくない」と考えている若手に対しては、「あなたがこの職場にいる意味」を丁寧に伝えていくことが大切だと思います。転職を考えている人は、自社との目線のすり合わせがうまくできていないケースが多いです。学生から社会人へ踏み出すときに、この業務を経験することで本人がどうなれるのか、どんなキャリアを築けるのかなど、企業側からより丁寧に説明すべきではないでしょうか。たとえば「なぜ最初の配属がこの部署なのか」の目線が合うだけでも、仕事への腹落ち感は変わるはずです。

髙橋氏:私は「期待する」「承認する」ことが大切だと感じています。U24世代は、世代的には「自分はこうしたい」が薄い層だと思われているかもしれませんが、半面「社会のため」「顧客のため」という思いを強く持っている人も多いんです。そうした思いを引き出し、期待や承認などポジティブなフィードバックを行うことで、プラスのモチベーションにつなげられるのではないでしょうか。

佐藤氏:どんな仕事をしていても、現職への不満は出てくるものだと思います。そのときに、声を受け止めてあげる存在や窓口があることも大事ですね。「正解にたどり着くまでのタイパ」を重視するU24世代には、抽象的な精神論では響きにくい傾向があります。「やればできるよ」「とりあえずやってみればわかるよ」といった声かけは響きません。

岩井氏:条件面に不満を感じている場合も、精神論で「頑張れば上がるよ」と説き伏せようとするのではなく、評価制度に基づき、「何を達成すれば評価につながるのか」を明確に示し、頑張りが正当に反映される仕組みを整えることが重要です。人事には、そうした説明を行う場や、気軽に相談できる窓口を設けることが求められているのではないでしょうか。

出典:パーソルキャリア株式会社 「若手社員受け入れ時に知っておくべき!若手の早期離職防止策」

──U24世代を「有力な転職希望者」として見ている企業も多いです。自社の戦力として考えたときに、U24世代の強みとは?

岩井氏:個々の「自分らしさ」を探すことに敏感な分、目標が見つかったときの馬力はすごいと感じますね。何を頑張るかを決めてからの瞬発力がずば抜けている。それがU24世代だと思います。

髙橋氏:同意します。転職活動で安定を重視する人が多いのは、熱中できる何かが見つかっていないからなのかもしれません。何らかの「推し」を求めていて、その「推し」が仕事と重なったときのエネルギーは目を見張るものがあります。

佐藤氏:良くも悪くも、環境や経験によって大きく変化しやすい世代だと感じます。一定の経験がある人は自分の関心や興味からなかなか逃れられませんが、U24世代は「なぜこの会社で頑張るのか」を一からセットしてくれるのも魅力でしょう。新卒採用が厳しさを増す中、U24世代と本気で向き合うことが採用力を左右する時代になっていくのではないでしょうか。

【取材後記】

新卒入社から短期間で退職する人が増えているU24世代。この層に対してネガティブな印象を持つ人事・採用担当者や現場管理職もいるかもしれません。しかし、U24世代と向き合うキャリアアドバイザー3名への取材を通じてわかったのは、むしろ、自身のキャリアを主体的に見つめ直そうとしている人が多いことでした。若手定着のカギは、はたらきやすさだけではなく、「この仕事が将来につながる」と腹落ちできる説明と、本心が安心して希望を口にできる環境づくりなのだと思いました。

企画・編集/酒井百世(doda人事ジャーナル編集部)、南野義哉(プレスラボ)、取材・文/多田慎介

若手社員受け入れ時に知っておくべき!若手の早期離職防止策

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